交通事故やスポーツによる骨折やむち打ち、捻挫などで接骨院に通う方は多いですよね。接骨院では、骨折などの外科的治療が完了しても身体の痛みや不調が続けば、その原因を見つけ出し、治るまで丁寧に診てもらえます。接骨院は、先生の手による施術で痛みをとるというイメージがありますが、実はこのような、見た目ではわかりにくい痛みの原因究明に、AI(人工知能)が活躍しています。
AI(人工知能)ならディープラーニングの技術によって、人の全身画像から問題のある筋肉や関節などを見つけ出します。これにより、最適な施術ポイントがわかるので、痛みを根本から治せるでしょう。なので、今や接骨院にとってAI(人工知能)は、なくてはならないツールになりつつあります。
この記事では、まず接骨院の施術内容や今抱える問題をお伝えし、さらに、AI(人工知能)が使われている事例を交えながら、接骨院の未来を考えます。今、体の痛みを抱える人だけでなく、将来に向けて自分の体のメンテナンスをしっかり行いたいという方にも役立つに違いありません。
そんなわけで今回は、AI(人工知能)を使うことで、接骨院の施術が将来どのように変わるのかを解説します。
接骨院の現在の施術って主にどんな仕事か
まず、接骨院ではどんな施術が行われるのかお伝えしましょう。
接骨院では、柔道整復師という国家資格保持者が施術を行いますが、主な治療範囲は、骨折や脱臼、打撲、捻挫、挫傷など。もっとわかりやすく言うと、「腰痛」「肩の痛み」「肉離れ」「むちうち」など日常生活や交通事故、スポーツなどで起きた痛みやケガを手術や薬などに頼らずに治していくことを得意とします。
(骨折や脱臼はケガをした直後の応急処置のみ。医師の同意があればその後の経過も診ることが可能)
接骨院の施術方法としては、電気治療や温熱パック、マッサージなどですが、レントゲンやMRIでは異常なしと言われる原因不明の痛みや、交通事故の後遺症などにも対応します。そして、手を使って押したり揉んだりしながら、身体の状態を知ることで、痛みの原因を突き止めてゆっくり治します。
それでは、接骨院の施術の流れを見ていきましょう。
- 問診:どんな痛みがいつから続いているのかなど、今の体の状態を丁寧に聴き取ります。
- 姿勢や可動域のチェック:一人ひとりに最適な治療を行うために、体の歪みや肩・腰などの可動域をチェック。どこがどうなっているのか、全身の状態を知ることで痛みの原因を突き止めます。
- 治療を行う:痛みの原因が特定できれば、手でコリをほぐすなどの手技療法にするか、体に微弱な電気を流す電気治療にするかなど、具体的な治療法を決めて進めます。
- 治療後のカウンセリング:治療前に比べて痛みがどうなったかを確認しながら、自宅でのトレーニングなど今後のケアにつなげます。
このように、怪我や傷などの痛みを丁寧にとってくれる接骨院ですが、実は様々な課題を抱えています。続いて、接骨院にはどんな悩みがあるのか見ていきましょう。
接骨院が抱える問題
接骨院では、主に下記のような問題を抱えています。
拘束時間が長く体力的にキツイ
接骨院へは仕事帰りに通う患者も多く、営業終了時間が20時~21時というところも少なくありません。閉院後もカルテ整理や清掃などの雑用が目一杯あります。朝も9時開院となると、昼休みはあっても拘束時間は11時間以上になる日も多いのだとか。
さらに、手技で丁寧に施術を行っていると体力的にも限界になるでしょう。そのため、顧客満足度を高めながらも業務の効率化が求められます。
自分の施術のスキルが不安
接骨院では、体を揉むなど独自の手技で痛みの原因を見つけ出します。しかも、レントゲンではわからないような痛みに対しても処置を行うので、専門的知識だけでなく、多くの経験が必要になります。
しかし、自分の経験したことのない症例を担当することも少なくありません。そんな時、自分の判断が正しいのか不安になりますが、あいまいな施術をすることもできませんよね。なので、多くの柔道整復師はスキルを高めるため、日々研究や勉強に励んでいます。このような勉強会は、さらなる業務の圧迫につながるでしょう。
接骨院の増加で競争が激化
