2022.03.03
【開発の現場からVol.3】社内・お客様には「気遣い」が大切!お多福labのAIディレクターの仕事術とは
システム開発に携わる職業として一番イメージしやすいのは、実際にプログラミングを行なうエンジニアの方ですよね。しかし、AI(人工知能)やシステム開発に関わる人間は、エンジニアだけではなく、システムを開発する過程には、お客様とやり取りを行う「ディレクター」と呼ばれる存在が欠かせません。
一言で言えば、ディレクターはお客様とエンジニアをつなぐ架け橋であり、プロジェクトが成功するかどうかに大きく影響するため、お客様とプロジェクトメンバーたちがどうすれば仕事を気持ち良く進められるかを常々考える必要があります。そんなお多福labのディレクターには、ある「心遣い」があるのだとか。
今回は、お多福lab社内唯一の開発ディレクターである土屋宏起さんに、あるプロジェクトを通してのディレクターの仕事術について聞いてみました。
土屋さんについて
2018年8月 お多福lab入社→グループ会社に転籍
2019年7月 再びお多福labに戻る
現在、AI・システム開発のディレクターとして活動中
ーーーまずは、土屋さんの具体的な業務内容について教えてください。
私は今システム開発における「ディレクター」を担当しています。お多福labに入った当初は、会社の方針からお客様の元へは訪問しない一方で、仕事を受注するための提案活動全般(主に提案内容や受注戦略の策定、提案書作成)を担当していました。
そこから現在は、ディレクターへと担当領域を広げ、お客様の前にもバンバン出るようになりました。メインの業務としては、受注案件の要件定義やプロジェクトスケジュール管理、既存のお客さまからの問い合わせ対応、新規提案活動などがあります。
現在、担当している企業は6社ですが、日々お客様から相談がきたり活発に打ち合わせを重ねて進行するプロジェクトは2~3社です。他の案件は、開発フェーズに入っていてエンジニアによる対応がメインになっているか、もしくは納品済みため、必要に応じてご相談やご連絡をいただいたタイミングで打ち合わせなどを実施して対応しています。
「ケトン食プロジェクト」について
ーーーそれでは、今回の大阪大学様との「ケトン食」のプロジェクトについて教えてください。
ケトン食とは、ケトン体を糖分の代わりに摂取する食事療法のことを指しています。そしてケトン食療法を実施する患者様は、毎日の食事記録を細かく手書きでつけていました。
また、栄養士さんはこのデータをコンピュータに入力していました。この入力作業に関しては、患者さんが食べた食材ごとに細かく入力し、かつ朝・昼・夜の3食分の食事記録を何十人という患者さんの数だけ入力する必要があります。この入力の手間がかかることと、入力ミスがあることが課題でした。そこで、簡単に情報入力と栄養価管理ができるシステムを開発する、が今回のきっかけです。
私はもともと、このプロジェクトの営業活動には関わっていなかったのですが、今回は自分が作成した提案書で受注したこともあって、プロジェクトを主担当として進めていくことになりました。
ーーー今回のプロジェクトについて、進め方に特徴があった点があれば教えてください。
まず、今回は要件定義書の作成をゼロから自分で担当しました。もともと要件定義書の作成はエンジニアが担当することが多く、他のプロジェクトでも打ち合わせには積極的に参加するものの、要件定義書の作成自体はエンジニアに任せて進めていく、というケースばかりでしたが、この案件では自分自身で要件定義書の作成を進めました。
もちろん私はエンジニアではないので、今回要件定義書の作成にあたって技術的にわからない点が一部出てきます。そこでベースは自分で作りつつ、必要に応じてエンジニアに確認をとりながら進めていきました。
さらにお多福labのプロジェクトはウォーターフォール開発で最初に要件定義をしっかり固めることが多いですが、今回は少しイレギュラーな形で進めました。それは、「開発に着手する前段階で、システムの画面イメージを用意してお客様に触ってもらう」点です。
要件定義フェーズでは時間をかけてどのようなシステムを開発していくかを細かく定義します。そのためユーザーの声を反映させようとすると、必然的にシステムの要件が変わり、要件定義のフェーズへ戻って要件定義書を書き直す、システム設計を再度考える必要が出てくるので、工数も開発期間も増えてしまうことは避けられません。
しかし、システムを実際に使うのはユーザーです。特に今回のプロジェクトではシステムのユーザーの年齢層が高いため、私たちの年代とは感覚が違ってきます。そのため今回はお客様側からの要望で、開発フェーズに入る前にユーザーに体験してもらう工程を挟みました。
実際にユーザーに触ってもらって、「文字が小さい」「入力がしづらい」「こんな機能が欲しい」などさまざまな要望が出ました。その上で、ボタンの大きさ、文字の大きさ、画面の遷移、などどうすれば使いやすくなるのかを含めてさらに改善を進めました。
このようなユーザーから頂いたフィードバックの内容には開発側では気づいていなかった視点が多く含まれていて、そういう意味で、今回のプロジェクトで「ユーザー目線が大切」という点を再確認させられましたね。
ーーー逆に、今回のプロジェクトでの課題点はありましたか?
