高校の授業で、数学や理科を重点的に学ぶ理系と国語や社会を重点的に学ぶ文系に分かれることはありますよね。文系でさらに世界史を学んだ人は「ラッダイト運動」の言葉を聞いたことがあるかもしれません。
私も世界史やっていたけど、ラッダイト運動って何だっけ・・・。
ラッダイト運動とは、1810年代にイギリスで起きた機械打ち壊し運動のことです。時代は産業革命の真っ只中で、時代の変化に不安を感じた労働者が起こしました。
これだけ聞くと「遠い海外の、昔の出来事なので自分には関係ない」と感じるでしょう。しかし2020年の今、ラッダイト運動という言葉が注目を浴びています。その背景にあるのは、「AI(人工知能)」が絡んでいるのだとか。
そうなると、AI(人工知能)と一緒にこれからの時代を生きる私たちが改めてラッダイト運動のことを知っておくと、今後の生き方をしっかり考えることができるに違いありません。そんなわけで今回は、今知っておきたい「ラッダイト運動」について、現代にどんな影響があるのかも含めて解説しましょう。
ラッダイト運動とは?
よほどの歴史好きの人以外は「ラッダイト運動」がどんなものなのか、なかなか説明できないですよね。そこで、まずは「ラッダイト運動」とはどんな出来事だったのか解説しましょう。
ラッダイト運動とは1811年〜1818年に起きた「機械の打ち壊し運動」のこと。産業革命によって機械が登場し、その一方で労働者の環境が悪化することを恐れた人たちが起こしました。その運動の指導者が「ネッド・ラッド」という名前だったため、ラッダイト(ラダイト)運動という名前がついています。
ところが1790年頃に力織り機が導入されるようになりました。そうなるとあちこちに機械を導入したり、機械を多く導入した織物工場ができはじめました。そうなると今までよりも人手がいらなくなる、機織りができる人が今までよりも増えることで労働者そのものの価値が下がる、という理由で失業したり安い給料で働かさせるようになります。
さらにラッダイト運動は機械打ち壊しだけではなく、「こんな給料じゃ生活できない!」というストライキやまた、労働者が団結して作った組合と工場側で運動起きるようになりました。
安く雇いたい工場(企業)と給料を高くしてほしい労働者(サラリーマン)側という構図は昔から存在しているということなんだなぁ。
つまり、ラッダイト運動は「技術の進化による失業を恐れた一般市民が打ち壊しをした」「その後に労働運動で労働者の権利を主張した」という点では、大きな意味を持っていると言えるでしょう。
ラッダイト運動が起きた歴史的背景〜第一次産業革命について〜
そんなラッダイト運動が起きた産業革命とは、一体どんな時代だったのでしょうか。そこで、産業革命の流れについて大まかに振り返りましょう。
産業革命のメインとなったのは、イギリス北西部にあるマンチェスターという都市。この街はもともと綿紡績(めんぼうせき)の工場が集まっていました。そんな時、1780年ごろに大工、鉄職人、工場大工などのベテランの労働者が集まって「繊維を紡ぐ機械を作ろう」としたのが、産業革命の大きなきっかけです。
さらに1830年にはリバプール〜マンチェスターの間で蒸気機関車の鉄道が開業しました。これによりマンチェスターの周辺都市には機関車の製造や車庫ができることで、機関車の整備の工業と同時に工場で使うような機械を製造できるようになります。こうしてマンチェスターには綿紡績と工場の機械工業の企業が集まり、日々機械の研究をすることで技術が発展しイギリス一の工業都市となりました。
そうなると今の日本でも同じように、人は栄えている街に仕事を探しに行こうとしますよね。当時のイギリスでも農業ができなくなった労働者やアイルランドからの移民がたくさん集まるようになり、労働者が増えていきました。その発展がやがてマンチェスターだけでなく、イギリス全体に広がっていったのです。
産業革命によって生まれたのは、機械だけじゃない
