AI(人工知能)が人間を超える点とされているシンギュラリティ(技術的特異点)について聞いたことがある方でも、シンギュラリティ大学を初めて聞いたという方は少なくないのではないですよね。
また、「大学」と聞くと「広々とした校舎・キャンパス」「卒業証書」などをイメージする方もいるかもしれません。ところが、名前に「大学(University)」とついており、単位や修了証明書はもらえるものの、シンギュラリティ大学では学位の授与はなく、独自の校舎もありません。つまり、シンギュラリティ大学は普通の大学とは異なる点がたくさんあるのです。
そこで今回は、シンギュラリティ大学とはどういった存在で、どのような活動をしているのか紹介します。まずは、シンギュラリティ大学はそもそもどのような大学なのかについてです。
シンギュラリティ大学の使命とは重大問題を解決すること
シンギュラリティ大学とは、2008年にシリコンバレーで創設された教育機関で、AI(人工知能)分野や音声認識技術、シンセサイザーなどの開発で著名なレイ・カーツワイルと、民間技術を推進するためにコンテストを主催するXプライズ財団CEOのピーター・ディアマンティスが2人で開設しました。本部はNASAリサーチパーク内にあり、その目的は地球が抱えている重大問題(グランドチャレンジ)を解決し、世界中にインパクトを与えることです。シンギュラリティ大学のいう地球が抱えている重大問題は、次の12分野に分けられます。
- エネルギー
- 環境
- 食糧
- 住居
- 宇宙
- 水資源
- 防災
- ガバナンス
- 健康
- 教育
- 貧困
- セキュリティ
これだけ幅広いと「問題だらけでどうやって解決するんだ」と途方にくれる方もいるかもしれませんよね。そして、重大問題の解決するためにエクスポネンシャル・テクノロジーを活用しようというのが、シンギュラリティ大学の特徴です。
ではこの地球の大きな問題を解決するために、シンギュラリティ大学で学べるプログラムについて次で紹介します。
シンギュラリティ大学で学べる主な2つのプログラム
シンギュラリティ大学では、地球の重大問題を解決するために、主に次の2つのプログラムを提供し、人材育成をしております。
グローバル・ソリューション・プログラムは集中起業コースで、10週間かけて行なわれます。ロボット、AI(人工知能)、バイオテクノロジー、環境、コンピュータなど、さまざまな未来技術に関心を持っている人々が、これまでの大学教育の枠組みを超えて勉強することができます。
プログラムの受講には、直接参加か各国で開催されるグローバル・インパクト・チャレンジで優勝することが求められます。倍率は非常に高いと言え、80人の枠に3000人以上の応募があるほど大人気なんです。参加者は45か国から集まり、女性が半数以上になった年もありましたが、主にこのプログラムでは起業への高いモチベーションを持った人々が参加しました。例えば、AI(人工知能)やナノテクノロジーなどの最先端技術動向を学んだり、チーム単位で、世界規模の重大問題解決に向けて切磋琢磨しながら学んでいきます。
シンギュラリティ大学はグローバル・ソリューション・プログラムに対して、企業幹部や大企業やスタートアップ、政府関係の組織に務める幹部を対象に、シエグゼクティブ・プログラムも提供しています。プログラムの期間は1週間で、エクスポネンシャル・テクノロジーが産業に与える影響に焦点を当てて講義が行われます。
学費は宿泊・食事も含め、1万4000ドルと高額な設定となっているものの、なんと希望者が殺到しています。定員オーバーだったり、キャンセル待ちリストができていたりと、とても人気のプログラムです。
エグゼクティブ・プログラムで目玉となっているのが、3Dプリンタ・スキャナ、ロボット、VR(バーチャル・リアリティ)、ドローンなどが挙げられます。他にも、AI(人工知能)やマシンラーニングがもたらす働き方の変化、デジタルネイティブの台頭で変化する労働市場など、先端技術が地球に与える影響について学ぶことがかのうです。たくさんの最先端技術を学べるなんてワクワクしますよね。
最後に、シンギュラリティ大学で行なわれているカンファレンスについての紹介です。
シンギュラリティ大学で行なわれている主な3つのカンファレンス
シンギュラリティ大学では、先ほど述べたようなプログラムの提供のみならず、エクスポネンシャル・テクノロジーによる産業の変化に関したカンファレンスも開催されています。カンファレンスは医療、金融、製造の主に3分野について行なわれており、いずれもシンギュラリティ大学がもっとも注目している分野です。
シンギュラリティ大学ではテクノロジーの発展が医療に与える影響を議論します。主に3Dプリンタ、幹細胞、遺伝子操作といったテクノロジーに注目して行なわれます。医療では近い将来、AI(人工知能)やビッグデータ、ロボティクスの利活用によって正確な診断や手術がロボットに取って代わられると考えられています。
また、ナノテクノロジーやバイオテクノロジーのエクスポネンシャルによって、人類の寿命も指数関数的に延びるといわれています。シンギュラリティ大学の創設者の一人であるレイ・カーツワイルによれば、AI(人工知能)の急速な成長を健康や医療の分野に応用することで、10年から15年以内に人類は不老不死になる可能性があるといっています。
シンギュラリティ大学では、AI(人工知能)やデジタル通貨、ロボティクス、ナノテクノロジー、クラウドファンディングといったテクノロジーが市場の変革に対してどのような影響を及ぼすか議論します。例えば、金融分野における課題である、ブロックチェーン技術(仮想通貨の中核となる取引データの技術)の銀行等へ与える影響や、仮想通貨へのサイバー攻撃からの防御について、金融業における機械学習の活用が議題です。
産業革命以来の製造業の大規模な変革期の中で、シンギュラリティ大学では、AI(人工知能)、ロボティクス、デジタルファブリケーション、ビッグデータ、ナノテクノロジーなどをいかに活用して、製造業へと生かしていくのか議論します。
さて、今回はシンギュラリティ大学とはどういった存在で、どのような活動をしているのか紹介しました。
シンギュラリティ大学は地球レベルの重大問題を解決するための人材を育成するための教育機関なので、今後もしかしたら重要な役割を果たしていくかもしれないですよね。
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