普段使っている家電がいきなり動かなくなってしまった…ということがありますよね。例えば、洗濯機からブザーが鳴り、エラー表示が出たときは、洗濯機のドアがしっかり閉まっていない、洗濯物が多すぎて脱水できない等、異常があることを洗濯機が知らせてくれます。実はそれが「異常検知」です。
「異常検知」と検索すると、「機械学習」「手法」といったワードが出てきます。機械学習って何?異常検知ってどんなシステムなのか?という疑問がわくでしょう。「異常検知」はすでに私たちの生活に深く関わっています。この記事では生活やビジネスで使われている事例を取り上げながら解説するので、あなたの身近な異常検知に気がつくことができるかもしれません。
そこで今回は、異常検知の手法、異常検知に必要なセンサーの役割等、AI(人工知能)による異常検知についてお伝えします。
異常検知とはなにか
異常検知とは、AI(人工知能)に大量のデータを蓄積し、通常とは異なるパターンを検出させることです。
「異常検知」では、人間ではなく機械が異常を判断するので、機械が正常・異常を判断するためには、判断の元となるデータと、判断するためのアルゴリズム(手順)が必要になります。これを機械学習といい、異常検知は機械学習によって行われます。
機械学習には様々な種類がありますが、代表的なものとしては教師あり学習・教師なし学習があります。
- 教師あり学習:過去の蓄積されたデータからパターンを見出して新しいデータが異常現象に当てはまる確率を算出する
- 教師なし学習:過去のデータがない場合でも、すでにあるデータを参照しながら異常を検知する
つまり機械学習によって、未知のパターンや複雑なパターンであっても異常であるかどうかを検知できます。異常検知では、データの量によって教師あり学習・教師なし学習どちらかを選びます。
これはどういうことかというと、日本国内でカードを利用している、というデータが蓄積され、アメリカでカードを利用するという通常とは異なるデータを得ることによって異常を検知します。実際に楽天カードでは、この異常検知の判断を、AI(人工知能)が行っています。つまりAI(人工知能)によって、第三者によるクレジットカードの利用を未然に防げるでしょう。
その他に異常検知がどのようなときに役に立つか具体的な例を挙げると、文書中の誤り検出、不審な行動検出、機械の故障検知があります。
なぜAI(人工知能)で異常検知するのか
なぜ、AI(人工知能)で異常検知をするのかというと、それは人間が感知できない異常を見つけるためです。
異常検知には膨大なデータが必要です。人間には不可能でも、AI(人工知能)であれば何千、何万というデータを分析でき、データの量が多ければ多いほど正確な結果が出ます。
また、人間が経験によって作っていたアルゴリズム(問題を解決するための手順や計算方法)を、AI(人工知能)が導き出せるようになりました。AI(人工知能)が膨大なデータ量を入れてアルゴリズムを処理してデータを分析できます。つまり、AI(人工知能)は機械学習によって過去のデータを学習し、自動で未来予測を行うなど、高度な分析を簡単にできます。
AI(人工知能)による異常検知の例として、トンネル点検を取り上げましょう。トンネルは5年に一度、点検(目視、打音検査)することが国によって義務付けられています。この打音検査を、昔はトンネルの壁をトンカチで叩いて、音に異常がないか点検していました。
さらに経験豊富なベテラン作業員さんは、若手の作業員に自分の経験を伝えることはできますが、感覚的な点を完璧に伝えることは不可能です。しかし、AI(人工知能)であれば、同じ能力をもったAI(人工知能)が同じレベルの作業ができるようになります。
異常検知の方法
さて、異常検知には、外れ値検知・異常部位検出・変化点検知という3つの方法があります。
外れ値検知
データを記録する上で生じた、全体から大きく外れた値を検出します。普段使用しているクレジットカードが、いつもとは違う国で利用があった、というカードの第三者による不正利用はこれに当たり、ほかにも為替レート等が、普段では考えられない動きをしている場合を把握すしたり、機械の異音を検出するのも該当します。
異常部位検出
これまでとは違う動きが発生したときに、異常がある部分はどこか、いつから異常が発生したかを検出します。例えば、心電図を取っている際、普段とは違う心拍の乱れがあった場合、病気を検出できます。ほかにも工場設備の故障などを検知するのも、異常部位検出です。
変化点検知
予測したデータから構造や性質が急激に外れた際に、変化した時点を検出します。音の変化を検出するトンネルの点検は、これに当たります。ほかにも、サイトのアクセスが普段よりも急激に上昇した時期を把握するためにも使います。
