日本にはさまざまな学会が存在しますが、人工知能を専門とした、人工知能学会という学会が存在します。人工知能に興味ある方々ならば、人工知能学会ってどんな学会なのだろう、どのような取り組みをしているのだろう、その実績にはどのようなものがあるのだろう、と気になるかもしれませんよね。
そもそも学会とは何であるのかというと、研究者が論文や研究発表会といった研究成果を発表する場を設けたり、その研究成果の妥当性を検討したりする、研究者が集う団体を指します。すなわち人工知能学会は、AI(人工知能)に関する研究成果について発表したり、検討したりする団体なのです。
これだけ聞くとなんだか難しそう・・・と少し敬遠してしまうかもしれません。しかし人工知能学会は初心者向けの講座を開催したり、私たちのようにまだAI(人工知能)がわからない人に向けてもさまざまな取り組みを行っているのです。
そこで今回は、人工知能学会が行っている取り組みや実績について解説します。
- 人工知能学会の主な取り組み内容は6つ
- 人工知能学会の主な取り組み①:最先端研究を発表する全国大会
- 人工知能学会の主な取り組み②:海外との交流を深める国際シンポジウム
- 人工知能学会の主な取り組み③:人工知能の話題を提供する人工知能学会誌
- 人工知能学会の主な取り組み④:新しい研究成果を載せた人工知能学会論文誌
- 人工知能学会の主な取り組み⑤:研究者や開発者に向けた教育を行う人工知能セミナー/AIツール入門講座
- 人工知能学会の主な取り組み⑥:研究者が交流する研究会・シンポジウム
- 人工知能学会のその他の取り組み①:人工知能学会倫理委員会
- 人工知能学会のその他の取り組み②:AI(人工知能)についてわかりやすく解説されたWhat`s AI
人工知能学会の主な取り組み内容は6つ
人工知能学会は研究者による研究のための集団であるため、その取り組みはAI(人工知能)の研究に関するものが中心です。人工知能学会では、全国大会、国際シンポジウム、人工知能学会誌、人工知能学会論文誌、人工知能セミナー/AIツール入門講座、研究会・シンポジウムを主な活動として挙げています。
人工知能学会の主な取り組み①:最先端研究を発表する全国大会
全国大会は年一回開催され、日本中のAI(人工知能)の研究者が集まり、研究成果を発表したり、その発表内容に対して質疑応答をしたりするものです。例えば、2018年度には、私たちにも身近なATMをテーマとした、「画像認識を用いた ATM セキュリティ強化」というセッションが開催されています。
また、一般の研究発表だけでなく、著名な先生を呼んだ、招待講演なども開催されています。他にも、日本中のさまざまな研究者が集うということで、研究者同士が交流を深める場となっています。
人工知能学会の主な取り組み②:海外との交流を深める国際シンポジウム
国際シンポジウムも年一回開催され、その名の通り、国の壁を超えた国際的なシンポジウムとなります。シンポジウムとは公開討論会の事で、ある議題に対して質疑応答をし、議論をし合うというものです。
2018年度にはビジネス向けの「Artificial Intelligence of and for Business」がワークショップの一つとして開催されました。国際シンポジウムで優秀論文として選ばれると、世界的な学術出版社であるSpringer社のLecture Notesから出版されます。
人工知能学会の主な取り組み③:人工知能の話題を提供する人工知能学会誌
「人工知能とその様に関した話題を提供」する人工知能学会誌『人工知能』は、年6回発行しています。学会誌を読む方法は入会するか、Amazonで各号を購入するかになります。載っている記事は、例えばVol.34 No.2だと、自動運転とAI(人工知能)に関連した「自動運転のための運転知能と今後の展開」というものがあります。
「人工知能」といえば、例えば掃除をする女性型ロボット等、学会の刊行物にも関わらず表紙がユニークであるということをどこかで聞いたことがあるかもしれません。これは、一般に開けた学会にしようと当時編集委員長だった松尾豊先生が意見なされたことにより、旧会誌名『人工知能学会誌』を現在の会誌名『人工知能』と名称変更するとともに表紙のデザインが見直され、イラスト作家に描いてもらうようになりました。
人工知能学会の主な取り組み④:新しい研究成果を載せた人工知能学会論文誌
「人工知能に関する新しい研究成果を示す論文」を載せた人工知能学会論文誌の発刊も人工知能学会の大切な活動です。専門的な記事が載せられており、例えば2018年33巻1号では「雑談システムにおけるTwitterデータからの統計的バックチャネル応答抽出手法」といった、Twitterに関連しているだろうけど、ちょっと難しそう・・・、という記事があります。
「投稿論文」は出せば必ず掲載されるものではなく、論文の中身のチェックを行う査読というシステムが存在し、査読の通ったものだけが掲載されます。なお掲載された論文について、2001年以降のものであれば人工知能学会の非会員の私たちでも閲覧が可能です。
人工知能学会の主な取り組み⑤:研究者や開発者に向けた教育を行う人工知能セミナー/AIツール入門講座
