少し前まで、私たちは人工知能(AI)が登場するSF映画といえば「自分からは遠い、未来のつくり話」として楽しんでいましたよね。
しかし今や感情を認識できる人工知能(AI)が登場し、あと20年もすれば人工知能(AI)が人間の能力を超える「シンギュラリティ」という恐ろし気なものがやってくる、といわれる時代。現実がフィクションに追いついてきたといっても、言い過ぎではありません。
ということは、今こそ人工知能(AI)をテーマにした映画作品を見ると、現実と比較したり共感しやすい上に、これからの人工知能(AI)との付き合い方を考えるヒントも含まれていたりして、とても楽しめそうですよね!
そこで今回は、私のまわりの映画好き数人にもおススメを聞きつつ、人工知能(AI)をテーマに描いた映画を、旧作から2020年公開の最新作まで5本ご紹介します!
押えておきたいSF映画の金字塔「2001年宇宙の旅」
人類が月に住む時代。最新型の人工知能(AI)「HAL9000型ロボット」が制御する宇宙船が、木星へ探査に向かった。しかし途中でHALが反乱を起こして・・・。人類の進化を、鬼才・スタンリー・キューブリック監督が圧倒的なスケールで描いたSF映画の金字塔。
(1968年/アメリカ)スタンリー・キューブリック監督/スタンリー・キューブリック&アーサー・C・クラーク脚本/キア・デュリア主演
★2018年に公開50周年を迎え、劇場上映されたり4K Ultra HD Blu-rayが発売され話題に。
★アカデミー特殊効果賞受賞
■人工知能(AI)的・映画のみどころ
・・・いやあ、知的で難解な作品ですよね。
昔に頑張って見たけど、はっきり言って意味が分からなかった人!
はーい!
今回久しぶりに見ても、やっぱり分からなかった人!
・・・正直、はい・・・(涙)!
すみません、私のこの作品の理解度、こんな↑レベルです。しかし、いわずと知れたSF映画の名作中の名作ですよね。哲学的なテーマ、セリフと説明が極限まで減らされた脚本、独特のカメラワーク、壮大なクラシック音楽と映像の融合・・・。
こんなふうに語りだすと止まらないマニアの方もたくさんおられる中、私がモノ申すのもおこがましいのですが、やはり「人工知能(AI)と映画」を語るとなれば、ふれないわけにまいりません。
なにより作品の全体像を理解するのは難解であっても、最新型人工知能「HAL 9000」の暴走シーンはこの時代に改めて見るからこそ、感じられる面白さがあります。
物語中、「HAL9000」は木星探査への航行中に反乱を起こし、乗組員の人間たちをピンチに追い込みます。人工知能(AI)に「便利な道具」以上の意味を持たせるとどうなるのか。自分たちが開発したものによって、文明が滅びる可能性も示唆しています。
今でこそ、人工知能(AI)が人間の能力を超える「シンギュラリティ」が現実としてやってくるのでは、ということも話題になっていますが、そんな今日的なテーマを、この時代にしっかりと映像化されているのが驚きですよね・・・!
ちなみにアポロ11号が月へ行ったのが1969年で、その1年前に公開された作品だというのも、びっくりです。
普通は、時代の変化とともに古くさく感じるのがSF映画の宿命ですが、ビジュアル的にもテーマ的にもとても50年前に作られたようには見えません。
あとは2001年が舞台だということを頭において、実現化した部分とそうでないところを比較しながら観るのも楽しそうです!
ロボットが「愛」の意味を問いかける「A.I. 」
近未来、不治の病に侵された息子を持つ夫婦のもとに、実験的に感情を持った子ども型のロボットが与えられ・・・。この作品は、「2001年宇宙の旅」のキューブリック監督の企画をスピルバーグ監督が受け継いで映画化した。
(2001年/アメリカ)スティーブン・スピルバーグ監督・脚本/ハーレイ・ジョエル・オスメント主演
■人工知能(AI)的・映画のみどころ
この作品は、いつか人間になって母に愛されたいと願う人工知能(AI)を主人公にした「現代版ピノキオ」ともいえるSFファンタジーです。キューブリック×スピルバーグという二大巨匠がかかわった作品だというのが、大きなポイント。見た人からも
「スピルバーグが撮ったからこそ、万人向けでわかりやすくなった」
「いや、やっぱりキューブリック版も見てみたかった」
とさまざまな意見が飛び交った作品です。
個人的には、美男のジュード・ロウがジゴロ・ロボットを演じているのも見どころの一つです・・・!
