リハビリはしている側、指導する側どちらにも労力がかかりますよね。患者さんは思うように動かない体をうまく動かしたり、体が動かないことへのストレスなどと戦うでしょう。
自分は足を骨折した経験があって、歩けるようになるリハビリを受けたことがあります。うまく歩けるようになるまでは日常で苦労したなぁ・・・。
そして理学療法士の方が、そのリハビリをどうやって進めるかの計画を日々立てながらサポートしています。でも、その裏でたくさんの書類の準備に時間がかかっているのだとか。
それを解決するために、最近ではリハビリでIoTが使われるようになりました。IoTとは、インターネットを通してモノとモノをつなぐ仕組みのこと。そう、リハビリにもデジタルの時代が来ています。
でも、そんなリハビリとIoTってどんな関係性があるの?どんな使われ方をするの?など疑問に感じますよね。この記事ではリハビリにIoTが使われることでどんな影響があるのかを解説します。もし今回の記事の内容を覚えていたら、将来のリハビリに役立つかもしれません。
ということで今回は、リハビリにIoTが使われる取り組みの内容と、その効果についてお伝えします。
リハビリとは
まずは、リハビリの定義について解説しましょう。
リハビリとは、一言でまとめると「日常生活を送るための訓練」のこと。もともとは「機能訓練」とも呼ばれていましたが、現在は病気や怪我をした人が不便なく生活を送れることを目標とした
そんな時に、生活を送るための動きをできるようにする訓練がリハビリです。このリハビリによって、患者さんが少しでも生活が楽になれるようにするのが目標です。
そしてこれまでは、リハビリは人の手でチェックしたり、人の手で計画を立てたりしていました。しかし最近では、リハビリにはIoTだけでなくAI(人工知能)やロボットが使われるようになってます。特にIoTだけでなくAI(人工知能)が使われた例は、こちらの記事でも取り上げているので合わせてチェックしましょう。
なぜ、リハビリにIoTが使われるようになったのか
では、リハビリにIoTが使われるようになった理由について解説しましょう。
リハビリを効率よく進めるため
リハビリは、もともと病院内で行うことがメインでした。通院しながら行うリハビリもありますが、メインは入院中に行っています。これによって、退院した後の日常生活に不便がないように行っていました。
しかし、厚生労働省では現在同じの病気・怪我での入院は基本180日以内と設定されています。これによってリハビリを受けられない人が増えてしまう可能性があります。そうなると、いかに短い時間で、いかに回復できるリハビリができるかに重点を置く必要があります。もちろん患者である私たちにとっても、早く歩いたり生活に困らないようになりたいですよね。
理学療法士・作業療法士の負担を軽くするため
リハビリは、理学療法士・作業療法士と呼ばれる方がメインに進めます。理学療法士とは歩く、動く、起き上がる、寝転ぶなど基本的な動作の回復を目指すのに対して、作業療法士は食事、料理、書くなど日常の細かい動作の回復を目指す違いがあります。とはいえ、基本的には患者さんのリハビリをサポートすることには変わりはありません。
さらに、理学療法士・作業療法士は実際のリハビリに寄り添う現場の仕事だけでなく、病院や患者さんに出すカルテやリハビリの計画書の作成の仕事もあります。このような書類の作成は、なるべく効率的に行いたいですよね。
リハビリにIoTを使うことの効果
もしリハビリにIoTが使われたら、どのような効果があるのでしょうか。次からは、リハビリにIoTを使うことにおける効果について解説します。
自宅でもトレーニングができるようになる
今まで、リハビリは病院に通って行っていました。しかし、そうなると病院が遠いとなかなか通うのが大変ですよね。また、病院でリハビリを行う時間は限られていて、「もっとリハビリを行いたい!」となっていてもなかなできないところは悩ましいでしょう。
これがリハビリにIoTを活用すると、自宅でもリハビリができるようになる可能性があります。例えば心臓系の病気にかかっている方が行う心臓リハビリでは、退院後もリハビリを続けている人が少ない課題がありました。
そこで、株式会社リモハブがアプリ・ウェアラブル機器・IoTバイクを連携した遠隔リハビリシステムを開発。実証実験を行ったところ、リハビリの継続ができるようになりました。
つまりこのようなシステムがもっと広まれば、家でもリハビリができるようになり、回復がより早くなるに違いありません。
リハビリの効果を実感できるようになる
