近ごろ、ニュースなどでIoTとセンサーを使った農業が注目されていると報じられており、未来の技術だと思っていたものを見ると、技術の進歩に驚いてしまいますよね。
確かに、ニュースで取り上げられているから目立っているものの、近所でIoTを使った農業をしてたり、「私、センサーを使って農業やってます」なんて人はなかなか見かけません。はたして、実際のところはどうなんでしょうか?
そして、農業は高齢化による人手不足や、生産性の低下に悩んでいるというニュースもよく耳にし、なんだか日本の農業の将来に不安を持ってしまいますよね。
その一方で、都会の喧騒を離れ、若者が農村に移住し、農業に転職したという話題を耳にすることがあります。しかも、Iotなどの新しい技術を使って問題となっている生産性を向上させていたり、センサーを利用して肥料や水撒きを自動化させたりして、今まで持っていた農業のイメージを払拭するような事例に、私たちもついつい興味を持ってしまいます。
今までは、 閉鎖的なイメージや地味なイメージがあった農業ですが、最近になってそのイメージが変わってきているのは事実です。それは、IoTやセンサーを使う技術面だけではなく、国や自治体も今まであった制度を変え、本当に日本の農業を変えようという動きになってきています。
そこで今回は、今から本気で農業を始めようとする方にとって、いくつか参考になればと思い、ITを使った農業への転職、いわゆる就農について解説いたします。
農業に従事する人数
そもそも、日本の生産年齢人口(15歳から64歳までの男女)は、1995年の8700万人をピークに下がり続け、2012年には8000万人を割り込みました。今後2025年には約7100万人にまで減少すると言われています。
さらに、農業の労働人口の状況はもっと厳しく、1950年をピークに半世紀以上も下がり続けています。これまで、農業に従事していた人が都市部への雇用に流れたのが大きな原因です。また、農業従事者の高齢化も問題となっており、約7割の従事者が65歳以上という現状です。このように、農業労働力は、労働人口の減少と高齢化のダブルパンチといった状況になっています。
しかし近年は、このように暗い話題だけではなく、新規に就農する人の数が増加傾向にあります。農林水産省の統計によれば、2016年の新規就農者数は約6万人で高いレベルを保っています。さらに、そのうちの3分の1にあたる2万人は49歳以下となっており、若者の間で就農に対する注目度が増していると言えます。
整い始めた就農の地盤
近年になって、就農をする人は増加してきていますが、これは、農地法の改正が大きく影響しています。農地法の改正は2009年から段階的行われ、特にインパクトが大きい改正は、企業(法人)による農地の所有ができるようになったことです。
意外に思うかもしれませんが、この農地法の改正以前は、企業が農業をしてはいけなかったのです。元々、個人農家を守るための法律だったのですが、その影響で新規に農業に参入するには大きな壁が立ちはだかり、現在のように農業就労人口が減り、農業従事者の高齢化を引き起こしたのです。
そして、企業が農地を所有することで、企業は農業従事者を集めることができ、これが就農を希望する人の受け皿となっています。さらに、高齢化によって耕作放棄された農地を企業に貸し出し、眠っていた農地で再び耕作ができるようになりました。
さらに、国や自治体も就農者に対して農地や資金の援助、ノウハウの提供を行ったりすることで、就農のハードルが一気に下がることになります。各自治体ごとに様々な特徴の就農支援があり、就農する側にとっても選択肢が増えてきました。
IoTとセンサーが就農をバックアップ
これだけ就農する人が増えている背景は、国や自治体の支援だけでは説明がつきません。やはり、ITを使った技術的なバックボーンがあると言えるでしょう。
元々、手作業が中心であった日本の農業は、品質重視ではあるが、大量生産にはあまり向いていないものでした。そのため、広大な土地で大量生産できる国から穀物を輸入しているため、穀物の自給率はかなり低くなっています。
逆に考えると、手作業が中心の農業は、機械化や自動化、そしてIT化の余地がかなりあるということが言えます。特にIoTやセンサーを利用した農業は、人が行う作業の削減や作物の収穫量アップにかなり貢献しております。
それでは、IoTとセンサーを使った農業の具体的事例についてご紹介します。
IT化サポートまでしてくれる就農サポート
先ほどご紹介した農地や資金サポートだけではなく、ITサポートも併せて行なってくれるところが増えてきています。
- 水田の水量管理をIT化
インターネット通信ができるIoTセンサーを水田の一角に挿すと、センサーが自動的に水量や水温の変化を記録し、インターネット経由で自動的にクラウドにデータを送信します。蓄積された情報は、離れた場所でもスマートフォンやパソコンで確認することができ、常に水田の状態を確認することができます。そして、水量不足などの異常が見つかった場合は、自動的にスマホに通知されその時だけ現場に急行すれば良いのです。
これにより、水田管理の人員削減が可能となりました。
- トマトのビニールハウス栽培
ビニールハウスに設置されたIoTセンサーは、温度、湿度、日射量、CO2量などを計測し、異常値を検出した時の行動を自動化しました。
例えば、室内の温度が上がりすぎた場合は、ビニールハウス側面が巻き上げ、室内の温度を下げます。また、室内の日射量が不足した場合、天井を覆っている遮光カーテンを自動で開き、日射量をリカバリーします。そして、CO2が不足した場合はCO2発生装置を作動させ、CO2濃度を基準値に保ちます。
今回は、IoTとセンサーを使った農業での就農について解説いたしました。今まで人間が行なっていた作業を減らすだけではなく、作物の収穫も改善することができるのはIoTとセンサーの活躍があるからです。
このようにIoTを使った農業の事例を見ると、就農に対するハードルがかなり下がってきてますよね。さらに、今回紹介した事例は、ほんの一例で、日々新しい技術が応用されています。これからの日本の農業は、IoTとセンサーの技術でさらなる進化が期待され、まさに立派な産業として成り立っていくことでしょう。
これだけ条件が整い、将来性も期待できる農業について、あなたの今後のキャリアの選択肢の1つとして就農について考えてみてはいかがでしょうか。