さて、お話です。子ども型ロボットのデイビッド(ハーレイ・ジョエル・オスメント)が、ある夫婦のもとにやってきて、「母親への愛」をインプットされます。リセットボタンもないので、どんな出来事がおこっても、デイビッドは母への愛を一途に求め続けます。
ですから、冒頭に出てくる「ロボットが人間を愛するなら、人間にも責任があるのでは?」という問いかけが物語全体を通して効いています。物語途中、いらなくなったペットのようにロボットを捨てたり、ロボットの解体をみせものにしたりするなど、さまざまな形で人間の身勝手さが描かれています。
そしてデイビッドもいろんな辛い目にあうのですが、けなげ過ぎるハーレイ君の演技がいじらしい半面、「人工知能(AI)の融通の効かなさ」を現しているようで、逆に不気味にも見える場合もあったりします。
ちなみに、人工知能(AI)に感情をもたせようという試みは映画の話だけではなく、今現在も進んでいます。
そうやって人工知能(AI)を進化させて感情を持たせたとき、私たちはどのように責任を持つべきか。いやいや、そもそも2人の監督が描きたかった人間の感情や愛の定義ってなんなんだ・・・? 見終わったあとも、もんもんと考えてしまいます。
こうやってみると結局、人工知能(AI)を描いた映画って「人間ってなんだ?」に正面からとことん向き合うってことになりますよね・・・!
AI時代のリアルな恋のかたちを描く「her/世界でひとつの彼女」
人工知能を搭載したOSと人間の男性との恋を描いたSFラブストーリー。日常生活や仕事をアシスタントしてくれるOSが素敵な女性の声で、自分のことをだれよりも理解して、やさしく味方になってくれたとしたら・・・?「マルコヴィッチの穴」などで知られるスパイク・ジョーンズが監督と脚本を手掛ける。
(2013年/アメリカ) スパイク・ジョーンズ監督・脚本/ホアキン・フェニックス主演
★アカデミー賞脚本賞受賞
■人工知能(AI)的・映画のみどころ
この作品、会話ができる人工知能(AI)との恋がテーマですが、
「ありえなさそうで、ありえる」
「絶妙にリアルで、身につまされたわ・・・」
との声が周りであがった作品です。
たしかに、「人工知能(AI)の音声に恋におちる?? ないない!!」という最初の予想をくつがえしてくれるのが、OSのサマンサを演じるスカーレット・ヨハンソンのうまさです。落ち着いた声だけの演技なのに「これは恋におちるかも!」と感じさせてくれます。
なにしろサマンサは、寂しくて寝られないときに自分の話を聞いてくれ、落ち込んだときは「辛いわね」と味方になってくれ、仕事に的確なアドバイスまでくれ、こちらの声の調子を読み取りながら、絶妙の距離感で話しかけてくれるんです!
これは、惚れてまうやろーーー!ってやつですね。(個人的には、高橋一生や星野源バージョンの音声もぜひ開発してほしい。買います)
音声会話用の機器を耳に装着し、一人芝居で機械の声と甘い言葉をかわす主人公・セオドア(ホアキン・フェニックス)の姿は一見、滑稽(こっけい)なようですが、スマホに向かって音声入力しながらひとりごとを話している今の自分の姿とかぶってしまったりもします・・・。
今でもすでに、疑似恋愛・癒し系アプリは存在しますよね。会話はまだbotの定型文ですが、今後はもっと個別に対応してくれるように進化するはずです。そうなれば、本気で恋に落ちるかどうかはともかく、多くの人が「自分も主人公と同じように強く依存してしまうだろうな」と思うに違いありません。
人と人工知能(AI)は本当に恋におちるのか。また感情を持った人工知能(AI)は人間と対等でいられるのか。そして、人工知能(AI)に多くを頼る時代がきたとき、私たちは人とのコミュニケーションをどう大切にすべきか、ということを映画を通して考えるきっかけをくれる作品です。
美しいロボットとの息詰まる駆け引き「Ex Machina(エクスマキナ)」
検索エンジンを開発するIT企業で働く男性プログラマーが、カリスマ社長の別荘で1週間を過ごす機会を得る。そこには女性型の人工知能(AI)ロボットがおり・・・。美しき人工知能(AI)搭載ロボットとその天才開発者、そして開発実験に参加することになる男性の3人の駆け引きを描いた、密室SFミステリー。「わたしを離さないで」の脚本家の監督デビュー作。
(2015年/イギリス)アレックス・ガーランド監督・脚本/主演ドーナル・グリーソン
★第88回アカデミー賞視覚効果賞受賞作品。 R-18 指定。
■人工知能(AI)的・映画のみどころ
観た人に感想を聞くと、
「ロボットがめちゃくちゃキレイなんだよ」
「ほれぼれ見ちゃうよね」
などロボットの造形をほめたたえる声が多かったです。
いや、実際めちゃくちゃ美しいんです! アリシア・ビカンダー演じる人工知能(AI)ロボットのエヴァが。
顔だけでなく、一部の機器が見えているところがまた、スタイリッシュで妖しくて・・・!
