昨今、FinTech(フィンテック)という言葉をよく耳にするようになりました。メディアではビットコインなどの仮想通貨についてのニュースが日々報じられていますよね。FinTechとは仮想通貨のことかと思ってしまいますが、実際そうでしょうか。一方でAIという言葉もよく聞きます。現在さまざまな分野でAIが活用されて私たちの生活に役立っているなと感じますよね。
そうなるとFinTechとAIとが結びついて、何か新しいことや私たちの日常の生活やお仕事が便利になるようなことができるようになるのではと期待してしまうのではないでしょうか。もちろん金融業界においては、FinTechとAIを活用して業務の効率化や精度の向上に役立てるためにいろいろな挑戦が行われています。
ここでは、FinTechとはどういうものなのかFinTechとAIがどのように役に立つのかをお伝えいたしましょう。
FinTechの言葉の意味とFinTechの例
まずはFinTechの言葉の由来の話から始めましょう。金融を意味する「ファイナンス(Finance)」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。また技術を意味する「テクノロジー(Technology)」はあらためて説明が不要なほどなじみ深い言葉ですよね。FinTechはこの2つを組み合わせた造語なのです。
FinTechと呼べるものの範囲はとても広く、金融にかかわるものに、技術、主にコンピュータ技術ですが、何らかの技術が使われていれば実は何でもFinTechと呼ぶことができます。みなさんに身近な例では、電車などの交通機関を利用する時やお店で買い物する際に利用している電子マネーなどが思いつきますよね。
しかし、ここ最近のトレンドとしてのFinTechの代表選手はビットコインなどの仮想通貨。仮想通貨はインターネットというネットワークと、ちょっと専門用語になりますが、分散台帳技術(ブロックチェーン)という技術をと組み合わせて実現される「通貨」です。
その他では、インターネット上で資金を調達する手段として定着してきたクラウドファインディングも、事業を始めたい人とそれを支援したい人とを結びつけるFinTechと呼ぶことができるでしょう。
AIとは何か
次にAIとは何かを説明します。AIとは、コンピュータが人間に代わって物事を識別したり判断したりする知能を実現する技術ということはみなさんもご存知ですよね。その知能は人間と同様に学習することによって獲得することができます。人間の学習と大きく異なるのはコンピュータは途方もなく膨大なデータを何の苦もなくひたすら学習することができるという点ではないでしょうか。
コンピュータの学習方法にはいろいろな方法がありますが、以前から行われていた方法の一つが、学習すべきポイントを人間があらかじめ設定してそのポイントについてコンピュータが大量のデータから学ぶという方法です。
最近脚光を浴びているディープラーニングという方法は、学習すべきポイントについて人間は何も与えません。では、どうやって学ぶのでしょうか?それは人間の知覚神経に似た仕組みをコンピュータ上に作り、どんなポイントに注目するかはコンピュータ自身が学習する、というとまるで人間のようですが、これは従来の学習方法と比べてさらに大量のデータを与えることで実現できるのです。
ディープラーニングは、人間が思いもつかないようなことを見つけ出す可能性を秘めているといえますよね。まだまだ試行錯誤に頼る面もありますが今後の発展が非常に注目されています。
FinTechとAIはどう役立つか
AIは、膨大なデータの中から物事同士の関連性を見つけたり、ほんのわずかな変化からリスクの兆候を発見したり、その逆にチャンスのきっかけを発見できるといえるでしょう。さらに、それらのリスクとチャンスのバランスを最適に調整することに役立つことが期待できるのです。
FinTechとAIが実際に活用されている事例としてはクレジットカードでの不正利用の検知や企業において不正な取引を発見するといった事例が挙げられますよね。
クレジットカードでの不正利用の検知は、従来の方法ではカードを利用した場所や時間、および金額について、妥当なパターンに当てはまっているのかをチェックすることにより判定していました。この方法でも不正をきちんと検知できていたのですが、問題のない利用も大量に検知するので無駄が大きかったです。
しかし、この不正利用の検知にディープラーニングを活用することにより問題のない利用の検知を大幅に減らせたということが確かめられました。このような効率化によって、私たちがもっと安心してクレジットカードが使えるようになります。
また企業での不正な取引の発見の事例としては、取引伝票を管理するシステムにAIを組み込むといったものです。このAIは大量の取引伝票データを学習することで「正しい取引」を知り、膨大な取引データの中から、その「正しい取引」から逸脱する取引を漏れなく見つけ出すことができます。
しかし、やはりFinTechとAIといえば株式などの投資の判断や積極的に利益を追求するヘッジファンドなどで最適なポートフォリオを形成するために役立つ情報を得ることに貢献してほしいと思いますよね。当然そのような活用も研究されていて今後普及すると期待できるでしょう。
FinTechとAIとの連携であればどちらもコンピュータが行っていることなので当然のことですが、私たちが判断するのに役立つ情報の提供だけでなくその判断のもとで最適なタイミングを逃さずに自動的に売買を実行することもできるようになるでしょう。
また将来的に利用するデータは株式取引データだけにとどまらず、新商品の発表や企業買収などの企業活動の情報や当局から承認を得たといった情報なども取り込んで、より精度の高いアドバイスを提供できるようになるかもしれません。
FinTechとAIを活用すると人間が持つノウハウや知恵知見といったものだけでは発見・認識することのできない特徴や、ものごと同士の深いつながりを見つけて、人間の経験やカンなどに頼らないより客観性の高い根拠にもとづいて判断することができそうですよね。
FinTechとAIが今後もっと発展すると小売り店舗で時々刻々と発生する売り上げデータやtwitterなどのSNSの投稿記事といった社会を反映するデータ、天候や気温などといった環境データなど一見私たちには直接どのように結びつくのか分からないようなデータについても取り込んで、より高度で最適な判断を行えるでしょう。
それは一見、私たちには見えないところで物事が判断されるように思えてとても怖いという感情を持つかもしれません。確かに、自分自身の理解を超える結論を目の当たりにする可能性があります。しかしそれは自分には気づけなかった、もっというと人間では気づけなかったリスクについて気づかせてくれたと考えることもできませんか。
一方で、FinTechとAIのおかげで新たなチャンスをつかむこともできるかもしれませんよね。AIに支配されているのではなく、良き相棒・助言者としてつきあっていくことが大切なのではないでしょうか。
そのためには自分や他人や世の中が普段どんなことに反応を示し、どんなことに行動を左右されているのかについて、私たちはより一層関心を持ち、日頃のメディアの情報や日々の会話の内容に注意を払っていく必要があります。そのような営みが人間とFinTechとAIを互いに進化させていけるといいですよね
参照元
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