最近のAI(人工知能)関連のニュースの中に、AR(拡張現実)に関する記事を目にする機会が増えましたよね。また、最近は、AI(人工知能)とAR(拡張現実)を組合せたアプリやサービスの登場が注目されつつあります。
ところで、AR(拡張現実)と似たようなキーワードとしてVRがあります。両者の違いをここで整理しておきましょう。
・VR(仮想現実:VirtualReality)
コンピュータにより作成された仮想世界を現実世界のように感じさせる技術です。例:ヘッドマウントディスプレイで海外の風景映像を見ると、まるで自分が海外にいるように感じることができます。
・AR(拡張現実:AugmentedReality)
文字通り、現実の世界を拡張する技術で、現実の世界にコンピュータで作られた映像を重ね合わせる技術です。例:自分の部屋のテーブルの上に、実際には存在しないリンゴのCGを追加します。
さて今回は、最近注目されつつある、AI(人工知能)とARとの組合せを利用した先進事例を3件お伝えします。
AI(人工知能)とARとの組合せを利用した先進事例
(エンターテインメント分野)ポケモンGO
ここではポケモンGOに今後追加が予想されている新機能についてお伝えします。
世界累計ダウンロード数が7億5,000万を突破し、現在も大人気のポケモンGOは最も有名なARゲームではないでしょうか。ポケモンGOは、スマホのカメラを通して映る現実の世界にいろんなポケモンを出現させて私達を楽しませてくれますよね。
2018年6月、ポケモンGOのAR技術を担当しているアメリカのゲーム会社Nianticは、AI(人工知能)をARに融合させた新しい技術「Niantic Occlusion」を発表しました。現在のポケモンGOでは、スマホ画面に現れるポケモンは同じスマホ画面に表示される人間や電柱などの映像と重なるように表示されています。
これはスマホのカメラを通して得られる映像に単純にポケモン映像を重ねて表示しているためですが、「Nianti Occlusion」によりAI(人工知能)の画像認識機能が映像に含まれている人間や電柱などをオブジェクトとして認識、ポケモンが人間とぶつからないよう移動したり、電柱などのオブジェクトとの位置関係を把握することによりポケモンが電柱の後ろ側に隠れる、などの処理がなされるようです。
この新技術により、ポケモンが現実の世界に本当に存在するかのような体験ができるようになります。これは本当に楽しみですよね。
(医療分野)Google AR顕微鏡
Googleが現在開発中の、AI(人工知能)とAR機能を組み込んだAR顕微鏡により、今後がん細胞を今までより容易かつ確実に見つけることができるようになるでしょう。
このAR顕微鏡は数千枚のがんの画像を事前に機械学習しており、顕微鏡の映像におけるがん細胞を見分けることができるようになってます。患者の組織切片をAR顕微鏡にセットし医師がのぞき込むと、がん細胞が緑色の線で囲まれた映像が見える、という仕組みです。AR顕微鏡にはカメラが設定されており、このカメラの映像をAI(人工知能)が解析し、がん細胞と判断できた場合には緑色の線の映像を作成します。この緑色の線の映像を、AR機能が顕微鏡の映像に重ね合わせて表示しています。なお、医者が顕微鏡にセットした組織切片を動かしたり、顕微鏡の倍率を変更した場合はARの映像も一緒に変化します。
このAR顕微鏡の活用により、がん細胞の見落としがないかどうか過度の緊張を強いられる医師の負担削減も期待されているようです。
(美容分野)YouCam メイク
2018年5月、パーフェクト株式会社が提供するバーチャルメイクアプリ「YouCam メイク」に、新サービス「AI ルックトランスファー」が追加されました。
YouCam メイクは全世界で3.3億ダウンロード、また世界で数々の受賞歴を誇るバーチャルメイクアプリです。今回の新サービス「AI ルックトランスファー」はAI(人工知能)とARの融合により実現したサービスで、エスティーローダーの広告や雑誌の写真をスマートフォンで撮影すると、モデルのメイクを自分の顔でシミュレーションすることができる、というものです。まさに「現実」の拡張ですよね!
本サービスはエスティーローダー限定のサービスで、同社のベストセラーファンデーション「ダブル ウェア」の使用感を利用者自身の肌でバーチャル体験できるというものですが、化粧品の使用感をスマホで試せるというのは驚きですよね。
さて、今回はAI(人工知能)とARの組合せを利用した先進事例として、ポケモンGO、GoogleのAR顕微鏡およびYouCam メイクについてお伝えしました。いずれも、近未来を感じさせてくれるユニークな事例で、今後、AI(人工知能)とARの組合せにより、私達をわくわくさせてくれるサービスがたくさん生まれてくることが期待できますよね。
なお、AI(人工知能)とARの組合せにより、利用者がいつ、どこで、ARの映像のどんな情報をどれだけの時間見ていたのか、あるいはどんな情報を無視していたのか、などの利用者の詳細な嗜好データを得ることができるため、今後のネットショッピングに新しい可能性をもたらし、社会全体に大きなインパクトを与えるとも期待されております。
さらに、AI(人工知能)とARに加えて、触覚技術(手触りなど)との融合の研究も既に進んでおり、遠い将来には触覚/味覚/嗅覚も含めた人間の五感すべてがAI(人工知能)とARの対象となる可能性もあります。そのような未来におけるネットショッピングとは、私達の想像をはるかに超えて便利になっているのではないでしょうか。未来のネットショッピング、早く体験してみたいものですね。
参照元
トップクリエイターが語る「VR」「AR」「AI」の「実用化の先の未来
VR/ARに今、参入する意義 ―20年後の勝者になるために―
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