ちなみに産業革命によって生まれたものの一つに、「義務教育」があります。というのも産業革命が起きてからしばらくは、子供たちが安い給料で働かされていました。しかも長時間働かされるだけでなく子供たちは力が弱いので、工場主からの暴力もあるなどかなり悪い環境にいることも少なくなかったとのこと。そこでイギリス政府が1833年に「工場法」を制定して子供たちの長時間労働を制限しました。
また当時のイギリスでは、地域の教会などで文字の読み書きを教えていたため、個人個人で教育のレベルにばらつきがありました。工場で人を雇うときも、文字の読み書きなど勉強ができるような人の方が仕事を効率的に進めることができることを考え、1870年も「教育法」が制定され、これが義務教育の基礎となります。
この「教育のレベルを上げる」ことがどういう意味があるのか、は後ほどまたお伝えします。
「ホリエモン」が発言した「ネオ・ラッダイト運動」とは
そんなラッダイト運動、実は少し前にも「ネオ・ラッダイト運動」として話題になりました。
ネオ・ラッダイト運動とはITの技術が進歩するにつれて失業する恐れがあるので、その進歩に逆行しようとする考えのことです。この考え方がラッダイト運動の再来という意味を込めて「ネオ・ラッダイト運動」と名付けられました。
「新技術は、確かに人々に転職や仕事のやり方を変えることを強いるが、新技術が仕事の総量を減らすことはない。」
引用:ロバート・ライシュ「勝者の代償」
ざっくりまとめると、「ITなどの新しい技術は仕事のやり方を変えるけれども、仕事そのものが減るわけではない」ということです。これを身近な例を挙げましょう。
最近、多くの企業が「リモートワーク」を導入するようになりましたよね。それによってメールでのやりとりが、より反応が早くなるチャットツールを導入するようになりました。実際、リモートワークの増加によってチャットツールの「Slack」を使う人が世界で250万人も増加したとのこと。
この他にもオフィスで資料・原稿を作成していたものがクラウドで共有できるようになったおかげで家でも作成できるようになったり、会議もSkypeやZoomなど、オンラインツールを使うことで離れた場所でも会議ができるようになりました。
もちろん、接客など直接対面でしかできない仕事もあります。しかし、多くの人が上記のようなツールがとりいれられたからといって、仕事が無くなっていないでしょう。その代わりにチャットツールを使うことによって文章で相手に説明する場面が多くなったり、オンライン会議ではっきり話す必要性が出てきたり・・・など、今までオフィスで顔を合わせて仕事をしていた時と仕事のやり方が変わりました。
確かに基本的にリモートワークで仕事をやることが多いけれども、ちょっとしたお願いごととか雑談がやりにくくなった部分もある反面、オフィスよりも集中できるようになって効率よくなったかもしれないなあ。
そんなネオ・ラッダイト運動は堀江貴文さんの「雇用大崩壊」でも取り上げられ、現代でも話題になっています。堀江さんもロバート・ライシュと同じように「技術の進化に反対して阻止しようとする考え方は残念だ」と批判しています。
ラッダイト運動とAI(人工知能)の関連性
そんなラッダイト運動がなぜ現代で話題になっているのかというと、今「AI(人工知能)が私たちの仕事を奪うのではないか?」と不安が広がっているためです。
AI(人工知能)によってなくなる仕事については以下の記事で取り上げていますが
ざっくりまとめると、AI(人工知能)による業務自動化や自動運転が実用化されると、事務作業や運転手などの職業がなくなると予想されています。そうなると、今その職種についている人たちは失業したり、最悪の場合はラッダイト運動のように、「AI(人工知能)によって仕事を奪われたくない!」という暴動が起きる可能性があるかもしれません。
つまり、ラッダイト運動で「機械が私たちの仕事を奪って、失業するのではないか?」という不安と同じように、今「AI(人工知能)が仕事を奪って失業するのではないか?」という不安が広がっているのです。
なんだか恐ろしいですよね。まさに歴史は繰り返されるってことか・・・。
でも、少し立ち止まりましょう。AI(人工知能)は本当に仕事を奪うのかどうか、次で一緒に考えてみます。
AI(人工知能)は本当に私たちの仕事を奪うのか?
