小売業者にとって、過剰在庫や欠品数の増加、廃棄ロスは、業績を悪化させる深刻な要素です。収益を伸ばすためには、これらの損失要因を最大限抑える必要がありますよね。そこで注目されているのが、AI(人工知能)の発注システムです。
AI(人工知能)の発注システムを活用すれば、「そろそろこれがたくさん売れそう」とか「この商品は客に飽きられてきた」という担当者の勘に頼らず、時期や季節に合った発注量を品目ごとに判断ができるので、過剰在庫や欠品といった機会損失が大幅に抑えられます。くわえて発注作業時間もグンと減るでしょう。
業績向上や従業員への負担軽減のためにも、ぜひAI(人工知能)発注システムのことを知り、導入の足がかりにしましょう。
そこで今回は、AI(人工知能)の発注システムを使う理由や活用事例、さらにAI(人工知能)の発注システムの今後についてお伝えします。
AI(人工知能)を使った発注システムとは
AI(人工知能)を使った発注システムとは、主に小売業において、店舗や品目ごとの売上高や在庫数、廃棄数、天候、イベントなど、過去のデータをAI(人工知能)が読み込んで需要予測し、自動発注するシステムです。AI(人工知能)にデータを反復学習させると、ディープラーニング(深層学習)により潜んでいるパターンを自動検出し、分類や予測を実行するアルゴリズムを構築します。このシステムを活かして時期や品目ごとに最適な発注を行います。
この大切な役割を担うのが、膨大なデータを学習して最適な需要予測ができるAI(人工知能)の発注システムです。適切な発注ができれば、機会ロスや値引き、廃棄が低く抑えられるので、経営状態は安定するに違いありません。
なぜAI(人工知能)を発注システムに使うのか
従来、スーパーなど小売業の発注は、主に人が行ってきました。しかし、人頼りの発注だと「来月はこの商品が倍は売れるに違いない」などの担当者の個人的な考えや力量の差により、精度がまちまちでした。そのため、過剰在庫や欠品、廃棄ロスを増やすことも珍しくありません。くわえて、発注作業には膨大な時間を要するので、担当者の肉体的な疲労と失敗できないというプレッシャーは、相当なものがあります。
また、日本は四季がはっきりしています。そのため、季節ごとのイベントや行事が豊富で、人々の消費行動が時期によって大きく変化する傾向が強いです。たとえば、ハロウィンで仮装したかと思えば、クリスマスで盛り上がり、その後はお正月に恵方巻と、目まぐるしく話題や興味が移り替わりますよね。
そこで、AI(人工知能)の発注システムに白羽の矢が立ちました。AI(人工知能)に任せると、過去のイベントやカレンダー、天候などのデータを学習のうえ、アルゴリズムに則った極めて客観的な需要予測ができます。よって、人により発注内容が変動するようなことはありません。最初は、賞味期限のない日用品から始まり、乾物や缶詰など賞味期限が長いグローサリ、そして近年では、牛乳やパンなど賞味期限が短い日配品にまで、AI(人工知能)の発注システムが使われるようになってきました。
実際に、AI(人工知能)の発注システムの導入により過剰在庫や欠品が減るだけでなく、担当者の作業時間と負担がグッと減るという前向きな成果が出ました。
さて、ここからはAI(人工知能)発注システムを使った事例を詳しくみていきましょう。
AI(人工知能)を発注システムに使った事例:ワークマンが欠品率の縮小と売上アップ
かつては、作業服専門店として主に職人をターゲットにしていたワークマン。今やカジュアル衣料の大ヒットにより、株価は10年で約20倍、顧客も大人の男性から若い女性、さらに子ども、高齢者にまですそ野を広げています。ところが急激な業績アップにより、生産量を飛躍的に増やしたため、在庫が急増してしまい、20年4~12月期に外部手配した倉庫の賃料が15億円と前年同期比の7割も増加しました。せっかく売上高が伸びても倉庫賃料が大幅に増えたのでは、かえって収益を圧迫しかねません。
そこで、AI(人工知能)の発注システムを導入。ワークマン日野町本店では、10~20分かかっていた200~300点の発注が、わずか2~3分で終了するようになりました。これなら作業負担がグッと軽くなりますよね。そして、AI(人工知能)を導入していない同地区の他店と比べると、無駄な在庫を増やさずに欠品率が4%改善、1ヶ月の売上は7%増えました。
さらに、従来の発注システムでは、商品数の1割を占める売れ筋商品につき、特別に過去8週間の販売実績などをもとに発注量を決めていました。しかし、季節の変わり目などの需要変化を読み切れず、欠品や過剰在庫が発生することもあったとのこと。ところが、AI(人工知能)の発注システムでは、過去2年間という従来より長い期間のデータを活用するため、季節要因などをより細かく反映でき、無駄を抑えています。
AI(人工知能)を発注システムに使った事例:ライフコーポレーションが作業時間の大幅削減
ライフコーポレーションの自社スーパー「ライフ」では、冷蔵を要しないドライグロサリーについては、かねてから自動発注システムを導入していました。しかし、販売期間が短いパンや牛乳などの日配品は、店舗や品目ごとに従業員が発注数を毎日算出していたため、1日3~4人でのべ3~4時間という膨大な作業時間がかかっていました。