異常検知でのセンサーの役割
異常検知には分析するためのデータが必要です。そのデータは集めるのが「センサー」。センサーによって測定された温度や音響などのデータが数値化されることにより、通常のデータと異なる「異常」を検知します。
例えば温度センサーは気温や体温を測る他に、火災警報器やガスコンロ、エアコンなどの家電で使われていますが、基本的には計測される物・人に感温部を接触させることで熱を移動させ、それぞれが熱平衡になる原理を利用しています。
このように、異常検知をするには、まずAI(人工知能)による異常検知の判断材料となるデータの収集や、装置のモニタリング等、センサーは必要不可欠です。温度のデータが欲しい場合は温度センサー、音のデータが欲しい場合は、音響センサーというように、検知したいデータによってセンサーも異なります。そのため、異常検知でセンサーを使用する場合は、どのデータが必要なのか決めましょう。
異常検知の課題とは
AI(人工知能)による異常検知がとても便利で、私たちの生活に大きな役割を果たしています。しかし、AI(人工知能)による異常検知の課題もあります。
- 優秀な人材の確保
- データを集めるのが難しい
1点目について、トンネル点検の例でいえば、精密なデータを集めるには経験豊富なベテラン作業員さんや、データを分析するデータサイエンティストが必要です。基となるデータは人間による、今まで培ってきた経験、また高度なデータの処理技術、データの統計処理技術などがそれぞれ必要になります。そうした知識を持った人材がいなければ、正確な異常検知はできません。
2点目は、異常検知をするためのデータを集めるのが難しい、ということです。例えば、装置がしょっちゅう故障しては大変なので、そもそも機械は故障をしないように作られています。それでも故障してしまう、というネガティブデータが少なければ、故障を予測する異常検知が難しくなるでしょう。
また、装置には使用している会社の機密情報(生産量等)が含まれていることがあり、企業側としては故障をしたデータを外部に公表したがらない傾向があります。最近では実験ロボットを活用してデータを蓄積し、共有するという対策が取るところもあるとのこと。
異常検知の今後
AI(人工知能)による異常検知は、今後どのように発展していくのでしょうか。
異常検知を利用して、最近ではSNSの投稿もチェックするサービスを開発しています。近年、TwitterやFacebook、Instagram等のSNSを利用する人が増えたことで、SNSが原因の炎上が発生しています。実際にアルバイトによる不適切動画のSNSへの投稿が一時期話題になりましたよね。実はそれ以外にも内部情報の流出、商品ユーザーのクレームがSNSで拡散してしまう炎上等、個人だけではなく、企業のブランドイメージが失墜する可能性もあります。
そこで、SNS上の炎上を防げるモニタリングサービスというものが増えました。設定したキーワード(企業名や商品名等)に関する投稿を監視し、危険な内容を含む投稿かどうかの判定をAI(人工知能)が行います。SNS上の投稿をチェックできれば、炎上リスクのある投稿を早期に検知できるでしょう。
危険な投稿か判定するのは、AIによる自動判定だけではなく、まだ人間による判断も必要な段階です。しかし、データが蓄積されるにつれてAI(人工知能)のみで判断できる日も近いでしょう。
このように、異常検知は時代のニーズに合ったサービスを提供するに違いありません。
さて、今回はAI(人工知能)による異常検知の基礎についてお伝えしました。
AI(人工知能)による異常検知は
- 異常検知は機械学習によって行われる
- 異常検知を行う理由は、人間ではできない異常検知も膨大なデータを入れてアルゴリズムを処理できるAI(人工知能)であれば可能だから
- 異常検知には、外れ値検知・異常部位検出・変化点検知の3つの方法がある
- センサーによって測定されたデータによって異常が検知されるため、異常検知にセンサーは不可欠
- 異常検知には、優秀な人材の不足、データの収集が困難等の課題がある
- 異常検知は今後更に必要なものとなっていく
ということがわかりました。
AI(人工知能)による異常検知は、私たちの生活から遠い存在、難しいのものではないでしょう。クレジットカードの不正利用や文書中の誤り検出、心電図を使った病気の発見など私たちの生活に深くかかわっているものもたくさんあります。
AI(人工知能)による異常検知は、私たちの生活を便利にし、今後更に私たちの生活に深く関わっていくものになるに違いありません。