(その次に多かった感想は、「思ったより怖かった」でした)
この作品には主要人物が3人(メイド含むと4人)しか出てこない上に、密室心理劇なので、最初から最後までものすごーく息苦しい雰囲気なのですが、彼女の造形の美しさのおかげで、画面にひきつけられてしまいます。
ストーリーは、プログラマーである主人公の男性ケイレブ(ドーナル・グリーソン)が実験の一環として、この美しいロボットのエヴァと会話を交わすことで動き出します。エヴァの謎めいた美しさに、どんどんケイレブは魅かれていきます。
一見、「人工知能(AI)との恋愛はあり得るのか」が主なテーマに見えますが、「検索エンジンから得たビッグデータを利用して人工知能(AI)ロボットを開発した」という設定があったり、「人工知能(AI)と人間はどちらが優位といえるのか」ということにも触れられており、今私たちがぼんやり感じている不安を映像化した意欲作です。
近未来の日本を舞台に、人工知能(AI)の暴走を描く2020年公開作「AI崩壊」
2030年の日本。人工知能(AI)が暴走し、個人情報を分析して「生きる価値がある人間」と「生きる価値がない人間」を選別しはじめた・・・。「22年目の告白 私が殺人犯です」の入江悠監督が完全オリジナル脚本で描くSFサスペンス。
(2020年1月31日公開予定/日本)入江悠監督・脚本/大沢たかお主演
■人工知能(AI)的・映画のみどころ
これまでにも人工知能(AI)が暴走する話はいろいろ描かれてきましたが、この作品はスマホやPCなど個人の検索履歴からその人の行動や思考パターンが暴かれるほか、犯罪歴や病歴からも「人間の優劣」を判断されてしまう・・・という設定が今っぽくてリアルな印象ですよね。
上記の「エクスマキナ」と同様、まさに、今私たちが、人工知能(AI)をはじめとするデジタル社会に感じている不安を映画化したといえます。
医療、交通、セキュリティーなど私たちのライフラインすべてを人工知能(AI)に頼ったとして、これが万が一暴走すると、どのような怖さがあるのかが気になります。
今の私たちにかなり身近なテーマなので、共感やドキドキ感もアップしそうです。公開が楽しみですね!
大沢たかおさんが人工知能(AI)を開発した天才科学者を演じ、賀来賢人さん、岩田剛典さん、広瀬アリスさんなど若手俳優のほか、三浦友和さん、高嶋政宏さん、余貴美子さんなどベテランが脇を固めます。
さて今回は、人工知能(AI)をテーマに描いた映画を旧作から最新作まで5本、ご紹介してきました。人間の能力を超えて暴走する人工知能(AI)、感情を持つ人工知能(AI)、人間と恋をする人工知能(AI)など、映画の中で人工知能(AI)はさまざまな形で描かれ、わたしたちに問題を投げかけてくれています。
人工知能(AI)があるのが当たり前になってきた今だからこそ、作品に共感したりドキドキ手に汗を握ったり、逆にリアルでない部分にはツッコミながら楽しめますよね。また、「人工知能(AI)との付き合い方」を考えるきっかけにもなります。
ちなみに人工知能(AI)と人間を描いた映画は最終的には「人間とは何か」「これからわれわれはどう生きるべきか」を問うことになるため、ちょい重めのテーマになりがちですが、半面とても見ごたえがあります。
もちろん、ほかにも人工知能(AI)をテーマにした映画は数えきれないほどあります。残念ながら今回は紹介できませんでしたが、他におススメとして私のまわりでも声があがった作品をいくつかお伝えしましょう。
- ブレードランナー(1982年/アメリカ)
- トータル・リコール(1990年/アメリカ)
- GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊(1995年/日本)
- マトリックス(1999年/アメリカ)
- ウォーリー(2008年/アメリカ)
- トランセンデンス(2014年/アメリカ)
- オートマタ(2014年/スペイン・ブルガリア)
このほかにも面白い作品は、たくさんあります。これを機会に、ぜひ皆さんも自分好みの人工知能(AI)を描いた映画を探してみてください。きっと楽しみながら、人工知能(AI)について考える機会になるに違いありません。
【参考】
https://eiga.com/movie/22530/
https://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1907/01/news017.html
https://filmaga.filmarks.com/articles/1905/
https://movies.yahoo.co.jp/movie/163028/
https://movies.yahoo.co.jp/movie/347781/
http://exmachina-movie.jp/
https://movies.yahoo.co.jp/movie/356084/
http://www.webdice.jp/dice/detail/5120/
http://wwws.warnerbros.co.jp/ai-houkai/