医療業界はどう変わる?AI×ヘルスケア活用事例【2020年版】 | AIZINE(エーアイジン)
ライフスタイル

医療業界はどう変わる?AI×ヘルスケア活用事例【2020年版】

ヘルステックのイメージ

体調が悪くてクリニックに行こうか迷った時「今行ったら、逆に流行っている病気が移るかも」と心配になること、ありますよね。それに混雑した待合室で長時間待たされることを思ったら「家で寝ていたほうがまし」と、あきらめてしまいがち。

こんなお悩み、もうすぐ「過去のこと」になるかもしれません。今、AI(人工知能)のヘルスケア分野は着々と研究が進んでいて、医療業界は大きく変わろうとしているからです。

その変化は、病院での診断や検査、事務手続き、また薬の開発やウェアラブル端末でのデータ取得など、多岐に渡っています。

最先端の技術を知るのは、まるで「未来の世界」をのぞき見るような楽しさがありますよね。今回は「AI×ヘルスケア」の最新の事例を5つ取り上げてご紹介します。

医療業界はどんなふうに変わろうとしているのでしょうか? ではさっそく見ていきましょう。

AI×ヘルスケアとは

ヘルステックのイメージ

AI(人工知能)とヘルスケアはもともと相性が良く、かねてから研究が進められてきたのですが、最近はいよいよ実用段階にさしかかっています。

医療分野において、診断は長年「医者の経験と勘」が頼りでした。でも人間の知識の量には限界があります。そもそも、医学関係の雑誌や論文はあまりに数が多くて、人間がそれら全てに目を通すことは不可能なのです。

その点AI(人工知能)は、膨大な量のデータから瞬時に回答を導き出すのが大得意。それにAI(人工知能)は、疲れたり間違ったりすることなく24時間戦うことができます。(栄養ドリンクなしも!)

また、アメリカMcKinseyは、AI(人工知能)によって医療・製薬業界で効率化を進めると、年間最大1,000億ドルも節約できると試算しています。

1,000億ドル・・・ちょっと凡人には見当がつかない数字ですが、AI(人工知能)とヘルスケアが「相性が良い」とされるのは納得できますよね。では最新の「AI×ヘルスケア」の活用事例にはどのようなものがあるのでしょうか。

今回は5つご紹介しますので順にみていきましょう。

AI×ヘルスケアの活用事例その1:乳がん診断

AI×ヘルスケアの活用事例その1:乳がん診断

Googleのヘルスケア部門Google Healthは2020年1月に、「開発したAI(人工知能)システムが、放射線科医師6人全員より正確に乳がんを特定することができた」と発表しました。Googleはこのシステムの実用化に向けて、今後開発を進めていくそうです。

がんは今、日本人の2人に1人かかる病気で、3人に1人はがんが原因で死亡しています。そして乳がんは、日本人女性に最も多いがん。乳がんで死亡する率も年々増加しています。

でも、乳がんの検査に使うマンモグラフィは画像の読み取りが難しく、専門家でも誤った診断をする可能性が高いとか。「え?そうなの?」と急に不安になってきます。

マンモグラフィは女性にとって、精神的にも肉体的にもとっても辛い検査。できれば受けたくない検査なのに、診断に見逃しの可能性が高いなんて。命にも関わってくる問題です。

このAI(人工知能)システムの、1日も早い実用化を期待したいですよね。一般化すれば多くの命を救うことができるはずですから。

AI×ヘルスケアの活用事例その2:オンライン診断

AI×ヘルスケアの活用事例その2:オンライン診断

2020年は新型コロナウイルスの流行によって世界中が大混乱に陥りました。そんな中、厚生労働省は4月に初診患者のオンライン診断を解禁。それに伴って「一般社団法人日本医療受診支援研究機構」の有志は、「AI受診相談ユビー新型コロナウイルス版」の無償提供を開始しました。
この「AI受診相談ユビー新型コロナウイルス版」は、WEBでAI(人工知能)からの質問(約20問)に回答すると、参考となる病名の代表例をいくつかと、それに応じた相談先を案内してくれます。

AI受診相談ユビー

もし新型コロナウイルスの症状に該当した場合は、かかりつけ医に(電話などで)相談を促し、公的な電話相談窓口へ誘導。かかりつけ医がオンラインで問診(場合により診察)すれば、院内感染のリスクや業務負担が大きく軽減されます。

このシステムが全国で導入されれば、「医療崩壊」の防止に役立つでしょう。一刻も早く普及してほしいですよね。

AI×ヘルスケアの活用事例その3:創薬研究

AI×ヘルスケアの活用事例その3:創薬研究

株式会社FRONTEOは2020年5月、AIシステム「Cascade Eye」を利用した新型コロナウイルスの研究で、既存薬の転用候補が、約450種も見つかったと発表しました。

通常、臨床試験を経て承認される確率は約1/30000だといわれているので、「Cascade Eye」によって大きく効率化されたことになります。

人間が判断するとどうしても思い込みに影響されたりバイアスが働いたりするもの。しかしAI(人工知能)なら人間が見逃しがちな点も網羅して応用することが可能です。

今後適正な治験を行った後、新型コロナウイルスの治療薬として活用が期待できるでしょう。

AI×ヘルスケアの活用事例その4:ウェアラブル端末

AI×ヘルスケアの活用事例その4:ウェアラブル端末

AI(人工知能)とヘルスケアのすばらしい活用事例のひとつとしてあげられるのが、ウェアラブル端末の普及。

最新のウェアラブル端末は、心拍数・歩数はもちろん、消費カロリーや睡眠の質、血圧まで測定できるものもあります。そしてただ測定するだけではなく、その結果からAI(人工知能)が「運動・睡眠・休憩」などヘルスケアのアドバイスまでしてくれるのです。

