WebやテレビなどではAI(人工知能)に関するニュースを毎日目にするようになりましたよね。ところで、AI(人工知能)とはArtificial Intelligenceを省略したものなんですが、このArtificial Intelligenceという言葉が誕生したのがなんと1956年というから、ちょっと驚きですよね。今や現在の先端技術の代表選手のイメージがあるAI(人工知能)ですが、既に60年を超える歴史を持つ技術なんです。
今回は、今こそ見直すAI(人工知能)の基本ということで、AI(人工知能)の得意分野と苦手分野についてお伝えします。
Artificial Intelligence(人工知能)の歴史
まず最初にAI(人工知能)の歴史を簡単に振り返ってみましょう。
Artificial Intelligenceという言葉が使われ始めたのは1956年です。当時、実質的なAI(人工知能)研究の出発点となる会合である「ダートマス会議」において会議の主催者であるジョン・マッカーシーにより「Artificial Intelligence」という名称が定義されました。コンピューターによる推論や探索により特定の問題に対して解を提示できるようになりブームとなりましたが、様々な要因が絡み合っているような現実社会の課題を解くことはできないことが明らかになり、60年台後半にはブーム終了となってしまいます。
2012年、画像認識技術を競う世界的な競技会「ILSVRC」において、ディープラーニングを使用したジェフェリー・ヒントン教授率いるチームが圧勝したことでディープラーニングは俄然注目を集めます。本競技会では毎年1%レベルの改善で進んでいたのをディープラーニングにより、一気に約10%の改善を実現してしまいます。また同年の6月、Googleとスタンフォード大学がディープラーニングにより猫の画像を「猫」と認識することに成功、2016年にはディープラーニング技術によるディープマインド社の「AlphaGo(アルファ碁)」が韓国の棋士イセドルに勝利などの様々な業績を達成したこともあり、ディープラーニングとAI(人工知能)は一気に世の中の注目を集めます。
以上、現在のブームに至るまでの経緯を簡単に確認してみました。次に、AI(人工知能)の得意分野について確認しましょう。
Artificial Intelligence(人工知能)の得意分野
AI(人工知能)の得意分野の事例として、囲碁対戦および医療画像認識について確認しましょう。
囲碁対戦(完全情報ゲーム対戦)
囲碁などの完全情報ゲームは探索空間こそ非常に広いですが、ルールで決められている閉じた空間であるためAI(人工知能)にとっては得意分野となります。
AlphaGoはその後も改良を続け、イセドルに勝利したAlphaGoに対し100戦100勝の能力を持つAlphaGo Zero、更にはその後、囲碁以外に将棋とチェスまで対応するAlphaZeroまで改良を続けることにより、人類の能力を遥かに超えた領域にまで到達してしまいます。
AlphaGoがどれだけすごい影響を及ぼしたのかは以下の記事に詳しく書いてあります。
また、なぜAlphaGOが勝つことができるようになったのか、はこちらの記事をご覧いただけるとより理解できるでしょう。
医療画像認識
理化学研究所と国立がん研究センターの研究グループは、米ハワイの学会においてAI(人工知能)を使って早期胃がんを発見することに成功したと発表しました。早期胃がんは専門医でも炎症との判別が難しい診断ですが、熟練医に迫るところまで精度を高めたAI(人工知能)により、がんの80%をわずか0.004秒で発見することに成功しました。
このような背景もあり、医療画像診断における、がんなど病変見落としの問題も発生しており(医療事故情報を収集する日本医療機能評価機構の調査によると平成27~29年の3年間に発生した病変見落としは32件)、今後の医療分野におけるAI(人工知能)活用に期待が高まっています。
以上、AI(人工知能)は既に高い能力を持っており、いずれ私たちの多くの仕事を奪ってしまうのではないか、と不安な気持ちにもなりますよね。それでは、AI(人工知能)は何でも対応できる万能選手なんでしょうか?次にAI(人工知能)が苦手な分野について確認しましょう。
Artificial Intelligence(人工知能)が苦手な分野
私たちにとって極めて高度な能力を示すAI(人工知能)ですが、私たちが普段意識することなく出来ていることが実は苦手であることが分かっています。例えば、私たちがコンビニなどで商品を取り上げる操作が該当します。
1980年代のAI(人工知能)学者やロボット工学の研究者により示された「モラベックのパラドックス」というものがあります。これは「コンピュータに、専門知識による処理を行わせるよりも、4~5歳児レベルの知覚と運動のスキルを与える方が遥かに難しい、あるいは不可能」というものです。モラベックによると(Wikipediaより。カッコ内は筆者追記)、
- 動物にも共通するような人間のスキルは長期間発展してきたため、我々はそれらをリバースエンジニアリング(この場合は、人間の動作を解析して人間の動作原理を明らかにすること)する困難さを予期すべきである。
- 最古の人間のスキルは無意識のうちに働くことがほとんどであり、我々には簡単なことに思える。
- したがって、一見して簡単なスキル(4~5歳児レベルの知覚と運動のスキル)はリバースエンジニアリングするのが難しく、逆に努力を要するスキル(専門知識による処理)のリバースエンジニアリングは簡単かもしれない。
コンビニ店員が私たちが購入した複数の商品について、例えば各々の弁当のメニューを判断しながら、最適な順序/方向でレジ袋に詰め込む作業はAI(人工知能)にとっては驚異の技に見えるかもしれません。
以上、今回は、今こそ見直すAI(人工知能)の基本ということで、AI(人工知能)の得意分野と苦手分野についてお伝えしました。
- Artificial Intelligenceという言葉が使われ始めたのは1956年の「ダートマス会議」から
- Artificial Intelligence(人工知能)の得意分野
囲碁対戦(完全情報ゲーム対戦):囲碁などの完全情報ゲームは得意分野
医療画像認識:熟練医に迫る精度を持ち、短時間で高い精度でがんの検出が可能
- Artificial Intelligence(人工知能)が苦手な分野
私たちが普段意識することなく出来ていることが苦手。例:コンビニなどで商品を取り上げる操作
現在のAI(人工知能)は、特定の業務のみに極めて有能なパートナーと捉え、AI(人工知能)の得意不得意を利用しつつ私たちが有効活用することにより世の中の様々な課題解決を目指してゆく必要がありますよね。
人工知能
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