ディープラーニングで開発したいものがある、あるいは業務でディープラーニングが必要になる人もいますよね。そんな中で、調べるとディープラーニングの開発にはPythonというプログラミング言語がおすすめだ、という情報を見聞きした経験があるかもしれません。
実際に、ディープラーニングの開発現場ではPythonが多く用いられています。そのため、ディープラーニングにはPythonの学習が必須になりました。
とはいえ、ディープラーニングにはどのようなPythonの知識が必要なのか、どのように勉強を進めればよいのか、わからないことも多いでしょう。そこで今回は、Pythonでディープラーニングをおこなうために必要な知識と勉強法について解説します。
まずは、そもそもディープラーニングとは何かについて確認しましょう。
ディープラーニングとは
ディープラーニングとは、人間が自然におこなっている判断や動作をコンピュータに学習させ、コンピュータ上で実現する技術のひとつです。例えばApple社のSiriのようなAIアシスタント(音声でデバイスを操作するシステム)を始めとした音声認識や、スマホや部屋への入室時におこなわれる顔認証のような画像認識といった技術に用いられています。
このように画期的な技術であるディープラーニングですが、その開発にはPythonがおすすめです。では、その理由について解説しましょう。
ディープラーニングにはPythonがおすすめな理由
ディープラーニングにPythonがおすすめである最大の理由は、ライブラリの豊富さにがあります。ライブラリとは、便利なプログラムのセットのこと。ディープラーニングの開発に便利なライブラリが、Pythonだと豊富なので、他のプログラミング言語よりも開発がしやすいといえるでしょう。
また、Pythonの優れている点は文法のわかりやすさです。Pythonの文法はシンプルで、誰が書いても同じようなコードとなるように作られています。そのため初心者にもとっつきやすいでしょう。またシンプルであることはディープラーニングをおこなううえでとても有利になり、また本格的にコーディングをおこなうに当たっても扱いやすいです。
このような理由から、ディープラーニングをおこなうにはPythonが非常におすすめです。そこで気になるのがどのような知識が必要なのか、ですよね。続いて、求められる知識について解説します。
Pythonでディープラーニングを行うために必要な知識
当然ながら、ディープラーニングをおこなうためにはいくつか勉強が必要となります。ではなにを勉強すれば良いのかというと、大きくわけてプログラミング、アルゴリズム、数学の3つです。順番に解説しましょう。
プログラミング
Pythonを使う以上、Pythonでのプログラミング技術は必須スキルといえます。基本的な文法の習得やディープラーニングに適したライブラリの扱い方を学ぶことは、ディープラーニング開発の第一歩といっても過言ではありません。
アルゴリズム
アルゴリズムを簡単に説明すると、プログラムの手順のことです。良いアルゴリズムを使うことで処理速度が上がったり、精度が高まったりします。アルゴリズムには定番のものがあり、ディープラーニングをPythonでおこなうに当たって頻繁に使われるものはマスターしましょう。
数学
数学アレルギーの人もいますが、残念ながらディープラーニングと数学は切っても切り離せません。学ばなければならない分野は微分積分、線形代数、確率・統計ですが、高校や大学のように一から網羅するのではなく、最低限必要なものだけ勉強すれば最初の段階では大丈夫です。
ところで、すでに述べたようにディープラーニングをPythonでおこなうためのライブラリは豊富にそろっています。実際の開発にはライブラリの種類を把握する必要もあるでしょう。そこで、次におすすめのPythonライブラリを紹介しましょう。
ディープラーニングをするときにおすすめのPythonライブラリ
ディープラーニングのPythonライブラリにはいくつかありますが、とくによく使われていたり、使い勝手が良かったりするものは次の4つです。
TensorFlow
TensorFlowはGoogle社がGoogle Brainというプロジェクトで開発されている、ディープラーニングの基盤技術の一種であるニューラルネットワークに関するPythonライブラリです。計算を可視化でき、高性能で実践的なライブラリとなっています。
Keras
Kerasでは、TensorFlowなどの他のディープラーニングのPythonライブラリ上で動くように作られています。数学的な部分を意識することなくとも、短いコードで開発が可能であり、素早い実装が可能です。また、日本語の解説書もあるのは、開発のハードルを下げるのでありがたいですよね。
PyTorch
PyTorch(パイトーチ)では、2016年後半に発表された新しいPythonライブラリで、人気も高いです。Chainerと類似した構文で書くことができるうえ、新規の機能の実装の際に、微分に関するコードを書く必要がないため作業効率が高くなります。他にも、見やすいコードを記述でき、計算速度も速いのが売りです。
scikit-learn
scikit-learn(サイキットラーン)はディープラーニングだけでなく、機械学習(ディープラーニング含むAI(人工知能)の基盤技術)全般に使える人気の高いPythonライブラリ。マルチに活躍し、統計やパターン認識、データ解析ができます。
これらはディープラーニング開発において、どれも優秀なPythonライブラリです。目的に応じて使い分けましょう。
ここまでPythonライブラリを紹介しましたが、そもそもディープラーニングをPythonでおこなうには勉強が欠かせません。勉強するにあたって、おすすめの本やサイトについて知りたいですよね。そこで、まずはディープラーニングを学ぶのにおすすめの本を紹介します。
ディープラーニングを学ぶのにおすすめの本