例えば、座っている時間が長いと「そろそろ立ち上がりましょう」、運動が足りないと「(今日運動するのに)まだ間に合いますよ」、ストレスで呼吸が浅くなっていると「深呼吸しましょう」など。もう至れり尽くせりですよね。

そして全てのデータはひとめでわかりやすく可視化されるので、健康に対するモチベーション維持にも最適です。

ウェアラブル端末の中には血中酸素濃度を測定できるものもあり、睡眠時無呼吸症候群が心配な方は自宅でチェックすることも可能。

今まで病院で検査するか専用の計測器具がないとわからなかったことが、身に着けておくだけで常時計測・分析できるようになったのですから大きな進化ですよね。

ウェアラブル端末は、AI(人工知能)によるヘルスケアの技術で健康的な生活が実現する良い例だといえるでしょう。

AI×ヘルスケアの活用事例その5:介護ロボット

AI×ヘルスケアの活用事例その5:介護ロボット

2020年2月に開催された「東京ケアウィーク2020」では、最新の介護用品や設備が展示されました。

その中で特に注目を集めたのがアメリカのAeolus Robotics社(アイオロス・ロボティクス社)が開発した「Aeolus Robotics(アイオロス・ロボット)」。AI(人工知能)を搭載した介護支援ロボットで、日本でも導入が進んでいます。

Aeolus Robotics(アイオロス・ロボット)ができることは、

  • カゴに入った荷物を持って、エレベータを使って違う階の目的地まで運搬。
  • センサーで利用者の転倒を検知し、スタッフのスマホに通知。
  • スピーカーを内蔵しており、スマホで会話が可能。
  • ナースステーションで利用者の状況を確認、必要に応じて見回りを行う。

このような動作が可能で、夜間スタッフの業務負担の軽減に貢献できます。また2020年末には、

  • AI(人工知能)による画像認識で、服薬時、介助者の薬の取り違え防止
  • 認知症の方の徘徊を防止

これらの仕事をマルチタスクで行うことをめざしています。こんなロボットが病院や施設で活躍してくれれば、病院や施設のスタッフは大助かりですよね。利用者のアイドル的存在になるかもしれません。

以上、「AI×ヘルスケア」の活用事例を5つご紹介しました。最後に今後の見通しについてお話しましょう。

AI×ヘルスケアの今後とは

未来のイメージ

今後、「AI×ヘルスケア」の市場規模はどうなっていくのでしょうか。

アメリカの調査会社Global Market Insightsは「世界全体で2018年度は13億ドル程度だったが、2025年度には130億ドル以上になる」と予測しています。10倍以上に拡大・・・想像をはるかに超えていますよね。

AI(人工知能)のヘルスケア分野の今後は、アメリカの巨大ITグループ、GAFA(Google・Amazon・Facebook・Apple)の動向が鍵を握っているといえるでしょう。

この4大グループの中でも特にGoogleはヘルスケアに大きな意欲を見せています。フィットネス製品のFitbit社(約2,000億円超)の買収、AI(人工知能)を活用した創薬事業への投資、160万人の患者の医療データをもとにAI(人工知能)によるヘルスケアサービスの開発など。
AppleはiPhoneやApple Watchを基盤にヘルスケア部門を拡大していこうとしています。モルガン・スタンレー証券はAppleヘルスケア部門の売り上げが2027年には3,130億ドルになると予測。Appleの2019年度総売り上げが2,602億ドルですから、「AppleといえばiPhone」だったのが今後は「Appleといえばヘルスケア」に変わっていくのかもしれません。
Facebookはヘルスケア関連には出遅れていましたが、2019年10月に予防医療サービスPreventive Health
を開始。Facebookに登録されているデータをもとに提携の医療機関で受診できる仕組みで、今後拡充していくと予想できます。
Amazonもヘルスケアへの投資に意欲的。バーチャルクリニックサービス「Amazon Care」を自社社員向けに試験運用を開始しました。いずれ一般消費者向けに移行していくとみられています。

このように、GAFAはそれぞれ自前のプラットフォームを持っており、そのビッグデータを活用して今後ヘルスケア部門に投資していくようです。今後、「AI×ヘルスケア」は、間違いなく急成長していくでしょう。

日本がGAFAに対抗するのは無理だとしても、独自の視点で技術を応用するのは得意分野ですから、この世界の潮流にのって医療業界の大改革を期待したいですよね。

 

ヘルステックのイメージ

今回は、2020年度の「AI×ヘルスケア」活用事例を5つと、今後の見通しについてお話しました。

ヘルスケアと一言でいっても、「予防」まで含めるとその範囲はかなり広くなります。ですので今回は「医療」関係を中心にご紹介しましたが、それでもさまざまな分野がありました。

巨大ITグループ4社「GAFA」の「AI×ヘルスケア」への取り組みは、その本気度に圧倒されましたよね。10年後、20年後はどのようになっているのか、想像するとワクワクしてきます。

今後AI(人工知能)が診断をするようになれば、人気クリニックへの集中も少しは緩和されそうです。ドクターの評価基準は「診断技術」より「人間性」にシフトしていくでしょう。

とりあえず、スマホを使ったクリニックの予約や問診が当たり前になれば、憂鬱な「待ち時間問題」から解放されそう。でも、高齢者にとってクリニックの待合室は大切な社交場。それがなくなってしまうのは少々お気の毒な気もします。

これからは、元気な方にはジムで汗を流していただき、具合の悪い方は「自宅のベッド上でオンライン井戸端会議」。コミュニケーションの形も、時代とともに変化していくのでしょう。

病める時も健やかなる時も、老いも若きもすべての人が、最先端の技術の恩恵をあずかることができる社会になると良いですよね。

トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました