わずかなスペースさえあれば、どこからでも縦横無尽に好きな場所へ飛ばせるドローン。近年、さまざまな分野でドローンの活用方法が試されていますよね。その一つに「ドローン配送」があります。
ドローン配送は、ドローンに荷物を載せて顧客のもとへ届ける輸送手段のこと。ドローンは、トラックのように渋滞や信号待ちの心配がなく、ほぼ直線ルートでの輸送や人が届けるには時間と手間がかかる過疎地への配送が可能です。そのためドローン配送は、配送業務の効率化や買い物難民を救う手段のみならず、物流業界の深刻なドライバー不足や高齢化の打開策になる可能性があります。しかしその一方で、実用化には技術と法律の両面から解決すべき課題が山積みです。
この記事を読めば、ドローン配送の仕組みや課題が理解できるので、ドローン配送の実用化に何が必要かがはっきりわかるに違いありません。
そこで今回は、ドローン配送の基礎知識と活用事例、さらに課題やドローン配送の未来についてお伝えします。
ドローン配送とは
ドローン配送とは、ドローンの専用ボックス内に商品を載せて顧客に届ける輸送手段のことです。ドローンは空を飛ばせるので、ほぼ直線ルートをたどり、顧客の庭や玄関など指定した地点にピンポイントで商品を届けられます。通常のトラック配送なら考慮すべき配送ルートの選定が不要で、渋滞・信号待ちなどのリスクがまったくないので、とても便利ですよね。
なぜドローン配送が必要なのか
ドローン配送はさまざまな業界で必要とする声があがっています。その背景は、主に4つあります。一つずつ説明しましょう。
ドライバーの不足と高齢化のため
ドローン配送が必要とされる背景には、物流業界のドライバーの不足や高齢化の問題があります。現在、トラック運転手の平均年齢は50歳を超え、29歳以下は約10%、ベテランドライバーの引退は加速する一方です。また、近年のトラックドライバーの有効求人倍率は2.5~3で推移しており、全職業平均の約2倍となっています。つまり新たなドライバー希望者が圧倒的に少ない状況のため、ドローン配送のような運転手に頼らない配送手段が必要です。
過疎地への配送需要増加のため
人口減少による過疎地域の急速な拡大もドローン配送が望まれる大きな理由です。最低限のインフラしかない山間部や離島などの集落には、日用品の入手すらままならない地域が少なくありません。近くに買い物できる店がなく、配達してくれるスタッフや買い出しにいく若者が足りない、という危機的状況を救うためには、ドローン配送が理想です。
宅配の迅速化への対応のため
昨今のeコマース市場の拡大により、当日配送をはじめとする迅速対応へのニーズが高まっています。とくに都心エリアでは渋滞や事故も多く、限られた数のドライバーとトラックで対応するのは極めて困難ですよね。そこでドローン配送を使えば、ルートや道路状況に関係なく短時間で商品を届けられます。
救援物資の輸送のため
さらに、ドローン配送は近年増加している災害時の救援物資や急を要する血液や薬などの医療用品の輸送手段としても期待が寄せられています。災害は初期対応が重要ですよね。ドローン配送によって、がけ崩れで車道が寸断され孤立した人たちに当面の飲料水や食料を届ければ、その後の被害を最小限に抑えられるでしょう。
ドローン配送の仕組み
次に、ドローン配送がどのような仕組みなのか解説しましょう。ちなみにドローンには、自動運転による自律飛行とプロポというラジオコントローラーで人が操縦するタイプがあります。後者は全行程の目視が必要なため、ドローン配送に適していません。今回は、前者の自動運転タイプを前提に解説します。
- あらかじめGPSを利用してドローンの位置と目的地の座標を取得、位置情報とマップを組み合わせて飛行ルートをプログラミングしておく
- 専用アプリを使って顧客から注文を受けたら店舗や倉庫で専用の箱や梱包材で荷造りをしてドローンに載せる
- 気象状況に問題ないことを確認したら、1でインプットした位置情報やプログラムをもとにスマホやタブレットを操作してドローンを飛ばす
- ドローンが顧客の玄関先や庭などあらかじめプログラムで指定した位置に着陸し、荷物を離脱して顧客が受け取ったら、そのまま離陸してプログラムした飛行ルートで帰還する
ルートや高度、スピード、動きや角度など、細やかに設定することで、ドローンはそのプログラムに従って正確に飛行します。飛行中は、PCなどの画面で異常がないか監視しながらGPSを使うことで、風が吹いても軌道を維持できるようになります。また、荷物の受け取りも着陸だけではなく、ものによっては、空中でホバリングしたままロープを下して荷物を渡すこともあります。
ドローン配送の活用事例
それでは、ドローン配送がどの様に活用されているのか、具体的な事例を紹介しましょう。
ドローン配送で配達コスト6割削減
北欧アイスランドの首都レイキャビクでは、世界の先陣を切ってドローン配送が実用化されています。アイスランドは世界有数のフィヨルド地域で、海岸線が複雑に入り組んだ地形をしています。よって、道路もカーブが多く、車によるデリバリーや配送にはかなりの時間がかかり、コスト削減も課題でした。
そこで出前オンラインサービスのAHAが、ドローン配送を導入。従来なら数十分かかっていたデリバリーが、わずか数分で完了するようになり、配達コストが6割も削減できました。客はスマホで注文し、ドローンが到着すればボックスからお弁当を取り出すのみ。すでにオンライン決済が完了しているため、自動で飛び立つドローンを見送る以外、何もする必要はありません。これにより待ち時間が短縮し、時間に余裕がなければ諦めていた出前を楽しめるという大きなメリットが生まれました。
ドローン配送で3km先の山奥でもお弁当が届く
埼玉県秩父市に、東京電力とゼンリンの協力のもと「ドローンハイウェイ」が整備されました。ドローンハイウェイとは、全長3kmある東電の送電鉄塔の上空にあるドローン用の安全な「空の道」です。
送電鉄塔を地図会社大手のゼンリンが三次元データ化し、ドローンが飛べるように楽天がプログラミングすると、民家の主人が、スマホで離れた旅館にお弁当を注文。お弁当をドローンの専用ボックスに入れると、注文主の家に向かってドローンハイウェイを飛行、指定した敷地内に着陸して無事お弁当が届きました。
東電の鉄塔上はジオフェンスという一定のエリアに機体などが入ると自動検知する仕組みにより、ドローンが鉄塔や送電線に近づくのを防いでいます。つまりこの実験によって、気象条件さえ良ければ、3kmの距離でもドローン配送できることが証明されました。
楽天のドローンは専用アプリでスマホから注文しますが、荷物を載せて飛び立ち、着陸して受け渡すまでの工程がPCの画面上で可視化できるため、トラブルがあればすぐに分かるようになっています。
ドローン配送の課題とは
ドローン配送には、技術面と法律面で解決すべき課題があります。特に法律面では、ドローン配送を実現するためにクリアーしなければならない課題も非常に多いです。たとえば、航空法、小型無人機等飛行法、電波法、道路交通法、都市公園法、河川法等々。これ以外にもさまざまな法律や基準をクリアーしなければなりません。順を追って解説しましょう。
技術面の課題その1.「落下のリスクの軽減」
ドローンが空を飛ぶ以上、落下の可能性はゼロにはできません。鳥や悪意のある投石、射撃、さらに暴風、豪雨、豪雪にさらされると落下リスクは高まります。とくにドローンは、浸水するとモーターに支障をきたし、動かなくなる可能性が高いです。
これらのトラブルに耐えうる強靭なつくりと障害物回避技術の向上などの安全策を講じなければ、ドローン配送の実現は難しいでしょう。ただし、プロペラを4基持っているドローンの開発が進められるなど、より運送に適したドローンの登場も近いかもしれません。
技術面の課題その2.「充電技術の強化」
現在の技術では、ドローンは長くて30分ほどでバッテリーが切れてしまいます。(エンジンでは重すぎて飛行不可)よって、片道15分以下の距離でなければ帰還できません。これでは少し心もとないですよね。途中で何が起こるか分かりませんから、空中でのバッテリー交換技術の開発など、充電システムの強化が求められます。
法律面での課題その1.「航空法をクリアーする」
この法律では、無人航空機の150m以上の高さの飛行は禁止、日の出から日の入り時刻以外の時間帯の飛行は禁止、空港などの周辺の上空の空域での飛行は禁止、人口集中地区の上空は、自己所有地であっても(人がいるいないに関係なく)禁止、となっています。