人工知能セミナー/AIツール入門講座では研究者や開発者に向けて、さまざまな分野の専門家がセミナーや講座を行うものです。例えばセミナーでは、「AIトレンド・トップカンファレンス報告会:世界最先端のAI研究開発動向が1日でわかる!」といった世界最先端のAI(人工知能)研究開発動向について解説しています。
入門講座では「TETDM:テキストマイニングツール」といった、文章を分析するテキストマイニングという手法について講義するものであったりします。
人工知能学会の主な取り組み⑥:研究者が交流する研究会・シンポジウム
AI(人工知能)の分野ごとに研究者が交流を行う研究会・シンポジウムの開催も人工知能学会の主な活動の一つです。「言語・音声理解と対話処理研究会」のような言語や音声に関するものや、「金融情報学研究会」といった金融についてのものが存在し、定期的に研究会やシンポジウムがさまざまな地域で開催されています。
人工知能学会の研究会やシンポジウムで研究者は研究発表をしたり、交流を深めたりすることでAI(人工知能)に関する新たな研究の種が生まれるので、大切な活動ですよね。
人工知能学会のその他の取り組み①:人工知能学会倫理委員会
人工知能学会では大会開催や論文誌の発刊等の主な活動の他に、人工知能学会倫理委員会を設立していたり、人工知能についてやさしく解説したWebページを運営したりしています。
人工知能学会倫理委員会というと仰々しく聞こえますが、人工知能研究や人工知能技術が社会にもたらすだろう影響や問題について人工知能学会で検討しましょう、という組織です。「人工知能技術のもたらす正負のインパクト両面に関し、社会にはさまざまな声があることを理解し、社会から真摯に学び、理解を深め、社会との不断の対話を行っていくこと」が人工知能学会倫理委員会設立の大きな目的であり、簡単に言うとAI(人工知能)と社会とのより良い関係を構築しましょう、といったところでしょう。
人工知能学会倫理委員会では「自らの社会における責任を自覚し、社会と対話するために、人工知能学会会員の倫理的な価値判断の基礎となる」ような倫理指針を定めています。具体的には次の通りです。
- 人類への貢献や驚異の排除を求めた「人類への貢献」
- 法規制や知的財産を尊重することを求めた「法規制の遵守」
- プライバシーや個人情報の適切な取り扱いを求めた「他者のプライバシーの尊重」
- 不公平や格差、差別をしないことを求めた「公正性」
- AI(人工知能)開発の安全性や情報提供、注意喚起を求めた「安全性」
- 問題点等をごまかさず科学的に真摯な態度を示すことを求めた「誠実な振る舞い」
- 潜在的な危険性について社会に警鐘を鳴らしたり、悪用を防止したりすることを求めた「社会に対する責任」
- 社会的な理解を深めたり研究者自身の能力向上をしたりすることを求めた「社会との対話と自己研鑽」
- 上記の倫理指針をAI(人工知能)も遵守するように求めた「人工知能への倫理遵守の要請」
研究者だけでなくAI(人工知能)に対しても、「人工知能への倫理遵守の要請」として社会における倫理的配慮を求めているのは、AI(人工知能)ならではのユニークなところですよね。
人工知能学会のその他の取り組み②:AI(人工知能)についてわかりやすく解説されたWhat`s AI
AI(人工知能)についてやさしく解説した「What`s AI」は誰でも閲覧できて、AI(人工知能)についての知識を深められる人工知能学会が運営するWebページです。例として、人工知能をそもそも知らない人にとって導入となる「人工知能って何?」という項目があります。
「人工知能って何?」では実際に行われているさまざまなAI(人工知能)の研究の内、「推論」と「学習」についてフォーカスを当てて解説がなされています。「人工知能って何?」によると「推論」は「知識をもとに、新しい結論を得ること」、「学習」は「情報から将来使えそうな知識を見つけること」を指します。また、「推論」の例として「ゲームの対戦」、「学習」の「例」として買い物の調査を挙げて、わかりやすく解説がなされています。
他にもさまざまな項目が「What’s AI」には並んでいます。AI(人工知能)の専門知識がない、難しくてわからない、取っ付きにくいという方にはうってつけの情報源ですよね。
さて、今回は人工知能学会が行なっている取り組みや実績について解説しました。取り組みの内容をざっと振り返ってみましょう。
- 人工知能学会の全国大会
- 人工知能研究に関する国際シンポジウム
- 人工知能学会誌の発行
- 人工知能学会論文誌の発行
- 人工知能セミナー/AIツール入門講座の開催
- 研究会・シンポジウムの開催
- 人工知能学会倫理委員会の開催
- What`s AIで人工知能に対する疑問解決
人工知能学会の取り組みは多岐に渡りますが、いずれもAI(人工知能)の発展において大切な取り組みであり、流石はAI(人工知能)の研究者の集団であるな、と感心させられますよね。
AI(人工知能)は私たちの生活に徐々に影響を及ぼしてきており、AI(人工知能)でありふれた世界がやってくるのは、それほど遠くないでしょう。ですので、気になる人は日本のAI(人工知能)を最先端で支える人工知能学会の今後の動向をぜひチェックしてみてください!
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