数年前にスローライフという言葉が流行り、それと共に農業も世間の注目を浴びましたが、「農業」と聞くとのどかな田舎風景や大自然をつい思い浮かべてしまいますよね。実はそんな農業の分野に人工知能(AI)の進出が世界規模で進んでおり、人工知能(AI)を用いた事例も数多く報告されているのです。
データを扱う人工知能(AI)と自然を相手にする農業。あまりにもかけ離れた分野ですが、果たしてどのように人工知能(AI)を農業に利用したり、組み合わせているのでしょうか?
農業の現場における人工知能(AI)を用いた事例から、農業分野の研究において人工知能(AI)を利用している例などを、国内だけでなく海外の例もいくつか挙げてお伝えします。
人工知能(AI)を使ったキュウリの仕分け
まずは、国内における人工知能(AI)を使った例をご紹介しましょう。農業で一番の楽しみは収穫の時と聞きますが、農業を生業としている場合はそれだけでは終わりません。最後に収穫した作物を等級ごとに仕分けする作業が残っているのですが、ピーク時は数も多いため仕分け作業も一苦労。。。しかし、人工知能(AI)を使う事で仕分け作業の負担を減らす事も出来るのです。
静岡県のキュウリ農家の小池誠さんは人工知能(AI)を使ったキュウリの仕分け機を自作し、仕分け作業の負担を減らす事に成功しました。
人工知能(AI)で農作物の管理も!
美味しい野菜を育てるためには、作物を育てていく上で農作物の管理がとても重要です。例えば、農作物が病気にかかると農作物がダメになってしまうので、病気が広がらないようしっかりと管理しないと大変な事に。。。多くの農家が頭を悩ませているこの病害ですが、人工知能(AI)を使う事で農作物の病気の予防も可能になったのです。
自動車部品メーカーのボッシュは、湿度や二酸化炭素濃度の観測値を人工知能(AI)が分析する事で、農作物が病気にかかりやすい環境かどうかをスマホで知らせるシステムを開発しました。
では次に、海外で人工知能(AI)を活用した例をみていきましょう。農作物が育つ絶対条件の一つとして「水」が挙げられますが、農業では水やりも大事な仕事の一つ。アメリカのCeres Imagingのシステムでは、撮影した農地の画像データを人工知能(AI)が解析して水が多く撒かれている箇所と少なく撒かれている箇所を判断してくれます。
農作物の管理に人工知能(AI)を使った例はこれだけではなく、他にも人工知能(AI)を使って害虫を駆除したり、収穫の時期を予想したりなど世界中で数多く報告されているのです。
農業分野の研究でも利用される人工知能(AI)
農業の分野において、人工知能(AI)が使用されている例は農地だけにとどまりません。今度は農業に関する研究を行うにあたり、人工知能(AI)が使われている例をご紹介します。
デンマークのノボザイムズは、微生物を利用して作物の成長を促したり害虫を寄せ付けないようにする製品開発のため、人工知能(AI)の機械学習を利用し微生物の遺伝子配列から有望な遺伝子パターンを特定する研究を行っています。現在では既にそこから選んだ微生物を使った試験も行われていますが、人工知能(AI)を使う事で成功率に明確な向上が見られたそうです。
また、アトムワイズはモンサントと共同して、どの分子が病害や害虫を防ぐかという事を分子レベルで予想するため、何百万もの分子から農薬につながる可能性のある分子を見つけだすための人工知能(AI)を開発中です。まだ開発段階ではありますが、今まで試行錯誤を繰り返しながら行っていたものを人工知能(AI)を使い、分子の相互作用を機械学習させて探し出す事が出来るので非常に効率が良くなると期待されています。
農作物に対してだけでなく、こういった分子や遺伝子といった研究でも人工知能(AI)が活躍しているなんて驚きですよね。人工知能(AI)を使った研究はまだ始まったばかりですから、これからも農業に関わる研究において人工知能(AI)を使った実験が行われ、人工知能(AI)を使った例も益々増えていくでしょう。
農業の分野で世界における人工知能(AI)の活用事例をお伝えしましたが、今までの農業の見方が少し変わったのではないでしょうか。農業という分野は衣食住の食にあたり、これからも人の生活に密接に関わってくる分野でもありますよね。農業の高齢化や後継者不足の問題もあり、人の負担を減らすために人工知能(AI)を利用して効率化した農業はこれからも盛んになるでしょう。
しかし、自然というのは予測していない不測な事態を引き起こすもの。全てを人工知能(AI)によってデータ化できるわけではありません。自然を相手に培った農家の勘と、データ分析が得意な人工知能(AI)が合わさる事で、これまでの農業の形が更により良いものに変化していく事でしょう。