そこで、240店舗以上でAI(人工知能)の発注システムを導入すると、日配品の発注業務を年間15万時間削減。さらに、システムには過去の同時期と算定発注数が大きくかい離している場合は、アラート表示して、担当者に確認する補助システムが組み込まれています。よって、あまりに違和感のある結果については人の手で微調整をするようにしました。これにより、商品欠品や廃棄ロスの悪化も防げています。
AI(人工知能)を発注システムに使った事例:東京無線組合がタクシードライバー売り上げ単価が大幅アップ
タクシー業界では、ドライバー不足に加え、需要のある場所にピンポイントで配車することが難しく、待ち時間の長期化や遅延、無駄なルート走行による燃料コストの無駄が課題でした。
そこで、東京無線組合がNTTドコモと組んで、AI(人工知能)による配車の自動発注に乗りだしました。AI(人工知能)の発注システムを使うと、500m四方の需要予測や100m四方での乗客獲得率の高いエリアがわかるため、そのエリアでの30分後までのタクシー利用台数が10分ごとに予測できます。しかも、エリアが特定できるだけでなく、右から行くか左から行くか、という細やかなルートまで教えてくれます。
これにより、例えばベテランドライバーでも普段は通らないスポットに誘導された結果、予想に反して客を拾うといったケースが格段に増加。4か月間で1人1日当たりの売上が、平均1,409円アップしました。しかも新人ドライバーについては、同3,115円アップ、この差は大きいですよね。
AI(人工知能)の発注システムで物を言うのは、学習データのボリュームです。過去のデータの種類と量、さらに正確性が高まれば、それに比例してAI(人工知能)の予測精度が向上します。その格好の事例といって良いでしょう。
AI(人工知能)発注システムの今後
AI(人工知能)の発注システムは、今後さらに普及する可能性があります。とくにスーパーでは、グローサリや日配品だけでなく、生鮮三品といわれる「精肉」「鮮魚」「青果」および「惣菜」という今まで敬遠されてきた極めて賞味期限が短い品目にまで活用範囲が広がるでしょう。
これらの品目は、ECサイトでの活用も増えつつあるので、その流通量はさらに増加していくに違いありません。すると、売れ残りや廃棄ロスを回避するべく、AI(人工知能)の発注システムに依存する企業が増えるはずです。
AI(人工知能)の発注システムの精度を高めるのは、学習データの種類と量の多さです。そして、最近は多くの業界でデータの価値が見直され、ビッグデータのやり取りが活発になりつつありますよね。この流れで売上高や在庫数など店舗ごとのデータにくわえて、気象やイベント、駅ごとの乗降人数など、活用できるビッグデータのカテゴリーが細分化し、ボリュームが増加すれば、AI(人工知能)の発注システムの精度もさらに向上するでしょう。
また、AI(人工知能)ソフトの質の向上やそれを動かすハード面での技術開発によっても、AI(人工知能)の学習能力や需要予測の精度は高まります。すると、過剰在庫や欠品、廃棄ロスという課題解決に、AI(人工知能)の発注システムが大いに役立つに違いありません。
最後に、AI(人工知能)でも予測不可能なことや判断を誤ることがあります。そこで、ワークマンやライフのように、AI(人工知能)を監視したり、アラートでリスク管理するといった補完システムの充実が重要でしょう。この動きが並行すれば、AI(人工知能)の発注システムによる成果はより確実になり、信頼度も高まってさらに進化するに違いありません。
さて、今回はAI(人工知能)の発注システムを使う理由や活用事例、さらにAI(人工知能)の発注システムの今後についてお伝えしました。
AI(人工知能)を使った発注システムとは、店舗や品目ごとの売上高や在庫数、天候、イベントなど、過去のデータをAI(人工知能)が機械学習により需要予測し、自動発注するシステムです。顧客の需要、季節の変化やイベントによる購買内容の変化などを人が予測して発注するシステムは、力量の面でも作業負荷の面でも限界がありました。そこで、AI(人工知能)の発注システムを使うと、機会ロスと発注時間の削減が同時に進むという大きなメリットが生まれます。
ワークマンでは、AI(人工知能)の発注システムの導入で、200~300点の発注がわずか2~3分で完了、ライフでも240以上の店舗で日配品の発注時間が年間15万時間削減しました。東京無線組合では、AI(人工知能)のタクシー利用者の需要予測による配車手配で、ドライバー一人当たりの1日の平均売上が1,409円アップしました。
今後、AI(人工知能)の発注システムの活用範囲は、生鮮三品をはじめ多くの垣根を越えて広がって行くと考えられます。そしてビッグデータの活用やソフトやハードの開発、ならびに、AI(人工知能)を監視するシステムが充実すれば、その動きをさらに後押しするでしょう。
アパレル業界では、いまだに年間の衣類廃棄量が100万t、余剰在庫は14億点にのぼります。AI(人工知能)の発注が普及することで、需給のミスマッチが解消して多くの業界の無駄や損失が抑えられるに違いありません。これからもその動きをしっかりと注視しましょう。
【お知らせ】
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