今からでも遅くない、倉庫部門のDXに向けて私たちがやるべきこと | AIZINE(エーアイジン)
DX(デジタルトランスフォーメーション)

今からでも遅くない、倉庫部門のDXに向けて私たちがやるべきこと

今からでも遅くない、倉庫部門のDXに向けて私たちがやるべきこと

円滑な物流業務を推進するために要となるパートとして、倉庫部門がありますよね。倉庫は、工場で製造された製品や通販の商品、さらに輸入品や資材など、あらゆる流通品を受け入れるキーステーションのような存在です。

倉庫部門は、単なる荷物保管にとどまらず、検品、仕分け、梱包といった複雑な業務をこなし、トラックなどの運送部門が顧客にスムーズに荷物を届けられるよう適切にアシストする必要があります。eコマースの台頭による物流量の激増に対応するには、この倉庫部門のDX(デジタルトランスフォーメーション)が欠かせません。

この記事に目を通すと、倉庫部門のDXに向けて何をするべきか、が明確になるに違いありません。今からでも遅くないのでポイントを理解して、実際にDXに取り組みましょう。

そこで今回は、倉庫部門のDXの内容や効果、成功事例、さらにDXを進めるうえでの留意点について詳しくお伝えします。

倉庫部門とは

倉庫のイメージ
倉庫部門というと荷物を保管する場所、という印象が強いかもしれません。しかし、倉庫部門は在庫保管のみならず、製品や資材、商品などの入出荷、検品、仕分け、セット加工、そして梱包とさまざまな付加的作業まで行う倉庫業務の中核を担っています。

倉庫部門は、大手小売業者の一部門として存在する場合と、運送会社として取引先の荷物を管理する事業者という場合があります。昨今の物流事情として、小口配送の激増や荷物の種類や形状の多様化、複雑化があり、適切な在庫管理とスムーズな入出荷作業は、倉庫部門に託された何より重要な任務でしょう。

なぜ、今倉庫部門にDXが必要なのか

デジタルのイメージ

今、倉庫部門にDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要な理由は、主に「激増する物流量と複雑化する荷物への対応」「労働力不足と過重労働の解消」「属人化による作業効率低下の改善」の3点です。一つずつ順番に解説しましょう。

激増する物流量と複雑化する荷物への対応

とくに近年のeコマースの台頭により、宅配個数は年間で46億個に達する勢いです。国土交通省の統計によると、5年間で約18.4%(約6.7億個)増加しているとのこと。つまり、これを単純計算すると国民1人あたり約40個となります。そう考えると、とても膨大な量ですよね。これに伴って倉庫・物流施設の建設工事受注額も1兆円に迫る勢いで、約10年で5倍増加しました。

つまり、物流量の激増に比例して倉庫部門も増え、その役割は年々重要化しています。とくに最近は、配送個数の増加にくわえて荷物の形状や大きさなどが多様化、複雑化し、当日配送などスピード感も求められます。よって、倉庫部門では、これらのニーズに柔軟に応えなければなりません。そのためには、従来の方法とは次元の異なるデジタルの力を活用したDXによる変革が急務です。

労働力不足と過重労働の解消

倉庫部門では、現場作業のみならず運行管理や事務作業も含めてギリギリの人数で業務をこなす傾向が強いです。その多くはコスト削減と人材不足のためですが、あまりのハードさゆえに離職は増えても新規採用はなかなか伸びず、慢性的な労働不足の悪循環が解消されません。

くわえて、在庫管理、ダンボール箱の組み立てや商品の詰め込み、棚への上げ下ろし、ピッキングに梱包など、一部の大手を除けば、いまだに人の手に頼る面が多いです。よって、労働集約的な業務による従業員の疲労度が高く、注意力散漫による事故やミスのリスクが発生しやすくなりました。そこで、作業の自動化をはじめとしたDXによる省人化や作業員への負担軽減が望まれます。

属人化による作業効率低下の改善

倉庫部門は、一人の作業員が特定の場所で長期間同じ業務を担当する傾向が強いです。担当者を固定した方が要領がつかめて経験値も上がるため、作業効率がアップするからです。しかしその一方で、ベテラン社員による作業の属人化が進み、特定の人物がいなければ在庫の位置が不明などの理由で作業が滞ることが、しばしばあります。反面、棚や在庫の位置を極端に変更すると、その変化に対応しきれず逆にベテラン社員の作業効率が落ちるので、遅々として改善が進みません。よって、ロボティクスの導入などDXによって、属人化をなくす思い切った取り組みが待たれます。

