AI(人工知能)が新聞記事を書く、と聞くと気になる方も多いでしょう。今やさまざまな分野のさまざまな仕事をAI(人工知能)が担うようになり、人間の仕事がAI(人工知能)に奪われるのではないかとさえ言われるようになりました。みなさんの仕事も、そのうちAI(人工知能)に取って代わられるのではないかと思うと、少し不安になってしまいますよね。
そんな不安は文章を書くという仕事、すなわちライターや新聞記者といった職業の方たちの間にもおよんでいるようです。文章を書くなんてことが、本当にAI(人工知能)にできるのでしょうか。
実のところ、すでにAI(人工知能)によって新聞記事がいくつも作成され、実際に新聞に掲載されているのです。
そこで今回はAI(人工知能)はどのようにして新聞記事を書くのか、また実際にAI(人工知能)はどのような新聞記事を書いたのか、お伝えしていきましょう。
AI(人工知能)はどうやって新聞記事を書く?
人間が記事を書く時は、資料をもとに何をどのように書くのか考えて、それを原稿用紙に書いたり、PCに打ち込んだりするという作業を行います。では、AI(人工知能)はどのようにして新聞記事を書くのでしょうか。
まず最初にAI(人工知能)に単語を理解させることから始まります。これをしなければ、どれだけ過去の新聞の記事を与えても、ただの言葉の羅列にすぎません。記事がきちんと単語で構成されていることを、まずはAI(人工知能)に理解させるのです。途方もない時間がかかるように思える作業ですが、準備さえきちんと整っていればAI(人工知能)は一瞬で単語を習得完了してしまいます。
しかし単語を理解できても、きちんと組み合わせることができなければ文章として成立しません。次は単語をどのように組み合わせれば文章ができるかを学習させます。この時に新聞ごとに存在する文章の特徴や、ケースに応じてどのような文章を作ればよいのかを学習するわけです。人間でいえば、本をたくさん読んで多くの文章に触れることで、いろんな文章の組み立て方が頭に入っていくという感じですよね。
ここまで行ったら、AI(人工知能)に書かせたい新聞記事に関わるさまざまな資料を読みこませ、キーワードとなる単語を抽出したり、自然な文章が作れるように条件づけたりする作業を行い、あとはそれに従ってAI(人工知能)が自動で文章を作成していきます。
綿密に機械学習を行っていけば、語尾をですます調で統一したり、記事全体の文脈が自然になるよう文章の順番を調節することも可能です。
AI(人工知能)の新聞記者による「70周年記念記事」
70周年を迎えた中部経済新聞の「これまでにない紙面を」という依頼から、AI(人工知能)で新聞記事を書くという企画が進められました。
中部経済新聞の創刊当時の記事、歴史に関わる過去の記事など、数万文という膨大な過去記事をAI(人工知能)に学習させ、約700字にわたる70周年記念記事をAI(人工知能)が作成し、中部経済新聞の紙面に掲載されたのです。
AI(人工知能)による新聞記事が作成され、掲載されたという情報は他の新聞やテレビ番組でも取り上げられ、大きな注目を浴びています。
AI(人工知能)の新聞記者による「経済ニュース」
日本経済新聞でもAI(人工知能)の新聞記者が誕生しました。発表された企業決算をもとに、たった2分という脅威的な早さで速報ニュースを流すことができるというのです。
東京証券取引所のHPに開示されている決算短信の中の売上高や利益といった数値、また業績におよぼした状況や背景といった文章から、ニュースとしてまとめるという作業を行うAI(人工知能)の新聞記者。
人間では10分ほどかかる作業を、AI(人工知能)の新聞記者はたった2分で完了させてしまうのです。刻々と状況が変わる可能性のある経済ニュースの世界において、あっという間に記事作成ができるAI(人工知能)の新聞記者の貢献度は非常に大きいものといえるでしょう。
AI(人工知能)の新聞記者による「天気予報」
同じく、西日本新聞ではAI(人工知能)の新聞記者が作成した天気予報の記事が掲載されました。
日本気象協会の九州支部から気象データを預かってAI(人工知能)に学習させ、また他の記事と同様に文章作成のノウハウを蓄積させると、なんとたった1秒という時間で天気・降水確率・予想気温・風といった予想データを出力。さらに日の出や日の入りの時刻や「今日は○○の日ですね」といった時節のコメント、「傘が必要です」「上着を脱ぎたくなる陽気です」といったコメントまで文章化しています。
いずれは気象予報そのものもAI(人工知能)が行い、報道までしてくれるAI(人工知能)の新聞記者が誕生する可能性もあるかもしれません!
AI(人工知能)の新聞記者は、ショッキングな記事も
ビジネス総合誌プレジデントが、米トランプ大統領に関する記事をAI(人工知能)の新聞記者に作成させるという試みを行いました。トランプ大統領に関する過去記事を多数、学習させてAI(人工知能)の新聞記者が書いた記事は、「世界の終わりがやってきてもおかしくない」という衝撃的な書き出しでした。
はたしてAI(人工知能)の新聞記者が、こんなショッキングで破壊力抜群な文章をしょっぱなから持ってくるということを学習したのかはわかりませんが、つかみとしてはインパクト抜群。
その後はアメリカでの事情や、トランプ氏が大統領になったことによる経済への影響、日本での現状や今後の予想などを1200文字にわたって書き連ねています。
このAI(人工知能)の開発者によれば、まだまだ創作性の強い文章を作るのは難しいかもしれないですが、「ふわふわ」「もふもふ」といった擬音語や擬態語などの表現や、皮肉のようなあいまいな表現をAI(人工知能)に学習させる研究はすでに行われているとのこと。いずれは小説やエッセーといった文章も、AI(人工知能)によって作られる時代が来るかもしれません。
さて、AI(人工知能)の新聞記者がどのように記事を作るのか、またこれまでにAI(人工知能)の新聞記者が記事を作成した事例についてお伝えしてきました。
- AI(人工知能)は単語、文章の組み立て方を学習し、さらに膨大な記事データを取り込むことで自然な文章を作成することができるようになる
- 中部経済新聞では、AI(人工知能)の新聞記者によって「70周年記念記事」が作られた
- 日本掲載新聞では、AI(人工知能)の新聞記者が、経済短信をもとにわずか2分で速報ニュースを作成する
- 西日本新聞では、AI(人工知能)の新聞記者が天気予報の記事を作成した
- プレジデント誌ではAI(人工知能)の新聞記者が米トランプ大統領についての記事を作成し、ショッキングな書き出しで強烈なインパクトを与えた
膨大なデータを短時間で取り込むことが得意なのがAI(人工知能)ですから、ひとたび文章の書き方や記事に関するデータを理解してしまえば、記事作成にほとんど時間がかからないのがAI(人工知能)の新聞記者の強みといえます。
AI(人工知能)がさらに学習を重ねていくことで、手に取った本やネットで書かれた記事が、みんなAI(人工知能)が作ったものだった、なんて未来がやってくるかもしれませんよね。