「シンギュラリティ(技術的特異点)が2045年に到来する」といった予測を聞いたことがある人もいますよね。これは、「2045年に、コンピューターが人間の能力を超える」という意味ですが、この説と一緒によく登場するのが「収穫加速の法則」という理論。
「収穫加速の法則」という言葉はあまり聞き慣れないように感じますが、簡単に言うと「技術の進化のスピードがどんどん速くなる」という法則のこと。たとえば、人類の進歩をたどっていくと、ホモサピエンスの誕生から農業文明の登場まで20~30万年。そこから文字が生まれるまで約5000年。さらに、都市国家が生まれるまで約2500年というように期間がどんどん短くなり、パソコンの発明からインターネットの発明までは14年しかかかっていません。
このように、変革の時間間隔がどんどん短縮されるという「収穫加速の法則」が、シンギュラリティの提唱に深くかかわっています。ですが、シンギュラリティが本当に来るのかは誰もが気になりますよね。
そこで今回は、「収穫加速の法則」と「シンギュラリティ」それぞれの意味を説明し、2つがどんな関係にあるのかをわかりやすく解説しましょう。この記事で「収穫加速の法則」への関心が高まるに違いありません。
収穫加速の法則ってどんな法則?
「収穫加速の法則」とはアメリカの発明家レイ・カーツワイルが提唱した「科学技術は指数関数的に進歩する」という法則です。
この指数関数的というのは、2.4.8.16.32…のように倍々ゲーム的に発展することで、初期の頃はゆっくりでほとんどわかりませんが、ある地点を過ぎると爆発的に変化するという特徴があります。ですから、私たちが普段感じている1.2.3.4…のような直線的な発展に比べて、かなり大きな変化ですよね。
※詳しくはこちらの記事で解説しています
では、どうして指数関数的に進化するのかというと、一つの重要な発明は他の発明と結びつき、次の重要な発明の登場までの時間を短縮するから。つまり、すでにある技術の改良や組み合わせなどにより、新たな技術を生み出すスピードがどんどん上がるからです。
このことから、カーツワイル氏は「ムーアの法則」は半導体だけでなく、あらゆる情報テクノロジーにも当てはまると考え、そこから誕生したのが収穫加速の法則です。
でも実際に、「収穫加速の法則」とはどんなものなのか、あまりピンと来ないですよね。なので、わかりやすいように具体的な例をあげて解説します。
収穫加速の法則が適用される身近な例
より身近な例として、今や生活に欠かせないインターネットの成長を見ていきましょう。
このような成長の理由は通信回線の進化です。インターネット誕生当時は、今までの電話回線を使用したものがほとんどだったので、通信速度も遅くやり取りできる相手も限定的でした。しかしその後、光回線など様々な回線が誕生したことで、驚異の通信速度が実現し、デバイスも安価になったため、インターネットが爆発的に普及しました。
さらに、インターネットの高速化により、スマホでSNSをしたり動画コンテンツを観ることも一般的になり、4Gや5Gなど新たな無線システムも登場して、通信環境は驚くほど快適になりました。最初にインターネットを作り出した技術が次の進化のために使われて、便利な機能をどんどん付け足しながら、とんでもないスピードでテクノロジーが進歩していますよね。
さらにもう一つ。インターネットの普及でスマホ利用者が増えましたが、それに比例して増えているのが写真です。SNSの人気とともに、スマホで撮影して写真をWeb上でシェアするという新しい行動パターンが生まれ、シェアされる写真の数も指数関数的に増えています。さらに、スマホカメラの性能もどんどん向上して、世界では今や一日あたり10億枚を超える写真がWeb上でシェアされているとのこと。これもインターネットの副産物で、テクノロジーが新たなテクノロジーを生んでいます。
では、「収穫加速の法則」と「シンギュラリティ」との関係を考える前に、「シンギュラリティ」についておさらいをしましょう。
ところでシンギュラリティって聞くけどどういう意味?
「シンギュラリティ(技術的特異点)」とは、「AI(人工知能)が、自ら人間より賢い知能を生み出すことが可能になる時点」のことですが、カーツワイル氏は、「1000ドルで手に入るコンピューターの性能が全人類の脳の計算性能を上回る時点」と定義しています。
さらに、「2029年には、すでにAI(人工知能)の思考能力が人間の脳の演算能力をはるかに超えるだろう」そして、「遅くとも2045年までには人間の脳とAI(人工知能)の能力が逆転するシンギュラリティに到達する」と、カーツワイル氏は予測しています。
このように、AI(人工知能)が成長して予測できないような変化が生じる「シンギュラリティ」に「収穫加速の法則」はどのように関わっているのでしょうか。次に説明しましょう。
収穫加速の法則とシンギュラリティってどんな関係か
まず、「科学技術は指数関数的に進化する」という法則が「収穫加速の法則」でした。
近年では、このようにテクノロジーが劇的に変化するまでの時間は10年ごとに半分になっていて、このままテクノロジーの発展が指数関数的に進むと、2045年までにコンピュータが人の脳の能力を追い越すという計算になります。
収穫加速の法則からわかるこれからの未来
それでは、収穫加速の法則がこのまま進むと、未来はどうなるのか考えましょう。
カーツワイル氏によると、「遺伝子やバイオ技術、AI(人工知能)やロボットなどの技術が、様々な異種業態で掛け合わされて指数関数的に進化していくと、テクノロジーは私たちの想像の追いつけないスピードで圧倒的な進化をみせていく」と主張しています。
確かに、ドローンや自動運転車、ロボットなど、私たちが過去に想像したものが実現するスピードは上がっていますよね。なので、10年後にはもう空飛ぶクルマが行き交っているかもしれません。
そして、もしかすると、そう遠くない未来に、急速に成長したテクノロジーと人間とが一体化する可能性もあります。つまりAI(人工知能)と人が競うより、AI(人工知能)と人が共存する世界になるということです。
こうしてみると、収穫加速の法則のように指数関数的にテクノロジーが成長すると、未来は現在の延長ではなく、想像もできないような驚くようなものになるでしょう。でも私たち人間は、新たなテクノロジーと共存して今までになかった能力を身に付ければ、その能力を使ってさらに次の革命を起こせるに違いありません。いずれにせよ、明るい未来を想像したいですよね。
さて今回は、「収穫加速の法則」と「シンギュラリティ」はどんな関係があるのか解説しました。
もう一度内容を振り返りましょう。
- 「収穫加速の法則」とは、レイ・カーツワイルが提唱した「科学技術は指数関数的に進歩する」という法則
- インターネットや写真も、収穫加速の法則が当てはまる例である
- 「シンギュラリティ(技術的特異点)」とは、「AI(人工知能)が、自ら人間より賢い知能を生み出すことが可能になる時点」のことで、カーツワイル氏は、「1000ドルで手に入るコンピュータの性能が全人類の脳の計算性能を上回る時点」と定義
- カーツワイル氏は「収穫加速の法則」を元に、未来のテクノロジーや社会の変化が指数関数的に進むことを予測して「シンギュラリティ」の到来を明言した
- 今後、収穫加速の法則で想像もできないような驚くような未来が来る
このように、シンギュラリティを考える上で、収穫加速の法則はとても重要です。それに近年のテクノロジーは、私たちが考えているよりも格段に速いスピードで成長しているので、のんびりしていると人間だけ取り残されるかもしれません。ですから、どんどん登場する新しいテクノロジーを、私たち人間はうまく利用しながら、一緒に進歩できると良いですよね。
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