実は、プロジェクト自体がかなり短期でした。お多福labのプロジェクトはリリースまで半年~1年程度のものが多いですが、今回はリリースまで約5ヶ月でした。これは臨床試験の開始時期が決まっており、なんとかそれに間に合わせてシステムを利用開始できるようにしたい、というご要望をお客様から頂いていたからです。
しかし、スケジュールを短くしたいからといって、エンジニアが実際にソースコードをゴリゴリ書いていく開発フェーズの期間を短くする、というのは現実的ではありません。人が作業を行うプログラミングには一定の時間がどうしても必要ですし、急いだからといって早く出来上がるものでもないからです。
そのためスケジュールを前倒しに進めるとなると、必然的に開発の前段階である要件定義フェーズでお客様とより密にコミュニケーションをとり、どのようなシステムを開発するのかという要件を素早く細かくまとめ上げていく、というアプローチを採用する必要がありました。
このため、通常2ヶ月程度かかる要件定義を1ヶ月で行いました。その際は要件定義の打ち合わせを週1回から週2回に増やしてスピードをもって進めています。定例の打ち合わせが多い分、定期的なアウトプットや進捗報告が求められる機会が多かったり、先方とのコミュニケーションの行き違いによって開発側でスケジュールを少し早める必要が出てきてしまったりするイレギュラーなこともありました。
お客様にも社内のエンジニアにも気持ちよく仕事を進める仕事術とは
ーーーそんな土屋さんが、お客様との業務の進め方で心がけていることは何がありますか?
私はプロジェクトがうまくいくように日々お客様を引っ張っていく、「こうしていきましょう」「こうしましょう」と主体的に提案するよう心がけています。例えば打ち合わせや提案を行う際にはお客様側の目線に立ち、「費用対効果」を高める提案をすることを大事にしています。
AIやシステムは、あくまで「手法」であり、開発することが目的になってはいけません。
目的は、あくまでお客様の課題を「解決」することです。そのためには、お客様の業務フローを細かく理解し、どこに課題があってどこをシステム化するべきなのか、逆にシステム化せずに対応できる部分はどこなのか、などを真剣に考え、どうすれば実現できるかを話すようにしています。
また、打ち合わせの際には「準備」を大切にしています。私はアドリブが苦手で中々上手く対応できません。そのため、議題、決めるべきこと、質問内容、打ち合わせの目標を文字にしたり、お客様に理解してもらうための準備物を怠りなく行うようにしています。そうして、お客様との時間を無駄にしないように心がけています。
そして、打ち合わせの参加者に応じて、どこまで情報を伝えるかを変えるようにもしています。例えば、参加者によってプロジェクトに関する前提知識が異なっている場合は、まず全員の目線を合わせるために、前提条件の共有だったり、なぜこのアプローチが最適なのかなどを伝えるようにします。
また、お客様に伝わる平易な言葉を意識して使って、認識の食い違いを防いでこちらの意図がちゃんと伝わるようにしています。言葉でどれだけ伝えたと思っても、実際には相手に伝えたいことが伝わっていないことが当然だという視点を大事に持つようにしています。人それぞれ、持っている知識や当たり前が異なりますから。そのため、より相手が理解できる平易な言葉を使うことを大切にしています。
このような心掛けによって、認識の違いはだいぶ減りつつ、お客様や一緒に仕事をする人たちから「しっかりされてますね」「仕事しやすい」と嬉しい言葉を頂いたり、「また土屋さんに依頼したい」と次の仕事につながるようになりました。
ーーーなるほど、とても細かく準備なさっているのですね。一方で、社内の方と仕事を進める際に何か気をつけていることはありますか?
例えばスケジュールに基づいて進捗状況を細かく確認したり、要望や気になっていることがないかを確認するようにして、チーム内で意見や質問点を出やすくなるように心がけています。
そして何より大切にしていることが、周りへの「感謝」です!プロジェクトを進められるのは、自分やお客様の力だけではありません。エンジニアの方々の力があってこそ、開発ができます。そのため良い情報や悪い情報の報告・連絡・相談はなるべく素早くしつつ、プロジェクトに関わっている人がどうすれば行動しやすいか、どうすれば作業しやすくなるかを考えて動くようにしています。
ーーー最後に、土屋さん自身が今後どうなりたいか、などのビジョンがありましたら教えてください。
私は人の喜ぶ顔を見るのが好きなので、自分から提案をしたり、お客様と一緒に一つのサービス・プロダクトを成長させるために一生懸命考えたりするなど、お客様と一体になって今後も何かプロジェクトを進めていきたいですね。いろんなお客様と関わりながら、自分もお客様のサービスの成長にお力添えできるよう、頑張っていきたいと思います!お客さんの喜ぶ顔を見たらまた明日も仕事を頑張れますから 笑