以上が、倉庫部門にDXが必要な理由です。DXは、単なるデジタル化ではありません。デジタルの力を活用して企業文化を変革し、新たな価値創造により競争優位に立つことを意味します。上記の課題がデジタルの力で解決すれば、生産性が向上し、働き方改革推進にも寄与するので、まさに今までにない価値創造の源泉となるでしょう。

倉庫部門のDXの具体的な内容とその効果とは

システムのイメージ
それでは、倉庫部門のDX(デジタルトランスフォーメーション)の具体的な内容とそれが及ぼす効果について見ていきましょう。

ロボティクスによる倉庫作業の自動化

倉庫部門のDXで欠かせないのは、ロボティクスを活用した作業の自動化です。具体的には、AGV(無人搬送機)、AMR(自律走行型ロボット)、ベルトコンベヤ、ソータ、立体自動倉庫、ピッキングロボットなどのマテハン機器を使って、入出荷、搬送や収納作業、仕分け、検品、梱包など、をオートメーション化します。

従来なら人が行っていた入荷から出荷までの一連のハードワークをロボティクスによる流れ作業にすると、人のように疲労せず、ミスも激減します。よって生産性が向上するでしょう。

また、立体自動倉庫を使えば、天井近くまで在庫を収納できるので、倉庫空間使用率が高まります。ピッキングロボは、必要なアイテムだけをピッキングし、収納効率を考えて最適なサイズの箱に製品を詰めすることも可能なため、作業効率も格段に高まるでしょう。これらによって作業員への負担が軽減、省人化も進み、働き方改革が推進できます。

WES(倉庫運用管理システム)によるヒト・モノ・設備の総合管理

さらに、WES(倉庫運用管理システム)やWCS(倉庫制御システム)などのIT(情報技術)を活用すれば、マテハン機器などの設備を一括制御できます。

従来は、マテハン機器の年式やメーカーの違いによって連携が難しく、作業の非効率化が問題でした。しかし、WESやWCSを使えばそれらを一括制御できます。また、在庫管理や誤出荷の検知、修正も一元管理し、どこで誰が何をしているかも可視化でき、操作法さえマスターすれば誰でも作業レベルの均一化が可能です。くわえて荷物の入荷から出荷までの動きや作業員の動向までをリアルタイムで把握するので、DXが大幅に進むでしょう。

従来バラバラだった設備、人、物の動きを高次元で連携するので、生産性向上のうえ作業負担が激減、属人化解消にも役立つに違いありません。

すでに倉庫部門でDXを成功させた事例

在庫のイメージ
次は、倉庫部門で実際にDXを成功させた事例を紹介しましょう。

ファーストリテイリングの物流倉庫の全自動化

ユニクロを手掛けるファーストリテイリングは、増え続ける商品需要に対応しきれず倉庫部門を業者に丸投げすることで、2015年、物流機能が大混乱を起こしました。倉庫のキャパは溢れ、荷物は氾濫、通販では遅延も発生という異常事態になったのだとか。この解消のために、経営トップ自らが本腰を入れ、マテハン機器の世界的メーカーダイフクと組んで東京・有明倉庫の全自動化によるDXに取りか掛かりました。

具体的には、3フロアすべてにマテハン機器を導入、1階の商品搬入口に自動入庫荷下し機を設置して電波でタグを複数一気にスキャンできるRFID自動検品器で商品を検品、3階の自動保管倉庫に運ぶシステムを構築。2階には、エアリズムやヒートテックなど売れ筋商品を保管するため自動出庫倉庫を設置して出庫効率を高めました。ピッキングの際は、作業者のところまで自動運搬、箱詰め後はダンボール箱などを自動封函します。

これら一連のシステムにより、約100人の作業員を10人まで削減、入庫生産性80倍、出庫生産性19倍、保管効率3倍、ピッキング作業の歩行数0歩、教育コスト80%カット、RFID自動検品精度100%を実現しました。一時はクラッシュしかけた倉庫部門が、DXにより見事に再生、進化を遂げました。

ニトリの自動ピッキングシステムによる作業効率向上とスペースの有効活用

大手小売業ニトリホールディングスの川崎の通販搬送センターでは、延床面積6,300坪のスペースを終日歩きながらのピッキングは作業員にとって重労働でした。しかも在庫品目の増加による通路の縮小で作業効率が低下したことも、課題でした。

そこで、ノルウェーのJakob Hatterland Computerの自動ピッキングシステム「オートストア」を導入。オートストアは、格子状に組まれた支柱、専用コンテナ、電動台車(ロボット)、ピッキングステーション(ポート)の各モジュールで構成されており、スペースに合わせて自在に数や形をカスタマイズできます。ニトリでは、専用コンテナ約3万個、ロボット60台を導入し、年間100万個に及ぶ出荷数に対応しています。