150mという高さ制限があると、一部の高層施設の上空を飛ぶことは不可能ですよね。日の入り時刻は季節によって違いますし、冬なら17時台以降に配送できなくなるケースも出てきます。また空港の周辺こそドローン配送が効力を発揮しそうなエリアのため、これが難しいとなると実用性も乏しくなるでしょう。
法律面での課題その2.「小型無人機等飛行禁止法をクリアーする」
この法律では、国の重要施設等の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行は原則禁止されています。重要施設とは、具体的には、国会議事堂、主要官庁、皇居、最高裁判所、原子力発電所などを指します。
東京都内で考えると、23区内の中心エリアに重要施設が数多く存在するので、このままではドローン配送は実質不可能でしょう。ただし、事前に管理者等の同意を得たり、都道府県公安委員会への通報があれば、この限りではありません。調整の余地は十分ありますし、近いうちに条件付きで規制緩和される可能性は十分にあるでしょう。
法律面での課題その3.「電波法をクリアーする」
一般的なドローンは、無線免許のいらない2.4GHz帯を使用しています。しかし、これでは電波が届く範囲が狭く、輸送には不向きです。よって、安定して長距離送信できる伝送性能の高い5.7GHzの周波数帯が好ましいと言われています。ただしこの場合は、電波法により無線免許が必須で、基地局の開設も必要となるので、参入業者にとってはコストや技術面でハードルが高くなるでしょう。
以上のように、ドローン配送には数々の課題が残されています。その解決方法は、適切な法律改正と技術向上を組み合わせるしかありません。どちらが欠けてもドローン配送の実現は不可能でしょう。
ドローン配送の未来
数多くの課題が存在しますが、ドローン配送は、多くの深刻な問題を打開するとても重要な輸送システムです。もし実用化されれば、トラックを減らして物流倉庫や空港、港などを拠点に各地へ荷物を輸送できます。さらに、とくに人手が必要とされる、個人宅やオフィスへのラストワンマイルの配送にも大いに役立つに違いありません。夜間配送が可能になれば、ドライバーを過酷労働から解放できるでしょう。
さらに、ソフトバンクは、ドローンで基地局を飛ばし、半径5km圏内で最大2,000人が同時に通話できるシステムを開発しました。これをドローン配送と併用すれば、災害復旧にも大きく貢献するでしょう。
さて、今回はドローン配送の基礎知識と活用事例、さらに課題やドローン配送の未来についてお伝えしました。
ドローン配送とは、ドローンに商品を載せて顧客のもとに届ける輸送手段のことです。ドローン配送が必要とされる背景には「ドライバーの不足と高齢化」「過疎地への配送需要の増加」「宅配の迅速化への対応」「救援物資の輸送」といった問題があります。
ドローン配送の仕組みは、専用アプリから注文が入ると、GPSで位置情報を取得、飛行ルート検出して商品を積んだドローンが飛行します。指定されたポイントで着陸すると、商品を受け渡し、そのまま自動で飛び立って帰還する、というものです。
ドローン配送は、アイルランドのレイキャビクではすでに実装化され、出前の需要にこたえ、輸送コストの削減にも成功しています。国内でもハイウェイロードの上空をドローンが飛行し、3km近く先の山間部にある注文主の自宅まで届けたという事例もあります。
ただし、ドローン配送には数多くの課題が山積みです。たとえば、技術面では、「落下のリスクの軽減」「充電技術の強化」という課題が、法律面では、航空法や小型無人機等禁止法、電波法などの規制をクリアーしなければなりません。ただ政府は、ドローンの有人地帯飛行の実用化に向けて積極的に動いているので、近いうちに条件付きで規制緩和される可能性は十分あります。
ドローン配送が多くの課題解決に役立つことは、誰もが認める事実。後は、技術面と法律面の課題をクリアーする日を待つのみです。その輝かしい未来に向けて、今この瞬間もドローン配送の実験が行われているかもしれません。今後も、その実現に向けた動きを大いに注視しましょう。
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