接骨院で働く柔道整復師を養成する専門学校は、急激に増えています。たとえば、平成10年には14校でしたが、平成23年には104校に。それに比例して、接骨院の看板もあらゆるところで見かけるようになりました。そんな中、生き残っていくには、今までにない新しい施術方法を取り入れるなど、他の接骨院との差別化を図る必要があるでしょう。
以上のように、接骨院には様々な課題がありますが、AI(人工知能)導入によって施術の仕方は大きく変わっています。そこで、次に具体的な事例をお話します。
すでに接骨院で使われているAI(人工知能)
ここからは、接骨院で活躍するAI(人工知能)をお伝えしましょう。
体の使いグセを分析して施術の独自性を高める「E.F.A.S(イーファス)」
「E.F.A.S(イーファス)」(CIM有限会社)は、最新のデータベース技術により開発した運動機能分析システムで、AI(人工知能)が全身の筋肉や骨格の動きのアンバランスを分析し、調整が必要な筋肉や関節を特定します。
そこでE.F.A.Sは、動作検査によって筋肉や関節における1,944,000通りある運動障害パターンの中から、悪くなっているパターンを分析して、施術ポイントや施術方法を特定します。その後は、ポイントに合わせていつもの施術を行えるので効率的です。
さらに、サポート機能も充実。たとえば、iPad本体で撮影した画像は、施術前後で合成比較分析できるので効果が見えやすく、施術へのモチベーションにつながります。また、個人に合わせたストレッチなども視覚化され、プリントやメールで自宅サポートできるので、多忙なプロアスリートなどの身体のケアにも役立っています。
このように、AI(人工知能)を活用して体の使いグセを改善するというE.F.A.Sの手法は、接骨院の独自性を高めて施術の新たな特徴になっています。
動作解析で指導をサポートする「Sportip Pro(スポーティッププロ)」
「Sportip Pro(スポーティッププロ)」(株式会社Sportip)は、動きや姿勢をスマホで撮影すれば、AI(人工知能)が瞬時に自動解析し、個人の特性に合わせたトレーニングを自動で提案してくれるアプリです。そのため、接骨院だけではなく、フィットネスジムやスポーツトレーナーにも多く利用されています。
Sportip Proには、AI(人工知能)解析機能、姿勢解析機能、トレーニングメニュー自動再生機能、オンラインによるサポート機能などがあります。
また、姿勢解析機能では体の歪みを数値化・可視化し、胸椎や骨盤など部位ごとの状態を詳細に診断します。これで、痛みの原因が見える化され、適切な施術が可能になります。
さらに最近では、新しい機能として、高齢者向けのフィードバックも追加されたので、転倒予防やフレイル対策、脳卒中リハビリに効果的な負荷の低いトレーニングも提案できます。これなら、個人別トレーニングやリハビリ方法はSportip Proにお任せして、人は施術に専念できますよね。
姿勢の悩みを1分で診断する「Posen(ポーズン)」
最後にご紹介する「Posen(ポーズン)」は、AIZINE(当サイト)を運営するAI(人工知能)開発会社であるお多福ラボのグループ会社「Posen株式会社」が提供する、AI(人工知能)で姿勢を測定・分析するソフトです。
Posenの操作は、タブレットカメラで姿勢を撮影するだけ。場所を取らず、身体への専用器具装着もないので簡単です。そして、撮影された全身の画像から、AI(人工知能)が関節を読み取り、姿勢の歪みや関節の可動域を数値化します。分析結果はなんと1分以内に表示されるので待ち時間もほとんどありません。
こうしたAI(人工知能)による姿勢分析により、痛みの原因や改善すべき部分が見える化されるので、患者さんも納得した上で適切な施術が行えます。さらに、診断結果や今後のリハビリなどのアドバイスも、LINEやメールで提示できるので定期的な分析への誘導が可能です。接骨院では痛みの改善に時間がかかることが多いので、Posenは信頼関係を築くためのツールになっています。
そんなPosenに興味が湧いた方は、まずこちらをご覧ください。
接骨院がAI(人工知能)を利用した方が良い理由
前項では、接骨院で活用されているAI(人工知能)をご紹介しましたが、これを踏まえてAI(人工知能)を利用するメリットについて考えましょう。