入庫時は、ポートから商品をコンテナに投入、ロボットが引き上げて搬送のうえ自動格納します。出庫時もロボットがコンテナを引き上げて移動させ、自動ピッキングします。よって、作業者は定点作業が可能になったので、歩きながらのピッキングはなくなり、出荷効率は3.75倍に向上、スペースの有効活用で在庫面積も40%削減できました。

倉庫部門でDXを進める上でのポイント

企業のトップのイメージ

倉庫部門でDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるには、いくつか留意すべきポイントがあります。一つずつ見ていきましょう。

トップがやる気と情熱を持って進める

DXは、過去に踏み込んだことのない領域での思い切った変革です。よって、トップ自らが何がなんでも成功させるという強い意志と情熱をもって挑むことが重要です。

このあたりはユニクロが良い例ですが、経営幹部がデジタルの知識に乏しくDXへの理解が曖昧で、社内に相応のデジタル人材がいなければ、何から手をつければ良いか分からず、DXが進まないケースが多いです。その場合は、外部に協力を求めるとか、デジタル人材を採用、育成することで対応しましょう。そして倉庫部門をはじめ、関係者全体で意思疎通を深め、DXをみんなで成功させるという気運の高揚が不可欠です。

目標の設定を行う

倉庫部門のDXは、単にデジタル化すれば済むものではありません。サプライチェーンにおける今後の役割の遂行や顧客ニーズへの高レベルな対応、倉庫内の問題解決を総合的に推進できる最適な戦略と目標を突き詰める必要があります。そして、何が必要で何がいらないか、を良く精査しましょう。さらにその目標を倉庫部門や関係者全体で共有し、納得のうえでDXに取りかかることが重要です。

予算をする

倉庫部門のDXは、大々的に推進するとかなりの投資が必要になります。マテハン機器や倉庫管理システムの導入、通信環境などインフラ整備、大幅なレイアウト変更など、初期費用に相当のコストがかかるでしょう。たとえば、ファーストリテイリングでは、有明倉庫以外にも世界中で倉庫部門の自動化を進めていますが、高い場合は、1か所100億円規模のコストを投入しています。

もちろん、これは極端な例かもしれません。しかし、企業文化を変革して新たな価値創造をもたらすには、その企業にとっての大幅な予算確保が必要です。DXを始めるなら、まずそのための準備を始めましょう。

まとめ

さて、今回は倉庫部門のDXの内容や効果、成功事例、さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるうえで留意すべきポイントについて詳しくお伝えしました。

倉庫部門とは、在庫保管のみならず、製品や資材、商品などの入出荷、検品、仕分け、セット加工、さらに梱包などと付加価値を添える作業までを行う倉庫業務の中核事業を意味します。

倉庫部門では、「激増する物流量と複雑化する荷物への対応」「労働力不足と過重労働の解消」「属人化による作業効率低下の改善」といった重要課題があるため、DXの推進が必要です。

倉庫部門でDXに取り組めば、「ロボティクスによる倉庫作業の自動化」「WES(倉庫運用管理システム)によるヒト・モノ・設備の総合管理」が進むので、作業効率や生産性向上、省人化や作業負担の軽減、属人化の解消が実現し、現在抱える多くの課題が解決するに違いありません。DXの成功事例として、ファーストリテイリングの物流倉庫の全自動化やニトリの自動ピッキングシステムによる作業効率向上とスペースの有効活用などが挙げられます。

DXにあたっては「トップのやる気と情熱」「目標の設定」「予算の確保」という点に留意する必要があります。DXによって、企業文化を変えて新たな価値を創造したうえで競争優位に立つためには、トップをはじめ倉庫部門や関連者が一体となってことに当たらねばなりません。

そして、DXが成功すれば、大幅に働き方改革が進んで企業価値が大きく向上するのは間違いありません。その日を目指して早速倉庫部門の改革に着手しましょう。

【お知らせ】

当メディア(AIZINE)を運営しているAI(人工知能)/DX(デジタルトランスフォーメーション)開発会社お多福ラボでは「福をふりまく」をミッションに、スピード、提案内容、価格、全てにおいて期待を上回り、徹底的な顧客志向で小規模から大規模ソリューションまで幅広く対応しています。

御社の悩みを強みに変える仕組みづくりのお手伝いを致しますので、ぜひご相談ください。

お多福ラボコーポレートサイトへのバナー

トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました