昨今さまざまな業種業態の企業においてAI(人工知能)やディープラーニングの技術の導入・普及が進んでいることは、みなさんもご存じのとおりですよね。そのスピードは日々加速度的に上がりつつあります。
しかし、ディープラーニングには、学習するための膨大な量のデータと、それらのデータを処理するだけの能力を持つコンピュータのリソースが必要となり、このような体制を整えるためにはどうしてもコストや労力がかかってしまうでしょう。
ですがこの問題を解決する技術があるのです。その名も「スパースモデリング」。あまり聞きなれないという方も多いかもしれません。
そこで今回は、この「スパースモデリング」について、優しくわかりやすくご紹介します。
そもそもスパース性とは
スパースモデリングを理解するためには、まず「スパース性」という概念を把握しておかなければなりません。ではそもそもこの「スパース性」って何のことなんでしょうか。
「スパース性が高い」という表現は、物事の本質的な特徴を決定づける要素がより少ない(まばらである)ということを示すことになります。
このような状態にある場合、「スパース性が高い」ということができます。
スパースモデリングとは?入門者向け
少ないデータでも分析が可能に
「スパースモデリング」とは、この「スパース性」の概念に基づいたもので、インプットされるデータのどこが本質的な特徴を決定づける要素なのかを見極めて抽出する技術のことです。
例えば、犬と猫を判別する、といった場合、本来であれば、大量のデータをインプットして学習させ、特徴の分析を行う必要がありますが、スパースモデリングを用いると、耳やしっぽなどどの部分が本質的な特徴を決定づける要素なのかを分析することができるので、少ない数のデータであっても学習が可能になるというわけ。
つまり、「スパースモデリング」のスゴイところそれは、データ同士の関係性に注目することで大量のデータを必要とすることなくディープラーニングなどの学習が行えるというところなのです。
コンピュータリソース・時間の節約に
また、本来ディープラーニングのような複雑な処理を行うにはGPUなどの大量の演算を処理できるマシンが必要となります。
このように、スパースモデリングは従来ディープラーニングが抱えていたさまざまな問題を解決する手段としても注目されているのです。
スパースモデリングを用いた画像処理事例
実はスパースモデリングがいかにスゴイ技術であるかということを世に知らしめることになったある事例があります。この事例によりスパースモデリングは一躍有名になったといっても過言ではありません。その事例とは、あるものを画像処理したというもの。
一例としては、暗視カメラなどのようにハッキリと写っていない画像をクリアにすることなどにも活用できます。
しかし、スパースモデリングの名を世に知らしめた事例とはこんなものではありません。なんと、スパースモデリングの技術を応用することによってブラックホールの撮影に世界で初めて成功したというのです。
ブラックホールは本来とても小さいもので、月においてあるみかんを地球上から撮影するようなもの。ですから、従来の手法での最高の解像度を持ってしても、粗々な画像しか撮影することしかできませんでした。
先ほどもご紹介したように、スパースモデリングの技術を用いることで粗々な画像の抜けている部分を補完することができます。こうして、今まで謎のベールに包まれていたブラックホールは、スパースモデリングの技術によってその全貌を明らかにすることとなったのです。
スパースモデリングが機械学習事例として注目されたその他のニュース
スパースモデリングが活躍した事例は、ブラックホールの撮影だけではありません。もっと私たちの身近なところでもさまざまな場面で活用されはじめています。
例えば医療現場では、いまや重要な検査手法のひとつであるMRI検査。このMRI検査にもスパースモデリングの技術が活用されようとしています。
MRI検査は、撮像に際して長時間安静にしておかなければならないという問題点がありました。
今回は、スパース性とは何か、また、スパースモデリングの技術的特徴とその活用事例について初心者の方にもわかりやすいように説明してきました。
スパースモデリングは、ディープラーニングの大きな壁となる、大量なデータの必要性と計算コストの増大という問題を解決する技術として期待されている技術です。少量のデータであっても本質的な特徴を決定づける要素を抽出して分析を行うことによって期待する結果が得られるということでしたよね。さらには、画像解析などにもおおいに活用が期待されています。
ディープラーニング技術のさらなる普及には、必要不可欠であるといっても過言ではないスパースモデリング。これから機械学習、ディープラーニングを学習しようとする人は知っておいて損はない技術といえるでしょう。
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