背筋がピーンと伸びている姿って、きれいですよね。姿勢良く歩いている人は仕事ができそうな印象を与えたり、集中力が上がることもあって実は良いことづくめです。
とはいえ、現在はスマホやパソコンを使う時間が多いので、かがんだ姿勢になって、だんだん猫背にしまっていることも。そうなると、メンタルにも影響が出てきてだんだんネガティブになってしまいます。
スマホやパソコンをよく使う私も、気を付けよう・・・。
そんな中で、最近では姿勢を分析するアプリなども出てきています。さらにその姿勢分析は、今やAI(人工知能)でできるようになりました!
しかもAI(人工知能)が行う姿勢分析は簡単なだけではありません。実はこの姿勢分析のシステムは、私たちの健康を守る以外にも役立っているとのこと。しかも仕事や車の運転など、今後私たちの身近なところで使われるかもしれないのです。そう聞くと、「えっ、どんなところに?」と気になってくるはず。
ということで今回は、「AI(人工知能)を使った姿勢分析」について解説しましょう。
まずは姿勢分析の仕組みについて、解説
ではまず、「姿勢分析」とは何かについてお伝えします。例えば、あなたが整体に行ったときに悩みの相談だけでなくて、実際に腰や肩などをもまれたりしたことがあるかもしれません。実はそれ、姿勢(骨格)の分析の一つです。
姿勢分析、とは文字通り「姿勢を分析する」ことで、「静止している人を診断する」ことが大きなポイントになります。逆に歩いている人の姿勢を分析するのは「歩行分析」と言います。
そして静止している状態で私たちの身体にある骨格がどんな状態なのか、骨盤や背骨、その他で何かゆがんでいるところはないかを見ています。例えば骨盤が前後に傾いてないか、肩甲骨の高さが高すぎたり低すぎたりしないか、膝の骨の向きが変な方向に傾いてないか、などなど。
このような姿勢分析は主に整体で利用されることが多いでしょう。というのも、整体では「施術を行うときに、身体の抱えている問題を知ってどのように治すかを決める」という意味があるためです。
そんな姿勢分析になぜAI(人工知能)が進出しつつあるのか、次でご説明しましょう。
なぜAI(人工知能)が姿勢分析に使われるようになったのか?
なぜ姿勢分析にAI(人工知能)が使われるようになったのかというと、それは「画像認識技術」が進化したからです。では、まずAI(人工知能)が姿勢分析をする仕組みについてご説明します。
AI(人工知能)の姿勢分析を支えるシステムは「骨格検知」と呼ばれる、ディープラーニングを応用した画像認識技術を使っています。ちなみにこの「画像認識技術」というのは、AI(人工知能)が何枚もの画像を記憶させて、その画像に何が映っているかを分析して、特徴を学ばせることを指しています。実際にGoogleがディープラーニングの画像認識技術を使ってこれは猫か、猫じゃないかを見分けるようにした実験に成功しました。
※画像認識の仕組みについてはこちらの記事をご覧ください
それを利用して、AI(人工知能)がたくさん骨格の動きや姿勢の写真を学ぶことによって、「この状態が姿勢が良い」「この姿勢は骨盤が前にゆがんでいる」などを判断できるようになりました。
※同じように、骨格を測定したサービスがあちこちで使われようとしています。その製品などをまとめた記事がこちら
※また、最近ではAI(人工知能)を使って姿勢分析をしてくれる整体が次々に登場しつつあります。それを取り上げた記事はこちら
そんなAI(人工知能)がこんなにも姿勢分析で使われるようになっているのはなぜでしょうか、次ではそのメリットを見てみます。
AI(人工知能)が姿勢分析に使われることのメリット
では、AI(人工知能)が姿勢分析に使われることのメリットについて解説しましょう。
患者さんの身体に触れなくても分析ができる!
