ここ数年でAI(人工知能)は、一気に注目を集めAIが搭載されたサービスは日常で普通に見られるようになってきましたよね。技術の進歩はめざましく、画像認識の領域では既にAI(人工知能)が人間の能力を凌駕している状況です。
みなさんが今ご覧になっている本記事(AIZINE)の運営会社&AI開発会社である株式会社お多福ラボでは日々AIシステムの開発を行ってこれまで多様なサービスを様々なお客様にお渡ししてきたわけですが、その中の一お客様に大阪市立大学さんがいます。
以前、画像認識(画像分類)を自動化するAIシステムを作って大阪市立大学さんへお渡ししてからしばらくが経ったのですが、実際どのような評価を頂けているのかわからず、開発に携わったエンジニアたちを中心にその実態が気になってきました。そこで今回は、僕がAIZINE編集員という立場を利用して大阪市立大学さんへお邪魔してリアルな声をお話を伺ってきました。
今回インタビューさせていただいたのは、大阪市立大学大学院医学研究科 皮膚病態学(皮膚科) 特任教授 橋本 隆先生です!
皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群(少なくてしかも治りにくい皮膚の病気)の研究を厚生労働省から任され研究班の代表をされています。過去に日本皮膚科学会理事、日本研究皮膚科学会理事を務められるなどの経歴をお持ちの皮膚科のプロフェッショナルです。大阪市立大学大学院医学研究科 皮膚病態学(皮膚科) 特任教授。
そもそもなぜ画像分類AIに興味を持ったのか
つっちー:それではよろしくお願いします!では早速ですがはじめに橋本先生の取り組まれていることと、AIを使ってなぜ画像分類の自動化を試してみようと思われたのでしょうか。
橋本先生:僕は皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患、簡単に言えば少なくてしかも治りにくい病気をメインに研究しています。例えばアトピー性皮膚炎は聞いたことがありますよね。そのアトピー性皮膚炎の患者数の1000分の1程度しかいない希少な例の皮膚病をメインに研究しているわけです。
一方で現在国の方針としてAIを医療に活用することが推進されている背景もあって、日本皮膚科学会でもAI研究ワーキンググループが立ち上がり、すでにAIを活用した皮膚の臨床写真を自動診断する試みが進められているんですね。
そして僕らが何をしているかというと、診断方法にはいくつかあるのですが、日本皮膚科学会がまだ手をつけられていない方法を皮膚の画像で自動診断できたら面白いんじゃないかと考えたわけです。このアイデアを実現するための画像分類AIシステムの開発を懇意にしているAI(人工知能)の専門家に相談したところ、お多福ラボさんをご紹介いただき今に至ります。
僕は皮膚の専門家であってAI(人工知能)の専門家ではありませんので、やりたいことを形にするために協力者が必要だったんですよ。
つっちー:なるほど、まだAI(人工知能)活用が行われていない診断方法の領域で橋本先生が先駆けて挑戦してみようと考えられたわけですね。
専門家でさえ判定が難しい画像診断
橋本先生:そして今僕たちが研究している希少難治性疾患はもちろんのこと経験を積んだ専門家でしか判断ができませんし、その上皮膚科でもこの病気を専門にしている人は日本に数十人くらいしかいません。検査自体は各大学病院の半分くらいはしていると思いますが、検査をしていてもこの病気を専門としている医師は非常に少ないのが現実です。
さらに専門家でさえ100%の診断は困難なんです。というのは僕らは皮膚の画像を目で見て判断しているので人間の目ではどうしても捉えきれない部分があるんですね。経験の少ない医師にはもちろん判定が困難ですし、さらに経験者でも個人差が生じてしまうことが問題になっています。大体は判断が一致するんですが、細かいとどうしても判断が個人ごとに変わってくるんですよ。
陽性だ陰性だ(病気か病気でないか)の二択では終わらず、5個、6個といった異なる診断名の中から正しいものを選ばなければなりませんし、診断する人によって患者さんの病名が変わってしまう可能性があるのは決して無視できない問題です。こうした背景もあって現在安定した診断をサポートするシステムが求められているのは間違いありません。
つっちー:なるほど、目視で判断する以上見る人によって誤差が出るのは当然と思ってしまいそうですが、医療という分野での誤差は絶対に無くしたいですね。もしここにAI(人工知能)を使って高精度な診断ができれば診断技術の個人差という課題を解決できるかもしれませんね。
