今のうちに知っておきたい!トランスヒューマニズムとは何か徹底解説 | AIZINE(エーアイジン)
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今のうちに知っておきたい!トランスヒューマニズムとは何か徹底解説

日本とトランスヒューマニストのイメージ

AI(人工知能)やIoTなどの新しいテクノロジーが次々と開発され進化していく中で、これから注目されはじめるのがトランスヒューマニズムですよね。

しかしほとんどの方は「トランスヒューマニズム」という言葉が初耳ではないでしょうか。

世界がまだ20世紀だったころ人類は、21世紀から先の未来にさまざまな未来を想像していました。

それはロボットやタイヤのない自動運転車・空を飛ぶ自動車・宇宙旅行など、当時の技術ではとても実現が難しい未来の姿でした。

そして21世紀に入りテクノロジーが進化していくと、当時描いた未来像の中のAI(人工知能)や電気自動車が身近な存在になり、自動運転車や宇宙旅行も実現しそうな勢いです。

少しずつですが、テクノロジーの進化によって20世紀に描いた未来像が現実になりはじめています。

そして未来像の中には「サイボーグ」もありましたよね。

サイボーグは、これからお伝えするトランスヒューマニズムと大きく関係があるのです。

現在トランスニューマニズムの認知度は低いですが、未来に向けてテクノロジーが進化すればするほど、トランスヒューマニズムも注目を集めだしていくのが予測できます。

そこで今回は、まだほとんど認知されていないトランスヒューマニズムについてお伝えしていきます。

トランスヒューマニズムとは何か

日本ヒューマニスト協会のイメージ

日本には「日本トランスヒューマニスト協会」という団体があり、同協会はトランスヒューマニズムについて下記の説明をしています。

「トランスヒューマニズムは、生命を促進する原則と価値に基づき、科学技術により現在の人間の形態や限界を超克した知的生命への進化の継続と加速を追及する生命哲学の一潮流である(*1)」

(Transhumanism:Toward a Futurist Philosophy/米国の未来学者マックス・モアが提唱)

日本トランスヒューマニスト協会-トランスヒューマニズムとは

分かりやすく説明するとトランスヒューマニズムとは、現在の人間をテクノロジーで進化させ、不老・不死・不労の社会を実現していこうとする考え方・動きです。

そして日本トランスヒューマニスト協会のサイトでは、次のようにも書かれています。

「高度な科学技術によってもたらされる不老・不死・不労の社会は、トランスヒューマニストがめざす理想のユートピアです。しかしトランスヒューマニストが真にめざすものはその先にあります。それはすなわち、人間とAI(機械)の融合です。」

「人間とAI(機械)の融合」つまり最終的にはサイボーグを目指しているといっています。

サイボーグとは「人間の体の一部を機械で改造した生物」です。

しかし日本トランスヒューマニスト協会が示しているサイボーグは、アニメや映画に登場するサイボーグのイメージとは違っています。

人類は「猿人」→「原人」→「旧人類」→「新人類」の進化を経て、現在の人間の姿になりました。

そして未来に向けて人間を進化させるために用いるのがテクノロジーであり、その先にある人間の姿が「サイボーグ」、それに向かって進めて行く考え方がトランスヒューマニズムなのです。

トランスヒューマニズムの歴史

テクノロジーのイメージ

トランスヒューマニズムがサイボーグにつながっていくと考えると、トランスヒューマニズム自体は比較的新しい考え方のように感じますよね。

しかし歴史をさかのぼると早くはルネサンス時代にその考え方が見られます。
そして現在のトランスヒューマニズムの基本となる考え方は、1923年にイギリス人生物学者のJ・B・Sホールデン氏がエッセイ「ダイダロス、あるいは科学と未来」で提唱した内容です。

また「トランスヒューマニズム」という言葉を初めて使用したのは、J・B・Sホールデンの親友の兄で生物学者のジュリアン・ハクスリー氏。その後J・B・Sホールデンのエッセイは、学術から一般までに影響を与えます。

1980年代に入るとアメリカのカリフォルニアを中心地として、現在のトランスヒューマニズムの考え方が広がりはじめるのです。
1998年に哲学者のニック・ボストロム氏とデイヴィット・ピアース氏は、トランスヒューマニズムが広く認識されるために世界トランスヒューマニスト協会(現humanist+)を設立。
2014年にはアメリカの作家で哲学者のゾルタン・イシュトヴァン氏を中心に、科学者、未来学者、エンジニア、テクノロジー愛好家によってトランスヒューマニスト党が結成し、そしてゾルタン・イシュトヴァン氏は2016年のアメリカ合衆国大統領選挙に出馬しました。

