スーパーに行くと野菜が当たり前のごとくズラリと並んでいますが、その野菜の供給支えているは農業(農家のみなさん)ですよね。一方で近頃はAI(人工知能)ブームの最中で、AIという単語を目にしない日はないんじゃないかと思うぐらいAI(人工知能)に関する情報が飛び交っています。
AI時代とも言われるご時世ですから、農業にもAI(人工知能)を活用しようとする動きがもちろん出てきています。しかし多くの人にとってアプリや家電とは違って農業の現場に触れる機会はそれほど多くはないでしょうから、具体的にどのような使われ方をしているのかイメージしづらい部分があるかもしれません。
そこで今回は、食卓職場でドヤ顔で話してみたくなるような、農業の姿を変えつつあるAI(人工知能)活用事例についてご紹介していきます。
美味しいトマトを美味しく食べられるタイミングで収穫するロボ
ルビーのような鮮やかな赤色、プッチとした食感、酸味と甘みのコラボレーションがたまらない野菜といえばみなさんご存知トマトですよね(苦手な方ももちろんいます)。なんということでしょう。。。そんなトマトを自動で収穫してくれるロボットが存在しているんです。
Panasonicは、トマトの色や形、場所をセンサーとカメラを用いて特定し、美味しく食べられる時期をAI(人工知能)が判断した上で自動的に収穫を行えるロボットを開発しています。収穫を行う際には、収穫するトマトを傷つけないようにした思いやりも忘れていません。
さらにロボットですので昼夜問わず繰り返し自律的に移動して作業を行うため、トマトが美味しい適切なタイミングでの収穫が実現します。
トマト好きには堪らないロボットと言えるかもしれません。
美味しいトマトを作るロボット
トマトを収穫するロボットをご紹介したので、「じゃあトマトの栽培工程はどうなのよ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
熟練の農家による経験や勘、感覚に頼ってきたトマトの栽培技術をAI(人工知能)で再現しようという試みが静岡大学の峰野氏によって進められています。トマトが甘くなるためには、適切な水やりのタイミングや水の量に細かく配慮を配ることが重要で、適度なストレスをトマトに与えていくことがポイントとなってくるのです。
カメラやセンサーを通じて土の乾き具合、トマトのストレス具合といった情報からデータを取得します。そうしたデータを元に、熟練農家が経験と勘で見ている微妙な葉のしおれ具合や数時間後の姿といったものをAI(人工知能)が判定、予測できるようになっています。
人間の感覚を数値化して予測可能としていることだけでももうびっくりですが、近い将来には品種や栽培量に関係なく、葉のしおれ具合に応じて自動で水やりができる制御システムが登場するなんていう未来も普通にやってくるでしょう。
サイズ別に自動でキュウリの選別をする仕分け機
キュウリと言えば国民的アニメ「となりのトトロ」でサツキとメイがかじっていた姿が印象的な夏の野菜ですよね!!
キュウリ栽培農家を営む小池誠さんは、キュウリの選定を自動で行えるキュウリ仕分け機を作成しました。キュウリの選定は長さや太さ、曲がり具合、表面のツヤなどなど非常に多くの確認ポイントがあり、小池さんの家ではキュウリを9種類の等級に仕分けていたとのこと。
仕分け担当だった小池さんの母親は一日8時間以上ずっとその仕分け作業をする日もあり、大変な負担になっていたそうです。そうした状況を改善するために小池さんは、グーグルの機械学習ソフト「TensorFlow」を用いてキュウリを自動で選定するシステムを作るに至ったとのこと。
※機械学習とは、AI(人工知能)を実現する技術の一つで、近年非常に注目を集めています。データからデータに潜むパターンや傾向をつかみ、その内容を元に手元に無い未知のデータに対しても予測をすることができるようになります。
現在、「TensorFlow」を用いれば、人間の目視レベルを超えた画像認識が可能で、カメラによって撮影したキュウリの画像を「TensorFlow」で動作するシステムが識別します。試行錯誤を重ねて作り上げたキュウリ仕分け機を小池さん自身が実務で使用したところ、仕分けのスピードが約40%向上しました。
<雑草除去や間引きを行うロボット>
抜いても抜いても生えて来る雑草。「ああもう嫌!」なんていう経験をお持ちの方は多いかもしれません。
スイスのベンチャー企業ecoRobotixが農業用の雑草除去ロボットを提供しています。AI(人工知能)が搭載されたこのロボットは、雑草を判別して二つのアームでピンポイントで除草剤を注入することで雑草を除去してくれます(太陽光を元に約12時間自律的に動くことが可能)。