まず1つめのメリットは「患者さんに触れなくても分析できる」ことです。今まで患者さんの「骨盤」「腰」などを触って姿勢測定をしてきましたが、それを嫌がる人もいますよね。もちろん、「そんなに気にしない」という人もいるでしょう。
私は何とか大丈夫です・・・が、人に触れられるとちょっとびっくりしてしまいます。すごくビビり(びっくりしやすい)ので・・・。
それがAI(人工知能)なら、人に触れられることなく機械で分析することができます。そのため「体に触れられるのが苦手」という人でも姿勢分析を受けることができるので、抵抗を持たずに姿勢分析を受けられるに違いありません。
人の経験値や状況等に左右されず、客観的な結果が出せる
今まで姿勢分析をするには、分析する人の目視や実際に触れた感触、また経験値による判断が必要でした。そうなると、実は体の不調の原因を見逃してしまった・・・などが起こる可能性がありますよね。
でも、AI(人工知能)なら機械なので、患者さん自身の状況や周りの環境に左右されることは少ないでしょう。かつ、患者さんである私たちが自覚していない細かい身体の異常やゆがみの原因なども見つける可能性があります。例えば腰痛の原因が腰だけでなく、骨盤のゆがみから来ていた、などもこの一つにあてはまります。
つまりAI(人工知能)によって今までよりもしっかり分析できるようになったら、私たちの身体の悩みもより解決できるようになるはず!
カメラで撮影するだけで、姿勢分析ができる
とはいえ、「姿勢分析ができる機械」と聞くと、なんだかスーパーコンピュータみたいな大きな機械をイメージする人も多いですよね。もし導入するとなっても、お金もかかるかもしれないし、説明書を読んだとしてもうまく取り扱えるか不安・・・ということもあるかもしれません。
でも、AI(人工知能)ならそんな心配はありません。なぜなら、AI(人工知能)が内蔵されているカメラで撮影すれば大丈夫だからです。しかも姿勢分析をするには「正面」「左右」から撮影した数枚の写真だけでできるので、写真さえ撮れれば時間はかかりません。
しかも、分析結果は画像として出てくるので身体のどこがねじれているのかなどがわかりやすいでしょう。実際に姿勢分析システム「ゆがみーる」では、姿勢のバランスなどをスコア・ランクづけするだけでなく、写真を使って体がどれくらい傾いているのか、などをレポートに出してくれます。
確かに、撮影するだけなら簡単ですし、写真を使っているならより結果を見るのもわかりやすいですよね!
もちろんこの結果がどんなことを示しているのか、どんな対策や治療が必要なのかなどのさらなる説明は専門の先生が補足してくれるでしょう。つまり姿勢や身体のことをあまり知らない私たちでも、姿勢の良しあしがわかるに違いありません。
最近ではAI(人工知能)がアプリで姿勢分析を行ってくれる!
とはいうものの、「やっぱりよくわからない」「どうやって使うんだろう?」「そもそも使う機会ないわ」と感じる人もいますよね。実はそんなAI(人工知能)による姿勢分析、なんとアプリでも使えるようになりました!
AI(人工知能)が健康管理をするアプリ「FiNC」では、最近姿勢測定の機能が追加されました。これは座っている姿を正面と全体像の2枚撮影することで、あなたの姿勢を分析してくれます。
※「FiNC」とはなんぞや?と気になった方はこちら
また、AIZINE編集部がFiNCを取材した記事はこちら
でも有料だとハードルが高い・・・という方は、無料で使えるAI(人工知能)の姿勢測定アプリを使うのも一つの方法です。「APECS: AI Posture Evaluation and Correction System」は無料でAI(人工知能)が姿勢を測定してくれるアプリです。見るポイントは主に「頭」「肩」「首」をはじめとした、私たちの身体の不調が出やすい部分です。
ということで、早速試してみましょう!
早速トップ画面を開いて、左上の「Quick Analysis(簡易分析)」をタップします。
測定の方法は「全身像」と「横向き」の2枚を撮影するだけです。カメラで撮影するのもよし、既存の画像や15秒タイマーを使うこともできます。
そしてこの撮影をして画像をアップロードしたときに、「腰の位置」「耳の中心」「肩の位置」「首の後ろの位置」「膝の位置」「足首の位置」などを決めます。やり方は写真の上で当てはまる場所をタップして、右下にあるピンのボタンを押します。一つ一つ指定しなければならないので若干手間はかかりますが、これによって体が傾いているかどうかを判断する基準になるとのこと。
そして一つ一つの位置の設定が終わった後、結果が出てきます。首(Head)がどれくらい傾いているか、腰(PSIS)が上がったり下がったりしているか、背筋から足までまっすぐになっているか(Align)、などを見ることができます。
ちなみにこの結果は、PDFで保存することが可能です。まるで整体などで姿勢分析を行ったかのような結果が出てきて、驚くかもしれません。
そんなわけで、実際に診断してみた私の結果は、こんな感じでした。
体かたむいてばっかりだ・・・どおりで左ばかり肩こりがするなぁと思ったらそういうことだったのか。整体行こう・・・。
このように、AI(人工知能)による姿勢分析アプリは若干専門的ではあるのと、この結果が本当かどうかは専門の先生に診断していただく方が安全だとのこと。とはいえ、「あ、最近前かがみになっている」を記録するには役立ちますよね!
