「顔認証システム」という言葉を聞くと、iPhoneのロック解除や課金の時に、パスコ―ド認証の代わりに利用するシーンを思い浮かべますよね。ユニバーサルスタジオジャパンの年間スタジオ・パスをお持ちの方でしたら、入場時のゲートの認証用モニターで本人確認が行われていることを思い出すかもしれません。いわゆる、”顔パス”入場です。
また海外に行かれる方でしたら、成田空港の入国審査の際にモニターの前に立つだけでチェックが行われすぐに入国できた経験があるかもしれません。従来は入国の審査員が、パスポートと実際の出国者とを突合していましたが、パスポートの写真と本人の顔画像とを比較し、自動的に審査します。
このように、生活の身近な場所で、既に活用されている「顔認証」。でも、そもそも顔認証はどんなシステムなのか、実はわかっていないという人もいるでしょう。そこで今回は、顔認証はどの様なシステムで、さらにに今後どんな活用をされるのかを東京オリンピックでの予定を中心にお伝えします。
そもそも顔認証とは
まず、顔認証の意味を確認しましょう。顔認証とは生体認証の一種で、顔によって個人を「認識」し、「認証」を行う仕組みのことです。「認識」では、カメラに映った個人の顔を、以下のような流れで、特定の方であると決定するプロセスが必要になります。
- 画像には様々なものが映っていますので、人間以外の動植物やモノが写っている写真のなかから、どれが人間の顔かを検出
- 画像の中から顔領域を決定し、特徴点を検出します
- 目・鼻・口など特徴となる位置を求め、顔領域の位置と大きさを統計的に算出
なお「認証」とは、予め登録されている顔データ数字と認識された顔の数字データとが合致するデータを見つけて、照合することによって、本人であることを確定させることです。
顔認証は「生体認証」の一部ですが、指紋認証や静脈認証など他の生体認証と違い、装置などに接触することなく認証を行うことができるため、利用者への心理的負担が比較的少ないとされ、多少離れていても認証が可能であるという長所があります。
先にご紹介した空港の入国手続きでも以前は指紋認証により、犯罪歴などの確認が行われていましたが、指紋認証をやり直しをさせられた方もいるかもしれません。また、指紋認証や静脈認証の機械に指を置いて、検査されているという意識がありますので、心理的な負担もあります。それに対して顔認証なら、カメラの前に立つだけなので、気が楽ですよね。
ただし、顔認証には課題があります。1つは顔認証の精度で、人と撮影するカメラの位置や撮影部または、変装や化粧によって、精度を高く保つことが難しいことがあります。
そしてもう1つは顔認証のデータを保護する点です。顔認証システムがとらえている顔データは個人情報となります。個人情報保護の観点で、利用者の理解が必要ですし、収集したデータの漏洩防止にも努めなければなりません。
そんな顔認証は、東京オリンピックでセキュリティとして使われようとしています。これはどのような背景なのか、次で見ていきましょう。
オリンピックでのセキュリティ課題
もちろんオリンピックのように国際的なイベントでは、テロや不審者対策の為のセキュリティが重要です。しかし東京オリンピックでは、過去大会と比べてより高度な警備が求められるとのこと。
このような課題を解消するために、東京オリンピックではNECの顔認証システムを導入することになりました。次では、そんなNECの顔認証のシステムについて説明しましょう。
NECの顔認証システム
こうした最先端の技術を活用することによって顔認証の精度がますます高くなり、オリンピックのような世界的なイベントでのセキュリティ対応でも使われるようになりました。
オリンピックではどのように利用するのか
オリンピックでの顔認証は、“歩いたまま立ち止まらずに顔認証できる” が最大のポイント。この顔認証はお客さんだけではなく、アスリートや運営スタッフ、ボランティア、報道関係者など約30万人の大会関係者の本人確認にも利用する予定です。
やり方としては、歩きながらIDカードをゲートに設置してある装置にタッチするだけです。この操作でIDカードによる認証に加えて顔による認証も完了するため、人が確認する場合に比べて、圧倒的に時間短縮になるでしょう。
オリンピック以外での顔認証システムの利用
オリンピックでの顔認証システムへの期待は非常に大きいことがわかりましたが、それ以外での顔認証システムの活用はどんなことが考えられるのか、見てみましょう。
ビルの入退に顔認証!
個人を認識して認証することが正確にできる様になれば、皆さんのオフィスビスに入館する際のIDパスを顔認証によって簡略化することができますよね。実際に三井不動産の本社ビル「日本橋室町三井タワー」では顔認証での入退を実現しました。
顔認証だけでキャッシュレス決済
更に、顔認証によって、決済をする取り組みもあります。同じく三井不動産の従業員用カフェテリア「囲(かこい)」ではクレジットカード情報と顔認証データを予め連携させておくことで、顔認証だけで決済が間接的に実現できるのです。
もちろん、顔認証だけで決済まで済ませてしまうのは不安ですよね。しかし、買い物で使うカード情報はクレジットカード会社が管理し、顔情報データはNECの顔認証決済サービスで管理するため、店舗での個人情報とカード情報の取扱いは無く、セキュリティ面での対策も万全です。
顔認証での個人を認証する仕組みは、これまで他の手段による認識・認証を置き換えることにより、本人認証の短縮化だけではなくそのデータを活用した更なる付加価値を提供する取組みができるようになるでしょう。その活用される方向性が、今後の注目になるかもしれません。
さて今回は、顔認証システムについての仕組みと東京オリンピックでの活用予定についてお伝えしました。
東京オリンピックは、会場が首都圏にあり、また会場が分散されている為、入場時の警備が重要である一方、開催時期が夏を予定していることもありセキュリティチェックに時間をかけられません。その様な理由から、人での警備だけでは対応が困難な為、顔認証システムの精度では、常に世界一を誇る、NECの顔認証のシステムが導入されることになりました。
NECの「NeoFace」という顔認証のシステムは、マスクをしていても、特定が可能で、99.5%以上の精度があり、また、認証も非常に速いスピードで行われる為、入場者がストレスに感じることもありません。日本のおもてなしのサービス精神が警備にも発揮できるに違いありません。これなら、セキュリティ面での課題を解消できますよね。
さまざまなメリットや利便性の高さが評価されている顔認証ですが、年々その信頼性と利便性が向上していき、顔認証システムが当たり前に使われる近い将来がくるかもしれません。東京オリンピックでのNECの顔認証システムが評価され、顔認証はもっと日常的なものになり、これまでになかったような新しい利用シーンも増えるでしょう。