結論から言うと、「AI(人工知能)によって仕事そのものがなくなるとは限らない」と考えられます。では、AI(人工知能)が仕事にもたらす変化はどのようなものでしょうか。
さらにラッダイト運動が起きた時代と違うのは、「仕事の幅が広がっている」「努力次第で仕事を得ることができる可能性があること」です。ラッダイト運動の時代は、一つの工場にずっと勤めることが普通とされてきました。しかも仕事が合わない、周りの人とうまく行かなくても別の工場に移る、などはありません。もちろん仕事の種類も「機織り」など特定の作業に限定されていました。
しかし今では、努力すれば仕事を得られるようになっている時代になっています。最近では一つの企業に長く働きつづけるだけでなく、転職する人、会社員の傍らで副業をやる人、フリーランスとして仕事を得る人もいて、仕事の形も多種多様になりました。単純作業だけでなくマーケティング、企画、エンジニア、人事、などなど。つまり一つの企業、一つの仕事にとらわれず仕事を得るようになりました。
このためAI(人工知能)によって仕事の形が変わっても、AI(人工知能)によってなくなった仕事の代わりに新しく仕事が生まれると考えられています。例えばAI(人工知能)関連の仕事であるAIエンジニアやAIを作るディレクターなどの職種が新しく誕生するでしょう。
※詳しくはこちらの記事でも取り上げています
今後、私たちの生活にさらにAI(人工知能)が広まるはず。そうなったときにラッダイト運動のようにならないためには、私たち自身も時代の変化に対応する必要があるに違いありません。
ラッダイト運動が起きた第一次産業革命から学べることとは
では、私たちは現代のラッダイト運動を起こさないように生き延びられるようにするにはどうすれば良いのでしょうか。その方法を、いくつかお伝えしましょう。
常に世の中に対してアンテナをはること
ラッダイト運動とは違う点としては、時代の流れがどんどん変わっていることです。例えば変化が起きたことを他の人に知らせる手段として、新聞がありますよね。新聞は産業革命によって都市に人が増えるなどの影響により一般の人たちにも多く読まれるようになりましたが、それまでは新聞は聖職者や工場主などの限られた人たちしか読まれていませんでした。そうなると、一般の人たちが隣の地域のニュースを知る機会が限られるでしょう。
しかし現代ではテレビなどの情報を伝えるメディアが数多く登場しています。特にインターネットの登場により情報が広まる速度がぐっと早くなりました。私たちも、ニュース速報やインターネットですぐに世の中の流れを知ることができますよね。
つまり何が世の中で必要とされているのか、これからどんな物が流行るのかはまだまだその情報の中に埋まっているのかもしれません。普段からニュースを見て考える習慣をつけると、「今こんなことが必要とされている」ことがわかるでしょう。
もちろんAI(人工知能)自身も今、関連した事業がたくさん生まれつつあります。また、ビジネスにAI(人工知能)を現代でもAI(人工知能)を活用したビジネスモデルがたくさん誕生しているとのこと
※その例としてはこちら
このように、常に今どんな物がブームなのかだったり、これからの時代はどんな風になるのか、などのアンテナをはりましょう。きっとビジネスや仕事のチャンスがそこに転がっているに違いありません。
新しい仕事を得たいなら、常に勉強してスキルアップすること
ラッダイト運動の時は地域ごとによって教育のやり方がバラバラでした。文字書きのレベルも人によってまちまちなので、勉強しようにもなかなか苦労することも多かったでしょう。しかも勉強するための本は今のように簡単に手に入れることもできず、職業もなかなか変えることもできないので、環境を変えるのがかなり難しい状況でした。
しかし、今は勉強のための教材を手に入れるのが簡単になっていますよね。例えば産業革命のときには義務教育がなく、教育を受けるチャンスもかなり限られていました。しかし今は義務教育はもちろん、さらに勉強したい場合は予備校に入る、書籍を手に入れる、動画の授業を受けるなどで、さまざまな教育のチャンスがあります。実際に、塾にも通わずひたすら参考書の問題を解いて東京大学に合格した、という人もいました。
もちろん、この現象は子供だけでなく大人も同様です。上記のようにスキルアップを目指して勉強するための材料はそろっています。
私もWebマーケティングの仕事は未経験でしたが、本を読んだりセミナーに足を運んだりしてあれこれ勉強しています・・・!
スキルを身につけて仕事で成果を出せば、転職で別の企業に行くことができたりフリーランスとして別の仕事を得ることもできるようになりますよね。また、AI(人工知能)によって新しく生まれる仕事を得るためにも、知識を得ていく必要があるでしょう。でも、きちんと努力すれば収入アップも夢ではありません。
このため、チャンスをつかみたいなら常に勉強してスキルアップしましょう。
ということで、今知っておきたい「ラッダイト運動」について現代への影響も含めて解説しました。それでは今回の内容について改めておさらいしましょう。
- ラッダイト運動=文明の発展に逆らった機械打ち壊し運動のこと
- ラッダイト運動が起きた理由は、労働者が産業革命の機械の登場によって失業したり仕事の環境が悪くなることを恐れたため
- 実は現代でも、デジタル技術が仕事を奪うのではないかという「ネオ・ラッダイト運動」なる考えがある
- そんな中でAI(人工知能)が仕事を奪うのではないか、という不安もある
- でも、現代とラッダイト運動の時代は違うのと、その中で「アンテナをはる」「スキルアップのための勉強をする」をしていけば、時代の流れにものれるかもしれない
現代ではAI(人工知能)が登場し、私たち人間の知能を超えるかもしれないとも言われています。しかし、むやみにAI(人工知能)のことを怖がっていては、何もできません。大事なのは私たちもAI(人工知能)をどうやって活用するのか、を考えることです。
つまりラッダイト運動のように文明に逆らわず、文明をうまく活用するのがこれからの時代の賢い生き方になるに違いありません。
【お知らせ】
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