医師と同等の精度が出ている画像分類AI
橋本先生:お多福ラボさんに協力をお願いして開発を進めてきた画像分類AIの判定結果には本当に驚かされました。なんと陽性か陰性かを判定する2段階の診断では90%以上の正解率を出し、陽性3段階(+++, ++, +)のいずれかか陰性( – )かを判定する多段階の診断では60~70%の正解率を達成しました。
これはなんと僕ら専門家と同等と言って良いレベルの判定結果ですよ。
今回は1200枚の画像データを準備して数百枚をAI(人工知能)の学習用に使い、残りの数百枚をテスト用に使用しました。一枚一枚の画像を見て私が診断した結果をAI(人工知能)に学習させた訳です。驚きの結果が出たわけですが、現在もさらに正解率を高めようとしている最中です。最終的には9割5分以上の精度にまで持っていきたいですね。
なお、勘違いされる方もいらっしゃいますが、これは医師の判定を全てAI(人工知能)が代替するという訳ではありません。日本のルール上AIだけに診断を任せることはできませんし、最終的な判断をするのは医師です。このシステムを実際の現場で実用化することは、医師の判断の強力なサポートができるということになります。
つっちー:自動判定でそこまで高い精度が出ているとは驚きましたし、技術の進歩によって患者さんも医師も救われると思うと本当にすごいことですね!!
画像分類AIシステムが変える今後の医療の姿
橋本先生:すごいかどうかはわかりませんが、僕らが専門としている領域でなんとかしないといけない問題があるとするとこのテーマが一番面白そうなことですし、アトピー性皮膚炎の1000分の1しかない様な病気だからと行って見過ごすわけにはいきません。誤診断をすればそれが原因で命を落としてしまう可能性もありますから。
実際、県によっては誰も専門家がおらず、そんな時には他県に診断を依頼するのですがそれでも診断に迷ってよく僕らに画像が送られてきます。そんな時にもしも自動で画像診断ができるAIシステムが手元にあれば医師が判断する際に役立ちます。そういう意味では貢献度が高いと思いますね。
希少な病気だからこそ専門家が少なく専門家でさえ判定が難しかった診断方法が、技術の進歩によって地域や人に関わらず正確な診断ができるような可能性が見えてきていることは本当に喜ばしいです。また今後も技術はどんどん進んでいくはずですし、今回僕たちが採用している診断方法は皮膚の画像に対してのものですが他の組織でも応用ができるので大きな可能性を秘めていると思います。
つっちー:なるほど。先生が旗振り役となってこれまで進めてきた活動が、これからの医療の姿を変えて多くの人々に貢献していくと思うと未来が本当に楽しみですね!本日はありがとうございました!
まとめ
さて、ここまで大阪市立大学の橋本 隆先生に画像診断にAI(人工知能)を活用してみようと思われた経緯やその実態、今後の可能性についてお伺いしてきました。従来問題視されていた、医師の技術の個人差やサービスの地域格差といった課題が解決されるかもしれない次世代の医療の姿を感じてワクワクした方もいらっしゃるかもしれません。
僕は橋本先生の話を聴きながら技術の進歩による次世代医療の萌芽を感じたワクワクと、自社のサービスが役立っているということを知って嬉しくなりました。従来解決できなかった問題がそうでなくなるというのは本当に素晴らしいことですよね!
ちなみに、最近「大阪市立大学さんの事例のように利用者の目的に合わせて自由に画像分類AIをつくれるサービスがあったら便利じゃない?」という声が社内で出てきたので、せっかくなのでそのアイデアを形にしてサービスとしてリリースしました。
その名も「Medeeps(メディープス)」!!
「シンプルでわかりやすくて使いやすい」を重視したオフライン下で使えるサービスでAI(人工知能)に関する事前知識はいりません。興味のある方はこちら
※「分類し太郎」は「Medeeps」に名称を変更しました
お多福ラボはこれからもAI(人工知能)を使って「福を生み出し、たくさんの人に振りまく」を理念にサービスを展開していきます。
AI(人工知能)って「なにそれ美味しいの?」ってレベルだった僕が、AIエンジニアを目指してステップを踏んだり踏まれたりしている記事を書いてます。よかったら読んでみてください(実話)。
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