リハビリを行っていても、「なんとなく歩けるようになった」「なんとなく体を動かせるようになった」など今ひとつ効果を実感できない場合もありますよね。しかし、IoTを使うと、リハビリの効果を可視化できます。
富士通が開発した「FUJITSUヘルスケアソリューションHOPE ROMREC(ホープロムレック)」では、動画によって骨格の動きを推定し、関節の動き方を画面に表示します。これを使って患者さんに説明すれば「今自分がどれくらい体が動かせているのか」がわかりやすくなるでしょう。
このように、IoTを使えばリハビリがどれくらい進んでいるのかが見えやすくなり、患者さんも納得してリハビリを進めやすくなるかもしれません。
実際にリハビリにIoTを使った事例・サービス
実はリハビリにIoTを使ったサービスや事例は、次々に登場しています。そのサービスや事例について、いくつか紹介しましょう。
ウェアラブル端末で、リハビリの結果を可視化する
リハビリを行う際に大変な点が、記録です。今日はどんなトレーニングを行ったか、どこの関節を動かしたかなどを記録することは、観察力が求められるので手間がかかります。また、患者さんからしても「果たしてリハビリの効果が出ているのかな?」と不安を感じることもありますよね。
しかし、これらの問題はウェアラブル端末によって解決できます。株式会社Moffが開発した「モフ測」では、歩き方やバランス感覚、関節の動きなどを計測します。これによって、リハビリの記録を簡略化します。さらに、リハビリの結果を可視化するので、患者さんも「今日は昨日よりも早く歩けた」とモチベーションを上げられるかもしれません。
こういう端末があれば、患者さんにとっても理学療法士さんもとても便利ですよね。
「デジタルリハビリ」で、子供のリハビリを楽しくする
リハビリは高齢者だけでなく、子供も行うことがあります。でも、子供がリハビリを行う場合「楽しい!」と感じないとなかなか継続しないという問題がありました。それでも、リハビリの楽しさを伝えるのは難しいですよね。
そんな時に、NPO法人「Ubdobe(ウブドべ)」では、デジタルのアートとセンサーを使った「デジリハ」が開発しました。「デジリハ」は、リハビリを行う人の手足や目の動きを使ってゲーム感覚でリハビリができます。ゲームを行うには、視線の動きを読み取る、骨格を検知する、手や指の動きを読み取るなど5種類のセンサーが必要ですが、この中の一つに先程の「Moffバンド」も入っています。
デジリハでは、現在16種類のアプリが配信されています。その中の「のびのびフタバ」ではMoffバンドによって、腕を振った動きによって植物を成長させます。これなら、振れば振るほどどんどん楽しくなりますよね。
こうやってリハビリを楽しめる仕組みがあれば、自分もやってみたいって思う!
リハビリにIoTを活用する上での課題
一見すると、リハビリにIoTを導入することはとても便利なように思えますよね。しかしリハビリにIoTを入れることは、いくつか知っておくべき課題があります。その課題について、解説しましょう。
まだ浸透していない
リハビリにIoTを導入する取り組みは、まだまだ始まったばかりです。つまり、不明な点があっても自らで解決する必要があります。
特に、今介護の領域ではITの導入が進められています。しかしこの動きも、一部の大企業がメインで中小企業にはまだまだITが進んでいません。
また、介護やリハビリに関わる人の中には「ITって何?」と考える人もいるかもしれません。場合によっては、現場や管理部で理解を得られず導入がなかなかできないという事態になることもあるでしょう。
このため、IoT機器を導入する際には、しっかりメリットを伝えて、現場・管理部が不安に思う点をお互いにすり合わせましょう。また、代理店やメーカーにも、わからない点があったら質問するようにすれば、機器の効果を存分に発揮できます。
さらに、最近では介護とIT業界の交流会を行っているところもあります。積極的に顔を出して情報を交換すれば、今まで解決できなかった問題が解決する可能性もあるかもしれません。
安全性が証明されていない
もう一つの課題としては、「医療機器の安全性を証明する必要がある」という点です。
今までのように病院でリハビリする場合、何かあった際はお医者さんを含めて対応できる施設があります。しかし在宅できる心臓リハビリの場合、そもそも在宅の心臓リハビリを実施している国がいまだになく、また、在宅において万が一の事態の対応も現在ではなかなか難しいとされています。このため在宅の心臓リハビリに関しては、まだまだ安全とはいえない部分があります。
他にも、機器のハッキングされた場合のリスクや、セキュリティをしっかり備える必要があります。