日本では認知度が低いトランスヒューマニズムですが、世界で見ると年を追うごとに広がっており、現在では世界で数百万人が参加する大きな運動になっています。

なぜ今トランスヒューマニズムなのか

トランスヒューマニズムのイメージ

数十年の時代を経てトランスヒューマニズムは「今がターニングポイント」だといえます。

そして未来に向けてトランスヒューマニズムが台頭していくカギとなるのは「第四次産業革命」です。

日本トランスヒューマニスト協会のサイト内では、ミッションで次のような記述があります。

「人類の更なる発展を促すための倫理的なテクノロジーの利用を提唱」

また先ほども紹介したように目指す未来については

「高度な科学技術によってもたらされる不老・不死・不労の社会は、トランスヒューマニストがめざす理想のユートピアです」

と明確に示しています。

そして2つの文章に出てくる「テクノロジー」「高度な科学技術」とは次のこと。

  • AI(人工知能)
  • 情報技術
  • 仮想現実(VR)
  • ナノテクノロジー
  • バイオテクノロジー
  • 認知科学
  • 精神転送
  • 人体冷凍保存

(以上、日本トランスヒューマニスト協会の紹介資料より)

第四次産業革命とは最新テクノロジー(AI(人工知能)、IoTなど)による製造業の技術革新です。ここ数年でAI(人工知能)は急速に進化し、2020年からは5G通信がスタートしてIoTもさまざまな分野で普及しはじめています。また数年後には自動運転車も実用化される見通しですよね。

まだ最新テクノロジーがコアになる第四次産業革命は入口に入った状態ですが、本格化すればトランスヒューマニズムを進めていく大きなターニングポイントになると言えるでしょう。

トランスヒューマニズムの取り組み事例3つ

テクノロジーのイメージ

第四次産業革命の後押しで、これから台頭が予想されるトランスヒューマニズム。では現在、未来に向けてどのような取り組みが行われているのでしょうか。

そこで今回は日本トランスヒューマニスト協会が取り組んでいる、トランスヒューマニズムの取り組み事例を3つ紹介しましょう。

マイクロチップの埋め込み

海外では人体へのマイクロチップの埋め込みが積極的に行われており、2018年のAPF通信によるとスウェーデンやアメリカではマイクロチップの埋め込みが普及し実用が進んでいます。

人体にマイクロチップを埋め込むことで、身分証や電子決済、ドアのセキュリティ解除など、現在はカードやスマートフォンなどで行われていることがマイクロチップだけで行えるようになります。
しかし日本では人体へのマイクロチップの埋め込みは医療行為になるので医療認可が必要であり、実質的に国内でマイクロチップの埋め込みを安全に行うのは非常に困難な状況です。

そのため日本トランスヒューマニスト協会はその環境を整える活動を行い、埋め込みを希望される方への案内やそれに関連するアプリケーションや技術の開発を行っています。

支援活動

日本トランスヒューマニスト協会はテクノロジーで救済できる人たちを積極的に支援し、次世代テクノロジー開発を進めている企業への支援活動も行っています。
2019年に「株式会社Artificial Limb Technologies」が筋電義手「HuxleyHand-I」を発表しました。筋電義手とは筋肉が動くときに発生するわずかな電流をとらえて、物を掴む・離すの動作が行える義手です。

しかし現在、日本国内での筋電義手の普及率は2%と少ないのが現状で、そのほとんどがドイツ製の150~400万円する高価なもの。

そこで株式会社Artificial Limb Technologiesが開発した筋電義手「HuxleyHand-I」は、その約30分の1の価格で提供、その普及には日本トランスヒューマニスト協会が協力して支援を行っています。

普及活動

このような活動をしており以前よりもトランスヒューマニズムが認知されてきたといっても、まだ存在すら知らない方がたくさんいますよね。

そこで日本トランスヒューマニスト協会は、定期的に全国各地で説明会や勉強会などを開催。

オンラインではSNS のTwitter、Facebook、Telegramを活用したコミュニティの運営を行って、テクノロジーに関する投稿で普及活動をしています。

現在のところ本格的なトランスヒューマニズムの事例といえるのは「マイクロチップの埋め込み」「筋電義手」。

そのため現状は「トランスヒューマニズムの序章」段階ですが、第四次産業革命が本格化してくれば、それにともなってトランスヒューマニズムに関連するテクノロジーが進化し、認知度も高くなっていくでしょう。