ディープラーニングの勉強といっても、ディープラーニング全体の概観からPythonによる実際のディープラーニング開発の手順、ライブラリの使い方、数学の習得とさまざまです。ここでは幅広く紹介しましょう。
人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの
「人工知能は人間を超えるか」はディープラーニングやAI(人工知能)について概観するための一冊です。コードや数学的な説明はなく、純粋にディープラーニングの歴史や意味、近年の状況を解説した本となっています。まずディープラーニングとはどんなものなのか?を知りたい方にはおすすめです。
ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装
有名かつ人気なディープラーニング入門書で、Pythonを使った実装を学ぶことができます。ライブラリを使わず、ディープラーニングの本質が理解できるように書かれているのが最大の特徴で、ディープラーニングを深く理解することが可能です。
PythonとKerasによるディープラーニング
PythonライブラリのひとつであるKerasを用いてディープラーニングの基本から実装まで解説した本です。この本があれば、Kerasとディープラーニング両方の理解が進むでしょう。初歩的なPythonやディープラーニングの知識を持っていると使い勝手がより良いです。
直感Deep Learning ―Python×Kerasでアイデアを形にするレシピ
こちらもKerasを用いてディープラーニングを学ぶ一冊となっています。数式が少なく、自然言語処理や画像生成、強化学習といったさまざまなモデルの実装について解説し、内容が充実しています。この本で勉強するときは、ディープラーニングの基礎知識があるとなお良いでしょう。
最短コースでわかる ディープラーニングの数学
ディープラーニングに必要な数学を学ぶための最初の一冊としておすすめです。高校レベルの数学からていねいに解説され、基本的なところから理解が進みます。また、数学のどの分野がどのように関係してくるのか相関図がついていて、今後の学習の指針ともなるに違いありません。
ディープラーニングをPythonでおこなうに当たって、本は最適なテキストのひとつです。しかし、本は重苦しい、Webサイトで手軽に勉強したいという人もいますよね。次に、ディープラーニングの勉強ができるおすすめのサイトを紹介します。
ディープラーニングを学ぶのにおすすめのサイト
本での勉強が苦手という人にはWebサイトでの勉強という手段があります。数あるWebサイトでもおすすめなのは次の4つです。
Progate
Progateはプログラミング初心者にとくにおすすめしたいWebサイトで、ディープラーニングに入る前のPythonの基礎を学ぶ段階で活用できます。イラスト中心に構成され、ブラウザ上でプログラミングできるため、初心者でも抵抗なく勉強ができるでしょう。
KIKAGAKU
KIKAGAKUは無料で利用でき、ブラウザ上でコーディングと実行ができる優れもののサイトです。「ディープラーニングの基礎」という講座があり、使用するPythonライブラリはPyTorchかTensorFlowか選択できます。このため、自分の使うライブラリに即して勉強できますよね。
Aidemy
Aidemyは“3ヶ月でAI人材になる”という謳い文句のWebサイトで、画像認識や自然言語処理など、さまざまなスキルを習得できます。一部のコンテンツは無料で利用可能です。ブラウザ上でプログラミング可能で面倒な開発環境構築は必要ありません。
AI Academy
AI AcademyはAI(人工知能)に関するコンテンツが360種類以上もあるWebサイトで、ディープラーニングに関するものも豊富です。ディープラーニングやPythonの基礎から、画像分類といった実践的なスキルまで幅広く習得できます。
ここまで、ディープラーニングをPythonでおこなうために必要な知識や、勉強するための本やサイトを紹介しました。これでディープラーニングをPythonでおこなう準備は完璧・・・といいたいところですが注意点があります。最後に、Pythonでディープラーニングをおこなうときの注意点を紹介しましょう。
ディープラーニングをPythonで行う注意点
ディープラーニングをPythonでおこなう際に一番気をつけたいのは、目的を見失わないことです。本来、なにかを達成するための手段としてディープラーニングやPythonがあるのであって、ディープラーニングもPythonも目的ではありません。場合によってはディープラーニングやPythonが適さないこともあるので、固執しないようにしましょう。
もうひとつ、途中で勉強や実装がつらいばかりにならないようにすることも注意したいところ。もちろんきつい場面もありますが、過度な負荷は勉強ややる気にマイナスに働きます。できることから手をつけたり、自分のレベルに合わせて徐々に実装したりしましょう。
さて、今回はPythonでディープラーニングをおこなうために必要な知識と勉強法について解説しました。コンピュータがあたかも人間のように判断や動作をするようにする技術であるディープラーニングは、今や多種多様に使われています。ディープラーニングの開発にはPythonがおすすめで、それは次の通りです。
- ライブラリが豊富
- 文法が簡単
- 広く普及している
ディープラーニングをPythonでおこなうには次の知識が最低限必須です。
- プログラミング
- アルゴリズム
- 数学
ディープラーニングをPythonでおこなうための勉強には本やWebサイトを利用すると良いです。現在、さまざまな本やWebサイトがあり、プログラミングや数学の基礎を学べるものから、ライブラリを使って本格的に実装できるものまであります。
ディープラーニングを学ぶのはハードルが高そうですが、ひとつひとつ易しいところからこなしていけば、徐々に成長できます。千里の道も一歩より、今日からこつこつ進めましょう