安定した施術ができる
AI(人工知能)は蓄積された過去の膨大なデータを基に分析するので、痛みの原因などを正確に突きとめて的確な診断を出します。一方、人による施術は、経験値で左右されることも多く、個人のセンスやコンディションによって結果にムラが出ることも。なので、AI(人工知能)を使えば常に高度な分析ができ、安定した施術につながります。
効率よく治療が行える
AI(人工知能)を使えば、効果的な施術ポイントやトレーニング方法までも教えてもらえるので、診断時間が削減され人は施術に集中できます。そして、患者一人ひとりに費やす時間が短縮されれば、体力的負担も少なくなり働き方改革につながるに違いありません。
自宅サポートが行えて信頼性が高まる
AI(人工知能)が分析した結果やストレッチ方法などを画像表示して、メールやLINEで送れば、自宅にいる患者へも個人指導が行えます。これにより、接骨院への信頼性が高まり、長期的な施術になっても納得して通院してもらえるでしょう。
他の接骨院と差別化を図れる
接骨院は今や飽和状態ですが、そんな中で勝ち残るには、他にはない独自性を引き出すことが大切です。たとえば、AI(人工知能)による分析や、独自のトレーニング方法などを取り入れれば差別化が図れます。また、従来の施術方法に組み合わせて、タブレットの施術画面を見せるだけでも新鮮に感じられ、今まで取り込めなかった年齢層の方にも興味を持ってもらえるはずです。
以上のようなことから、接骨院にAI(人工知能)を導入すれば、「拘束時間が長く体力的にキツイ」「自分の施術のスキルが不安」「接骨院の増加で競争が激化」など、接骨院が抱える課題解消に役立つに違いありません。
そんなわけで、これからはAI(人工知能)を導入する接骨院が急増すると考えられます。そこで、接骨院での施術は今後どう変わるのかを考えましょう。
接骨院とAI(人工知能)の今後
接骨院にAI(人工知能)を利用すればメリットはたくさんありますが、将来、接骨院の仕事すべてをAI(人工知能)に任せることは難しいでしょう。なぜなら、人の手による施術は、人にしかできない心地よさがあるからです。
また、施術者が「どこを施術するのか」を習得するには、豊富な経験が必要でしたが、AI(人工知能)に判断してもらえば、経験が浅くても最適な施術できます。ですから、将来の接骨院では若い世代の活躍も期待できるでしょう。
さらに、AI(人工知能)の精度の高い分析なら、今後出てくるかもしれない体の不調も予測できるはずです。なので、いつまでも健康体で生活するためのサポートやトレーニングに特化した、「予防型接骨院」という新たなビジネスモデルが築かれるかもしれません。いずれにせよ、接骨院にAI(人工知能)を導入すれば、ビジネスの幅が広がるのは間違いありません。
さて今回は、AI(人工知能)を使うことで、接骨院の施術が将来どのように変わるのかを解説しました。
接骨院では、柔道整復師という国家資格保持者が施術を行いますが、日常生活や交通事故、スポーツによる骨折や脱臼、打撲、捻挫、挫傷などを電気治療や温熱パック、マッサージなどで治療します。
そんな接骨院では、「拘束時間が長く体力的にキツイ」「自分の施術のスキルが不安」「接骨院の増加で競争が激化」などの課題を抱えています。しかし、AI(人工知能)を使えば、「安定した施術ができる」「効率よく治療が行える」「自宅サポートが行えて信頼性が高まる」「他の接骨院と差別化を図れる」というメリットが得られるので、接骨院の課題解消が期待できます。
また、接骨院で使われているAI(人工知能)もご紹介しました。
- 体の使いグセを分析して施術の独自性を高める「E.F.A.S(イーファス)」
- 動作解析で指導をサポートする「Sportip Pro(スポーティッププロ)」
- 姿勢の悩みを1分で診断する「Posen(ポーズン)」
これからは、AI(人工知能)を使って独自の施術を行う接骨院が増えると予想されます。そして、人の判断では難しい部分をAI(人工知能)で補えば、人の手による施術はもっと効果的に行えて、顧客満足度もアップするでしょう。健康寿命にも注目される昨今ですが、将来の接骨院は、病気の予防にも一役買う存在になるに違いありません。