トランスヒューマニズムが進むと未来はどうなるのか

人のイメージ

ところで
「世界でトランスヒューマニズムが進めば、どんな未来が待っているのか」

これはみなさんも気になりますよね。

日本トランスヒューマニスト協会は紹介資料の中で今後の展望をいくつか挙げており、その中に次のことも入っています。

  • スマートシティ計画・・・主に労働をロボットが代替して暮らしを送れる都市社会
  • 没入型仮想現実の開発・・・理想の仮想現実空間を実現し楽しむ
  • キャッシュレス社会の実現
  • 人体の冷凍保存
  • 不老不死の実現

これらはまさしく、トランスヒューマニズムが進んだ先に実現する未来です。

このうち「キャッシュレス社会の実現」「没入型仮想現実の開発」は内容から、近い将来に実現するのではないでしょうか。

そして次に実現しそうなのが「スマートシティ」です。

2015年に発表された野村総合研究所と英オックスフォード大学との共同研究によると、今後10~20年後の日本では現在ある職業の約49%がAI(人工知能)やロボットなどに代替される結果が出ており、今後世界中で労働力が人間からAI(人工知能)やロボットなどに移行が進むと予測されています。

2020年、トヨタ自動車はAI(人工知能)・ロボットなどのテクノロジーを駆使したスマートシティ構想「Woven City(ウーブン・シティ)」のプロジェクトを発表しました。

スマートシティ化は「キャッシュレス社会の実現」「没入型仮想現実の開発」よりも先の未来になるでしょうが、すでに動きがあるので着実に実現へと向かっていくでしょう。

この他に挙げた「人体の冷凍保存」「不老不死の実現」については、「SF映画の話」のように感じた方が多いのではないでしょうか。確かに現在のところ、現実味の薄い内容です。

しかし着実にテクノロジーが進化していけば、どれくらい先の未来になるのかは分かりませんが、「人体の冷凍保存」「不老不死の実現」も可能になるのではないでしょうか。

 

テクノロジーのイメージ

今回はトランスヒューマニズムについてお話しました。

トランスヒューマニズムとは人間の身体をテクノロジーで進化させ、不老・不死・不労の社会を実現していこうとする考え方・動きです。

その歴史はたどるとルネサンス時代にまでさかのぼります。

現在のトランスヒューマニズムの基本となる考え方は、1923年にイギリス人生物学者のJ・B・Sホールデン氏がエッセイで提唱した内容で、1980年代に入ってアメリカのカリフォルニアを中心にトランスヒューマニズムが広がりはじめました。

現在はHumanist+(旧世界ヒューマニスト)が中心となり、日本を含めて世界各地に支部を設けて活動をしています。

そして日本でのトランスヒューマニズムの主な取り組みは下記の通り。

  • マイクロチップの埋め込み
  • 支援活動
  • 普及活動

海外では多くの人がマイクロチップの埋め込みを行っていますが、日本の場合は法整備ができていないなどの理由から難しい状況です。

そのため現段階で国内でのトランスヒューマニズムの取り組みは、支援活動・普及活動が主になっています。

また日本トランスヒューマニスト協会は次のような今後の展望を挙げており、そこからはトランスヒューマニズムが進んだ先の未来が想像できます。

  • スマートシティ計画
  • 没入型仮想現実の開発
  • キャッシュレス社会の実現
  • 人体の冷凍保存
  • 不老不死の実現

上記のうち「キャッシュレス社会の実現」「没入型仮想現実の開発」は近い将来に、他についてもテクノロジーの進化で実現されていくでしょう。

現在トランスヒューマニズムは、ほとんど知られていないのが現状です。しかし現在以上にテクノロジーが進化していけば、トランスヒューマニズムが台頭する時代がおとずれるでしょう。

そうなると本当に「サイボーグ」も当たり前の存在になるかもしれませんよね。それがいつ頃になるのかはわかりませんが、未来に向けて私たちもトランスヒューマニズムに注目してみましょう。

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