このロボットを使用すれば除草剤を全体に散布した場合に比べて、除草剤の量を20分の1に節約できるそうで「農作業の省力化」「生産過程の低コスト化」が期待できそうですよね。
ロボットがレタスを栽培!植物工場システム
レタスと言えば、子どもの頃に「キャベツとレタスと白菜の見分けがつかない」なんて困った経験に覚えがある方も多いかもしれません。
関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)の新工場では、レタスの苗の育成から収穫までをロボットがほぼ全自動で行う植物工場が完成しています。ロボットが野菜を作るなんて驚きの時代がきたと思われる方も多いことでしょう。
1日あたり最大3万株のレタス栽培が可能で、独自の野菜ブランドとして全国に出荷をしています。農業は天気の影響をどうしても受けてしまうものですが、この植物工場は天候などに影響されず安定した生産が可能なため次世代の農業として現在注目を集めています。
農作業もこれで楽々、自動運転農機
こちらは株式会社クボタが、提供している自動耕運ロボット。自動耕運と言っても全て自動という訳ではありません。はじめに自動耕運ロボットを人間が運転して農地を走ることで、GPSの位置情報をAI(人工知能)に与えてやる必要があります。
AI(人工知能)は受け取った情報から地図生成を行い、この作業が完了した後、無人走行が可能になります。AI(人工知能)が最適な作業経路を導き、エンジンの回転数や変速などを自動的にコントロールします。
ドローン画像で作物の状態を見える化!葉色解析サービス「いろは」
最近一気に注目を浴びてきた感のあるドローン。コチラはイメージがつきやすいかもしれませんが、ドローンは農業に積極的に活用されています。
農地の様子を上空からドローンで撮影を行い、その画像をAI(人工知能)が解析することで作物の状態を見える化する!なんていうサービスが実現しています。農作物は一つ一つ育成状況を歩いて確認しなければならないのが当然なため、広大な畑ではとっても重宝されそうなサービスですよね。また、これまで農家の勘に頼らざるを得なかった収穫量の予測もすることができます。
ドローンを使えば育成状態が悪いエリアだけにピンポイントで自動農薬散布も可能ですので、農業の姿を変えていく予感を感じさせてくれる事例でしょう。
日本中の農地の上で普通にドローンが見られる、なんていう未来ももうすぐ来るのかもしれません。
機動性に優れた栽培作業自動化草花栽培ロボット
米企業のHarvest Automation社は、草花の栽培作業を自動化させるロボットを提供しています。自律的に移動し、水やりや農薬散布、鉢植えの移動を自動ですることができ、さらに作物の状態や土壌の解析も行います。
複数台で稼働すればセンサーを用いながらロボット同士で協力型の作業を行うこと可能で、今までは人間が行わなければならなかった面倒な作業を代替してくれます。今後こうしたロボットが農園の中で走り回っている、なんて場面を想像するとテクノロジーの発展には驚くばかりですよね。
AI(人工知能)を用いて病害予測
農業をしていて厄介なことの一つが農作物の病害です。病害が厄介なのは、感染が目に見えない、感染後では農薬を散布しても効果が薄い、病害発生の要因特定が困難、などの理由があるためです。
そんな悩みの解消に貢献してくれるのが、ボッシュ株式会社が提供している「プランテクト」。プランテクトは、センサーによって湿度や温度、日射量などの情報を収集し、AI(機械学習)によって病害の感染リスクを予測(精度92%)してくれるため適切な農薬散布タイミングの通知によって病害発生の低減に貢献します。
農薬散布が本当に必要な時期がわかるので、プランテクトを使用することで農薬の散布回数を減らすことにも繋がるでしょう。
まとめ
ウズウズまではいかずとも、従来の農業がAI(人工知能)によって姿を変えていく予感を感じられた方は多いかもしれません。
今回ご紹介してきたように新しい風が農業に吹き込んでいる訳ですが、農業の主役は農家のみなさんであることに変わりはなく、AI(人工知能)やロボットはあくまでツールにすぎません。また、熟練農家のみなさんの経験や勘をAI(人工知能)に学習させるというのは言葉でいえば一言ですが、決して簡単なことではありません。
スーパーに行くと当たり前のように色とりどりの野菜を見かけますが、それは農家のみなさんの努力があってのことです。技術の発展という面への興味に加えて、感謝を忘れず美味しい野菜を頂いていきたいですよね。
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