今後AI(人工知能)の姿勢分析はどんなところで応用されていくか
このように、今やAI(人工知能)の姿勢分析は身近になりつつあります。しかし、AI(人工知能)による姿勢分析は「ただ姿勢の良し悪し」を判断するだけではなく、さらに別の形に応用されるようになりました。そこで、この姿勢分析のシステムを使った事例について取り上げましょう。
仕事中に姿勢が悪くなると、注意が来る!
日立建機株式会社はAI(人工知能)で作業している人の姿勢を検出し、体に負担がかかりやすい姿勢を取っていると警告するシステムを導入します。これは製造現場における従業員の体の負担軽減と、作業の効率化を目的としています。
そこで、画像認識のAI(人工知能)を導入することで、実際に作業している人の姿勢を分析します。作業している人が、負担のかかる姿勢になっていたら警告がでます。
もちろん、使いはじめはAI(人工知能)に監視されている感覚がありますよね。とはいえ、「作業を効率よく進める」という目的ならば、ある種私たちのことを思っている部分はあるかもしれません。
姿勢+視線の動きから、ながら運転を察知!
運転中にスマホを操作するのは絶対に良くないですよね。それなのに、たまにながら運転をしているニュースを見ると「危ないのに・・・」と心配になります。
そんなスマホのながら運転を防ぐシステムとして、最近ではドライブレコーダーに姿勢分析のAI(人工知能)を開発しています。オリックス自動車株式会社とソフトバンクは、アメリカのAI(人工知能)開発企業Nauto Inc.と共同で開発を進めているのが、AI(人工知能)を搭載したドライブレコーダー「ナウト」です。
「ナウト」は運転しているときの姿勢や視線や頭・視線の動きを分析し、ながら運転と疑われる行動をとったときは警告が出てきます。これなら運転中に一瞬でもスマホに気が取られてしまったとしても、「はっ、いけない、今運転中だった!」と運転に戻ることができますよね。
確かにながら運転は良くないので、これは実用化されたら安全に運転できそう。交通事故が少しでも減ってほしいなぁ・・・。
ということで、「AI(人工知能)を使った姿勢分析」について解説しました。今回の記事のポイントをざっと振り返りましょう。
- 姿勢分析とは、「立った姿勢・座った姿勢から骨盤のゆがみなどの有無を分析する」こと
- AI(人工知能)が姿勢分析に使われるようになったのは、より正確な診断結果を出すため
- AI(人工知能)はただ姿勢分析をするだけでなく、体のゆがみの原因や肩コリ・腰痛などの悩みに効くストレッチも提案してくれる
- いまやAI(人工知能)での姿勢分析はアプリでも試すことができる
- 今後、AI(人工知能)による姿勢分析の仕組みは、作業現場やドラレコにも使われるようになるかもしれない
なるほど、もしAI(人工知能)の姿勢分析を身近に使えるようになったら「あ、ちょっと最近姿勢が丸まっているような気がする」とか「足組むと身体がねじれるかもしれない」など、今までよりも姿勢を気にするようになることもあるでしょう。
それと同時に、姿勢分析とは私たちの健康を守ってくれるだけではなく、どうしたら仕事が効率的に進められるか、安全に運転できるかなどを見守ってくれることがわかりましたよね。これがもし多くの分野で使われるようになると、私たちの生活がより快適になるかもしれません。
そして今ご覧になっているAIZINE(当サイト)を運営している大阪の人工知能の会社、お多福ラボでもスマホやタブレットで姿勢分析できるソフトを作っています。
身体の歪みや姿勢を簡単に測る事ができる優秀なソフトですので、興味のある方はぜひご覧ください。
姿勢を正すことはいいことだらけ。 | Tadahiro Ogino Official Website | 荻野 忠寛
APECS: AI Posture Evaluation and Correction System [Android]
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