近ごろのニュースでは、AI(人工知能)が人間の代わりに運転したり、AI搭載の監視カメラが犯罪者を一瞬で特定したりと、一昔前なら夢物語にすぎなかったことが実用化されてきて、AI技術の進歩は留まることを知らずに突き進んでいますよね。
このように急速にAIが生活に入り込んできている今、世界中が真剣に考えなければならない大きな課題があります…それが「AI倫理」です。私たちは「倫理」という言葉を聞くとなんとなく「哲学的なアレね…」とふわ~っと捉えてしまうかもしれません。
しかし世界が今向き合っている「AI倫理」とは、そんな抽象的なものではなく、きちんとした定義がないまま開発が進めば、「AI兵器が人間を選別して殺すようになる」危険性を持つほど重要なテーマなのです!
ここからは、今後日本がどういった方針でAIを社会に取り込もうとしているのか(=AI倫理)を知るため、日本政府が2019年3月に発表した「人間中心のAI社会原則」から読み解いていきましょう。
「人間中心のAI社会原則」を守って明るい社会を作る
この「人間中心のAI社会原則」とは、本格的なAI社会を迎えるにあたって「社会」と「研究開発する側*」がともに守っていきましょうというルールです。そしてこのルールを守っていくことで、次の3つの明るい社会を実現しようとしています。
- 人間の尊厳が尊重される社会
- 多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会
- 持続性ある社会
まずはこの「3つの明るい社会」についてザクッと説明していきましょう。
AIが中心になるような世界ではなく、人間中心の世界を作ること。いくらAIが便利だからって依存ばかりしてると、人間は考える力をなくしてしまう。人間はAIを道具として使い、新しい仕事にチャレンジして豊かな人生を送ろう。
世の中色んな人がいて幸せの形も違うけど、AI社会が発展すれば、今はない新しい生き方や幸せの形ができるかもしれないってこと。新しい社会の幕開け。
AIを活用して仕事も発展させて、格差や地球環境なども解決していくような未来に続いていける社会を作ること。日本はこれから科学技術をさらにAIで強化していく。
みんなでこんな社会にしていきましょう!と政府が国民と企業に呼びかけているって感じですかね。それでは次に、このようなAI社会を作るための倫理となる「人間中心のAI社会原則」の中身を見ていきましょう。
「人間中心のAI社会原則」には7つの基本ルールがある
人間中心の原則
AIを使う時は、憲法と世界で決めた「基本的人権」のルールもちゃんと守っていく。AIの開発は人間の幸せのためにやっていくもの。AI依存や悪用を防ぐため、AI教育の仕組みづくりにも力を入れる。
教育・リテラシーの原則
AIの政策を決める者や経営者は、AIを悪用する人もいると考えてAIをきちんと理解して正しい知識と倫理を持つ。AIの利用者は、AIを理解して正しく使えるような知識をつける。AIの開発者は、AI技術を理解しているだけではなく、AIが社会で正しく使われるように倫理的な視点も持つ。AI社会で人々に格差が出ないように気をつける。
プライバシー確保の原則
AI社会では、個人の行動データから政治傾向、経済状況、趣味、趣向が推測されやすい。今までも「個人情報データの保護」はあったが、今後はもっと細かな管理が必要となる。データの不正使用によって、個人の自由、尊厳、平等が侵害されないようにする。
セキュリティ確保の原則
AIを積極的に使えば、あらゆる社会システムが自動化されて安全性が高まるが、現在のAI技術では、意図的な攻撃や予期せぬトラブルにはうまく対応できない。サイバーセキュリティの研究開発を進めてリスクを管理していく。問題が起きた時のことを考えて、社会は少数の特定AIに依存しない。
公正競争確保の原則
健全な経済成長を続けていくため、公正な競争環境が守られるようにする。特定の国や企業にAIデータが集中したとしても、不当にデータを集めてはいけない。AIを利用した富や影響力が、一部の人間や組織に集中しないような社会を作る。
公平性、説明責任及び透明性の原則
AIを設計する時には、人種、性別、国籍、年齢、政治的信念、宗教などを理由に人々が差別されないようにする。すべての人々が公平に扱われること。AIデータの利用法や管理法などについては説明責任があり、必要ならば対話の場を持つ。AIデータと分析結果が信頼できるような仕組みを作る。
イノベーションの原則
AIの発展とともに人間も進化していけるように、人種、性別、国籍、年齢、政治的信念、宗教などの区別なく、世界中の人々が協力していくこと。セキュリティに配慮しつつ、AIデータを世界中で有効に使える環境を作る。AIの開発・テスト・運用などについてのAI工学を確立させ発展させる。政府は社会にAIをスムーズに導入できるように現行ルールの見直しをしていく。
日本と世界のAI倫理観の違い