とはいえ、今後はこれらの対応に対してシステムを構築する際に考慮されるようになるかもしれません。
リハビリの今後
上記の課題を踏まえても、リハビリにIoTを導入する動きはどんどん加速していく可能性があります。今後、リハビリはどうなるのか、その未来像についてお伝えしましょう。
まずは、リハビリそのものが大きく変わることで、理学療法士の必要とされる力が変わります。デジタルが活用されることによって、一部の方は「理学療法士の仕事はどうなるの?」と心配になるかもしれません。これからの理学療法士に必要とされる力は、データから問いを立て、患者さんと向き合う力です。つまりIoTやAI(人工知能)によって出された結果をただ鵜呑みにするだけでなく、それを元にして患者さんへの配慮も必要になってきます。
一方、患者の側である私たちも、いずれリハビリのお世話になる可能性が高くなっています。日本人の寿命が80歳を超える中、介護が必要とされる高齢者の中でも骨折や転んでしまうことで足・腰の機能が低下することもあります。そんな際に日常生活を以前と同じように過ごすなら、リハビリが必要なのは間違いありません。
このようにして、リハビリの技術はデジタルによってどんどん進化しています。今後も、私たちが楽しみながら、より効率的にリハビリができるようになるかもしれません。
さて、今回はリハビリにIoTが使われる取り組みの内容と、その効果についてお伝えしました。それでは、今回の内容をざっくり振り返りましょう。
- リハビリとは、「日常生活を送るための訓練」のこと
- なぜ、リハビリにIoTを導入したのかというと、「リハビリを効率よく進め、早く回復するため」「理学療法士・作業療法士の負担を軽くするため」である
- リハビリにIoTを導入すると、「自宅でもトレーニングができるようになる」「リハビリの効果を実感できるようになる」などの効果がある
- 実際にリハビリにIoTを活用した事例・サービスとして「モフ」「デジタルリハビリ」などがある
- リハビリにIoTを導入する課題としては、「まだ広まっていない」「安全性がまだ確立されていない」がある
- リハビリの今後は、VRなども含めてデジタルをどんどん活用するようになるだろう
このように、リハビリはIoTやAI(人工知能)などデジタルの力を活用してどんどん進化しています。今後もどんどん新しい技術が登場するので、ぜひ今後もリハビリ分野に注目しましょう。そして患者さんが安心してリハビリができるようにすれば、お互いにハッピーになれますよね。
【お知らせ】
当メディア(AIZINE)を運営しているAI(人工知能)/DX(デジタルトランスフォーメーション)開発会社お多福ラボでは「福をふりまく」をミッションに、スピード、提案内容、価格、全てにおいて期待を上回り、徹底的な顧客志向で小規模から大規模ソリューションまで幅広く対応しています。
御社の悩みを強みに変える仕組みづくりのお手伝いを致しますので、ぜひご相談ください。
介護リハビリ分野におけるICT技術活用の可能性 I-LABO – クリエイターのためのイノベーション創出研究会 Vol.7
理学療法士の仕事
[16] 脳卒中のリハビリテーション
VRやIoT、AI技術で、リハビリテーションは新時代へ
「自宅でリハビリ」技術の開発が加速、AIアプリやIoTバイクで指導支援
リハビリ動画から自動で肩と肘の関節可動域を測定するソリューションを発売
先進的なデジタルリハビリで沖縄の健康長寿の復活を目指す【株式会社沖縄富士通システムエンジニアリング 町田宗平氏】
高齢者の衰えITで阻止 神戸市と民間連携、フレイル予防事業化へ
リハビリをエンタメに!「デジリハ」が2021年4月ついに正式リリース!
アプリ │ デジリハ(Digital Interactive Rehabilitation System)
デジリハ【製品版】リリース!!16本のアプリを追加配信しました。
リハビリをエンタメに!「デジリハ」が2021年4月ついに正式リリース!
介護領域における課題をIoTで解決する【株式会社Rehab for JAPAN|大久保 亮】
ICT活用で変わる在宅心臓リハビリ(谷口達典)
「介護のIT化」はまだ準備の前段階、介護ITエンジニアという職種の確立に光明を見出す
介護リハビリ分野におけるICT技術活用の可能性 I-LABO – クリエイターのためのイノベーション創出研究会 Vol.7
デジタル×ニューロテクノロジーが拓く、未来の医療 ~Computational Rehabilitationによる脳卒中リハビリのブレイクスル~
リハビリ×情報テクノロジー情報教育先端事例|大阪電気通信大学
デジタルヘルス×IoTによるリハビリ支援