システム開発を行う時には、さまざまな方法を検討しますよね。そんな中で、よく使われる方法が「オフショア開発」です。オフショア開発とは、情報システムやソフトウエアの開発業務を海外の事業者や海外子会社に委託、発注する手法です。実際に国内ではオフショアで開発されたソフトウエアやアプリが使われ、また日本の全企業の約半分近くがオフショア開発を利用しているとのこと。
とはいえオフショア開発は海外が相手であり、相手の内容をどのように把握するのか、言葉も文化も習慣も違うのに大丈夫か、製品の質はどうなのか、など気になるでしょう。この記事ではそんなオフショア開発における基礎知識から疑問点まで全てお答えします。開発手法の一つとしてオフショア開発も検討に入れられるかもしれません。
そこで今回は、オフショア開発とは何か、現状はどうなっているのか、今後の動向予想等をできるだけわかりやすく解説します。
オフショア開発とは何か
オフショア開発とは「情報システムやソフトウエアの開発業務を海外の事業者や海外子会社に委託、発注すること(引用:オフショア開発とは – IT用語辞典 e-Words)です。要はシステム、ソフトウエア開発、Webサービス開発、システムの運用、保守等を海外に発注することを指します。
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日本のオフショア開発の現状
次に、総務省発行の情報通信白書やIT人材白書(以下IPA)に基づいてオフショア開発の現状を見てみましょう。
日本のオフショア開発市場規模は2008年で約1,000億円、IPAの調べでは日本の全企業の45.6%が利用しています。特にオフショア開発を利用している(ITサービス関連)企業は、従業員数1000人超の企業だと68.2%の企業がオフショア開発の経験があり、大企業が主体となっている現状があります。
さらに、オフショア開発を主に発注する日本のIT業界の現状について見てみましょう。アメリカは35%がベンダー企業に、65%がユーザー企業となっており、システム開発においては内製が多いです。その一方で日本ではIT人材の72%がベンダー企業(BtoB:日立、NTTデータ、富士通等)に、残りの28%がユーザー企業(BtoC)に属し、企業の受託開発が中心となっています。またIT人材の数は、日本105万人、アメリカ420万人アメリカが絶対数で約4倍、人口比が約2.6倍であることを考慮しても日本のIT人材不足とも言えるでしょう。
アンケート結果や慢性的なIT人材不足の現状、海外の高度な人材も含めて人材は豊富である事情も合わせて考慮すると、まだまだオフショア開発は伸びる余地があるかもしれません。
オフショア開発のメリットとデメリット
オフショア開発は文化や商習慣の異なる外国への発注であり特にデメリット面の検討と対策が重要です。それぞれについて解説します。
まずオフショア開発のメリットとしては、コストの削減、人材(リソース)の確保、納期の短縮等です。日本のIT人材は不足しており外注によるリソースの確保が納期の短縮や国内の人材不足の補完にもなります。最近は中国等の経済発展、それによる人件費の高騰もありますがまだまだ相対的に海外の人件費が安く、コスト削減効果が見込めるでしょう。例えば、ベトナムはオフショアの相手先として人気が高い国ですがIT技術者の人件費は日本の約三分の一の水準です。
次にオフショア開発のデメリットとしては、時差による問題、国民性や文化の違いによる問題、商習慣による問題、コミュニケーションの取り辛さ、問題発生時に即応できないこと、品質の不安、政治事情等です。
海外でのコミュニケーションは、現地語か英語が中心になりますよね。しかし言語が使えないとコミュニケーションが取りづらくなってしまいます。また問題が発生した場合に時差があれば即連絡が取れないなどの問題もあります。
そして、品質についての考え方でも日本の常識は通用しません。例えば「不良品の割合0.1%」を要求されても全体にその意識が無いところでは浸透しにくい、文化や商習慣が違えば伝わりにくいですよね。このような文化や商習慣及びその差をお互いが理解しなければ仕事もスムーズに運ばないでしょう。
次はデメリットを上手に回避した成功例です。
オフショア開発の成功例
まずソフトウェア開発を行っているテモナ株式会社の成功例です。この会社はサブスクリプションコマースに特化したクラド型通信システム「たまごリピート」を発売しました。この「たまごリピート」は、ネットショッピングのリピーターを増やしたり、新しいユーザーを作るようなITサービスですがオフショア開発により僅か2ケ月間で開発しました。
次はアプリ開発のためにエンジニアを日本に招いて現場を見てもらい、開発の背景を理解してもらって成功した例です。タクシー配車アプリでトップのJapan Taxi株式会社では、2011年に主要都市で利用できる配車アプリを発売し、2018年現在約800社と契約しています。さらに「キッズタクシーアプリ」というアプリ開発もオフショア開発で行っています。タクシーという名前ですが配車アプリの開発専門会社です。「キッズタクシーアプリ」はその名の通り子供の塾や習い事への送迎を親に代わって行うものです。
オフショア開発の今後
オフショア開発は、今後もどんどん増えるでしょう。その背景には国内のITエンジニアの慢性的な不足、IT関連業界の経済的波及効果が大きく各国とも力を入れていることがあります。IPAの調査では2030年には日本のIT人材の不足は40万人に達するとのことであり、また海外には優秀な技術者も含めてIT人材が多い、日本もコスト削減だけでなくより高度でグローバルな展開を目指す段階になっているからです。
その一方で、今後国際競争がますます激しくなり特に高度人材の確保は困難が予想されます。従来は国内でシステム開発の根幹部分を、委託先でプログラミングやテストを分担するケースが多いですが、今後は根幹部門も信頼できる外国の委託先に任せるかもしれません。
さて今回はオフショア開発について解説しました。オフショア開発とはシステム開発等を海外に発注することです。日本国内のIT人材不足もあり当初はコスト削減の目的で始まったのですがさらに進展し、海外の高度な人材を活用してより高度でグローバルな展開を目指す段階になっています。
IT産業は経済波及効果が大きくどの国も経済対策として力を入れており、高度な人材は世界中で要求されています。日本のオフショア開発市場規模は2002年からの6年間で約5倍に拡大しており、それでも開発市場10兆円の約1%であることを考慮すればオフショア開発はまだまだ伸びると予想されます。
オフショア開発のメリットはコストの削減、人材の確保、納期の短縮等、デメリットは時差による問題、国民性や商習慣の違いよる問題、品質の不安、政治事情等の問題があります。それらの問題を解消するためにブリッジSEを活用する、双方の差を理解したうえで詳細な仕様書作成や工程管理を心掛ける、必要があれば現地を訪問しての交流も図ることも必要でしょう。
成功例のテモナ株式会社のように技術最高責任者が現地に常駐し意思疎通と進捗の管理をチェックする、Japan Taxi株式会社のように現地技術者を日本に招いて開発対象の文化、背景を知ってもらうことも大きなポイントでしょう。
IT産業やAI(人工知能)関連産業は経済波及効果の大きい重要な分野であるが国内のIT人材は不足している、海外には優秀で相対的に安価な人材が多く存在する、コストの削減からグローバルな展開まで海外勢と協力してのオフショア開発は今後とも重要な地位を占めるに違いありません。
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