日本人の頭の中にはドラえもんが住み着いている
AIが急速に生活に入ってきて、日本もAI倫理について深く考えるようになりました。しかし実はほんの数年前まで日本は「AI倫理に関する意識が薄い」と世界から見られていました。
例えば「ロボットセラピー」のように、高齢者や患者の相手を動物型ロボットが行うことによる癒しは、日本ではすんなり受け入れられましたが、ヨーロッパでは「ロボットを動物だと思わせ高齢者をだましている」などと大きく反発されました。
この違いは日本人は「生き物型ロボットに抵抗がない」というところから来ているように思います。私たちは幼い頃からドラえもんなどのアニメに出てくるロボットに慣れ親しんでいて、「困った時に未知の力で助けてくれるロボット」に愛着がありますよね。海外の人と比べて日本人は、ロボットを人間の「道具」ではなく「友達」と思いがちなのです。
ドラえもんが人間を選別して殺すようなバトルシーンを想像するような日本人は、ほとんどいないですよね。しかし残念ながら、ドラえもんに攻撃的なプログラムを入れれば、「バトルドラえもん」は簡単に誕生してしまうのです。
このようなことから、私たち日本人がAIと倫理のことを考える時は、まず頭の中にいる愛すべきドラえもんを徹底的に追い払わなければなりません。
ルールを守る日本人、ルールを変える欧米人
それからルールに対する考え方も、日本と欧米では大きな違いがあり、この違いがAI倫理にも影響します。産業政策の専門家である青木高夫さんは、著書「欧米人はなぜ平気でルールを変えるのか」の中で次のように述べています。
大方の日本人にとって、“ルールはほかの誰かが作るもの”であり、立ち居ふるまいの美しさや行動の美学は”作られたルールの下で最善の努力をすること”にある、(中略)さらに、現代の官、昔のお上の側にも”ルールは自分たちだけが作るものだ”という権威意識があると思います。
極論になりますが、これに対して欧米人にとってはルールとはあくまでも“決めごと”であり、守ることは大切であっても、それが自分に不利となれば、有利になるように変更するか、そのために利害関係者と交渉すればよいものです。
つまりたいていの日本人は、決められたことに対してルール内で最善の努力はするが、「そもそもそのルールは必要なのか?正しいのか?」ということに対しての感覚が希薄なのです。欧米人が「そのルールおかしいんじゃない?なくそう!変えよう!」と行動するのとは対照的ですよね。
今回、日本政府が発表した「人間中心のAI社会原則」は細部までルール化されていますが、私たち日本人はこれを盲信することなく「決められたルールを変えることに対して消極的である」ことを自覚する必要があるでしょう。
まとめ
今回は、AIと倫理について日本政府が発表した「人間中心のAI社会原則」を読み解いて、さらに日本人と欧米人の倫理観の違いについても考察しました。この内容を簡単にふり返ると…
- 日本政府が発表した「人間中心のAI社会原則」を読めば、AI倫理の基本がわかる
- 「人間中心のAI社会原則」を守って明るい社会をつくろう
- 「人間中心のAI社会原則」には7つの基本ルールがある
- 人間中心の原則…人間が主役、AIが脇役の社会を作る
- 教育・リテラシーの原則…AI教育の環境を整える
- プライバシー確保の原則…AIデータからプライバシーが漏れないようにする
- セキュリティ確保の原則…トラブル発生時に危険なので少数のAIシステムに頼らない
- 公正競争確保の原則…AI競争は公平にする
- 公平性、説明責任及び透明性の原則…人間を差別するようなAIを作らない
- イノベーションの原則…世界中の人々が協力してAI社会を発展させていく
- AI倫理を考える時はまず「頭の中にいるドラえもん」を追い払おう
- 日本人はルールをよく守るが、ルール変更には消極的であることを自覚しよう
ところで、ルール変更に消極的な日本人が、積極的にルール変更を求めることはあるのでしょうか?…改めて考えてみると「何か大きな問題が起こった時」というような気がします。
例えば「危険運転で死亡事故」が起こった時、日本人は一丸となってルール改正を求め、ニュースは「危険運転」一色になりました。この「不正に対する正義感」や「悪いヤツが得をして逃げるのは許さない」という気持ちは、これからAI社会が発展していく上で非常に大切だと思います。
ただ、これから未知のAI社会を迎えるにあたって、問題が起こってから対策を考えるのでは手遅れなことも多いので、どんなに便利なことが起こるのか?と同時に、どんなに恐ろしいことが起こるのか?にも目を光らせ、一人ひとりがAIについて学んでいく必要があるでしょう。
AIに使われるのではなく、私たち人間がこの世界の主役であることを決して忘れることなく、ステキな未来を作っていきたいですよね。
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